索引

(1)特許とは?

特許とは特許権を発生させる行政処分のことです

特許とは、特許庁の審査に合格した特許出願について、特許庁において設定の登録により特許権を発生させる行政処分のことをいいます(商標法第18条第1項)。

最初に特許法に触れて疑問に思うのが、”特許”、”特許権”、”発明”、”特許発明”等の言葉が入り乱れて出てきて、それぞの違いが分かりにくいという点です。

最初に、「特許とは行政処分」との考え方をしっかりもってください。そうすれば全体像を理解しやすくなります。

特許の概念と同様なものに、商標法における商標登録があります。

商標登録とは、特許庁において設定の登録により商標権を発生させる行政処分のことをいいます(商標法第18条第1項)。
商標登録とはより

特許が特許権を発生させる行政処分なら、商標登録は商標権を発生させる行政処分ということです。

特許庁における特許出願の審査に合格すると特許査定となり、設定登録の手続を経て特許権が発生します。

特許権により、技術上のアイデアを保護できます。

特許権は、特許発明について特許権者のみが独占実施できる強力な権利です。無断で他人が特許発明品を生産したり、販売したりした場合には、差止請求や損害賠償請求が認められます。

また差止請求や損害賠償請求等の民事上の手続の他に、特許権を侵害すると、侵害の実行者に対して10年以下の懲役、1000万円以下の罰金が課せられます(特許法第196条)。また法人が特許権侵害に加担すると3億円以下の罰金が課せられます(特許法第201条)。

ちなみに、特許権があることを知らなくても差止請求や損害賠償請求の攻撃がきます。特許権があることを知っているかどうかは、特許権の侵害が認められる要件の中に入っていないからです。

他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。
特許法第103条より

特許法上は、特許権を侵害すると、知りませんでしたとはいえないことになっています。法律で過失があったものと推定されることから、特許権の侵害者は過失がなかったことを裁判で主張立証しなければなりません。過失がなかったことを立証できなければ、過失があったものとして損害賠償が課せられます。

(2)発明とは?

発明は技術上のアイデアのことです

特許法では発明のことを次のように定義しています。

「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
特許法第2条第1項より

なんとも難しい表現ですね。わざわざこのように発明を定義しているのは、ひらめいたアイデアのうち、一定条件を満たすものだけを特許法で取り上げる、という意味です。上記に記載された定義に当てはまらない発明は、特許法で扱う発明ではないとして特許されません。

発明の定義にある”自然法則を利用した”、とは何ですか?

特許法の発明の定義にある”自然法則を利用した”というのは、例えば、バネの力を利用する、電気信号の流れを利用する、燃料を内燃機関の内部で燃やして燃料エネルギーを運動エネルギーに変えて利用する等、自然法則により得られる仕組みを発明の中に組み込んでいることをいいます。

人間が頭の中で考えたビジネス処理手順を記載したマニュアルとか、ゲームの進行方法を記載した解説書等は自然法則を利用していないので特許法にいう発明ではないとして扱われます。

また自然法則に反するアイデアも特許法に定める発明の対象外です。実証するデータが一切ない不老不死の薬とか、使っても燃料が減らない燃料エンジン等は特許出願しても拒絶されます。

発明の定義にある”技術的思想の創作”、とは何ですか?

アイデアの中には色々なものがありますが、そのアイデアは技術上のアイデアに限定されます。絵画や写真等の美術上の創作物は技術上の創作ではなりませんので特許法の保護が受けられません。

また匠の技に代表される個人の技量により達成できるものも技術的思想に当てはまらないです。

さらに情報をただ示した場合も創作といえるところに達していないので特許されません。

発明の定義にある”高度のもの”、とは何ですか?

特許法の発明の定義にある”高度のもの”とは、実用新案で保護される考案と区別するためのものです。実務上はコロンブスの卵のように、仕組みは簡単だけどあっと驚くようなものも特許の対象になります。

(3)特許と発明の違いは何ですか?

特許は特許庁側の仕事で、発明は発明者側の仕事

特許とは特許権を発生させる行政処分です。このため特許する、とは特許権を付与するという意味で使われます。特許するかどうかは、これは行政機関である特許庁の仕事ですので、特許は、そもそもは特許庁側の仕事です。

これに対して発明は、技術上のアイデアです。発明をするのは発明者です。特許庁の審査に合格できる発明をするのは発明者の仕事ですので、発明は、そもそもは発明者側の仕事です。

(4)発明と特許発明の違いは何ですか?

発明は上位概念であり、発明の中で特許されたものが特許発明です

発明の中には、特許された発明も、特許されていない発明も含まれます。特許されていない発明の代表例は、未だ特許庁に特許出願されていない発明です。

これらの発明の中でも、特に特許庁で特許されている発明のことを特許発明といいます(特許法第2条第2項)。

特許発明でない発明を、特許発明であるかのように使うことは法律で禁止されています。特許発明でないものを特許発明であるかのように扱う表示を虚偽表示といいます。

虚偽表示をすると、3年以下の懲役、300万円以下の罰金が課せられることがあります。

(5)特許と特許権の違いは何ですか?

特許権は権利であり、特許により発生します

特許権とは、特許権者だけが独占的に特許発明を実施できる権利のことをいいます。

特許権者の許可を得ていない者が、特許発明の技術上の範囲の内側で発明を実施すると特許権侵害になります。特許権を侵害した者に対して特許権者は差止請求、損害賠償請求等の民事上の救済や、3億円以下の法人罰金、10年以下の懲役等の刑事上の救済を受けることができます。

また特許とは、特許権を発生させる特許庁における行政処分のことをいいます。

特許権は特許庁の行政処分がなければ生じませんし、逆に特許庁の行政処分がなければ特許は強制的に無効になったり、取り消されたりしないです。

(6)まとめ

特許出願が特許されるまでにはいくつかの関門をくぐる必要があります。これらの関門を超えていくことは厳しいですが、やはり特許庁の審査も厳しく簡単には特許されないです。

けれどもなかなか得られないからこそ、特許権の価値があるともいえるのです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247