ファーイースト国際特許事務所

特許権侵害調査と特許性調査との違い

目次

(1)特許権侵害調査とは?

他社の特許権を製品が侵害していないかの調査

特許権侵害調査とは、こちらの製品とか技術が、前にある特許権に抵触していないかを調べる調査のことをいいます。既にある特許権の範囲と重なる中身の製品とか技術の実施は制限されますから、特許権侵害が後になってトラブルの原因となるのを防ぐために調査します。

例えば、1000件の特許文献を調べて問題がなかったとしても、1000件以外の特許権以外の1件の特許文献の内容にこれから販売する製品が抵触している場合があります。

特許権侵害調査の問題点は、どこまで特許文献を調べ尽くすかとの点にあります。

製品販売にあたって、その製品が既にある特許権を侵害しているか事前に調査を行います。一度市場に出た製品が既にある特許権を侵害していることが後日判明したなら、市場に出荷した製品を回収しなければならなくなる等、後になってから大変な手間やコストがかかることになるからです。

特許検索は特許情報プラットフォームから

これから市場に出す製品に関係する特許権が存在するかどうかは、特許庁のサイトから無料で使える特許情報プラットフォームを通じて調べることが可能です。

この特許情報プラットフォームで、一つの特許事例として「携帯電話」についてみてみます。

図1 特許データベースを使って携帯電話関係の関連特許を検索


まず図1の「特許公報(特公・特許(B))」のボックスのみをチェックします。

次に、プルダウンメニューから「請求の範囲」を「含む」にセットし、検索キーワードに「携帯電話」と入力します。

また特許権は出願日から20年で存続期間が満了するので、今日から20年前の日付を入力します。今回は分かり易いように、1996年12月6日から2016年12月6日と入力します。この場合には、半角数字でそれぞれの年月日を表示し、両方をコロンで結びます。実際には「19961206:20161206」と入れます。

そして「キーワードで検索」を押すと、検索結果が1000件を超えたとの警告画面が表示されます。

ここで重要なのは、請求の範囲に携帯電話を含む特許は、8000件以上ある、ということです。仮に携帯電話を販売するなら、この8000件を超える先行特許文献について、原則としてこちらの製品と関係がないことを確認する必要があります。

もちろんこの8000件の中には、一目見ただけで関係がないことが明確なものも含まれるはずです。

たとえそうであったとしても、誰かが確認する必要があります。

キーワードは「携帯電話」だけでは足りない

当然ですが、携帯電話に関する特許技術を検索するのに、「携帯電話」とのキーワードで調べたのでは取りこぼしが生じます。

携帯電話が、どのような言葉により請求の範囲に記載してあるかを予測して検索する必要があります。

携帯電話に代えて、例えば、「スマートフォン」、「スマートホン」、「携帯端末」、「情報端末」等、可能性があるものでピックアップをすることを忘れてはいけません。

基本特許だけが検索調査の対象か

調査する特許の中で基本特許と呼ばれる、その分野での先進的な発明に関する特許権と、基本特許の中身を改良・応用した特許などが存在します。

基本特許だけを調べ終えると、改良特許とか応用特許について調べるところまでは要求されない、と考える人がいますが、それは正しくありません。基本特許は当然として、改良特許や応用特許について、それらの先行特許文献で開示されている権利内容と相互比較して、販売予定の製品と関連がない、との確認まで要求されます。

(2)特許性調査とは?

新たに出願する発明が特許可能かを見極める調査

特許性調査とは、特許出願する発明が、審査に合格できるかどうかをチェックするための調査をいいます。既にある発明と同一の発明は特許されないです。また先行技術から容易に考えつく発明は、特許されません。

特許出願して審査に合格できないと時間と費用が無駄になります。特許性調査により、審査に合格できない発明か審査に合格できる発明か先に判断できるので、これらの無駄を省くことができます。

特許性調査の場合は、権利申請する発明と関連ある先行技術を調べ尽くすところまでは要求されません。

一件でも特許されない記載を含む特許文献が見つかると、その発明は特許化が危うくなるため、先行技術とは異なる発明に、もっと練り上げることが要求されます。

(3)特許権侵害調査と特許性調査との違い

特許権侵害調査のケースでは、販売する製品とか実施する技術に関係がある特許権に対し、原則全件チェックする必要があります。

これに対して、特許性調査の場合は、特許性を否定する先行文献を少なくとも一件を見つければ足ります。

上記の通り特許権侵害調査と、特許性調査とを比べれば、両者はかかる時間もコストも手間も全く異なります。

特許権侵害調査にかかる費用の目安ですが、例えば関係する特許文献が1000件発見された場合をまず考えます。

これをあなたが全件チェックした場合に、どれくらいの時間がかかるかを目安に考えると分かり易いと思います。

仮に半年かかったなら、あなたの年収の半分程度の費用レベルであることがわかります。

一方、特許性調査の場合には、手慣れれば、提示された発明を否定する材料は1時間足らずで見つかります。何かの欠点を突く作業というのは、何かを創り出す作業に比較して、遙かに簡単です。

(4)まとめ

日頃からライバルの先行特許文献に目を通しておく

いきなり製品を販売するケースでは、特許権侵害調査を求められると大変です。自社により調べるか、特許事務所に調べてもらうかは横に置いても、相当な労力が必要となるからです。

普段から同業他社の特許文献に目を通しておけば、どこの分野を調べると自社の技術と関わる特許文献が出るかはおのずと身につきます。普段からライバルの特許技術を調べておくことも重要です。

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所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247