商標登録の際に問題になるのは同じ指定商品・指定役務の範囲に他人の登録商標があるかないか、です。
もし先行する他人の登録商標があれば出願しても登録を受けることができないからです。
どんずばり同じ登録商標が存在したなら誰でも簡単に判別できると思うのです。
ところが商標登録を受けることができない商標は、先に登録された商標と同じ場合だけではなく、類似する商標も含まれます。
先に登録された商標と同じがほんの少しだけ違うなら分かりやすいのです。
登録された商標から遠ざかると、もはや類似する商標とはいえなくなります。
登録商標と同じ商標から非類似の商標まではだんだん変化していきますので、ここまでなら類似、ここまでなら非類似、との線引きは非常に難しいです。
毎年商標登録の依頼が殺到し、年間数千件以上の商標の類否判断をする私でさえ簡単であるとは思えません。
夕暮れの際にどこまでが夕方でどこまでが夜ですか、と聞かれても明確な時刻を即答するのは難しいと思います。だんだん連続的に変化していくからです。
商標の類否判断の核心部はこのグレーゾーンをどう評価するか、ということです。
実務では教科書的な事例を扱うことはまずありません。
そんなに簡単な事例ばかりなら私も終電の時刻まで考え込んだり、終電を逃して毎日タクシーで帰宅することもありません。
対比する商標が類似するかどうかは、審査で決着が付かず、審判で争い、知財高裁で争うこともありうるわけです。また上告理由に該当する場合には最高裁で争うこともあり得るのです。
きちんと商標を対比して問題点を明かにしてひとつひとつの類否判断を行うには緻密な論理構成と地道な作業が必要になります。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247