願書の商標記載欄には商標は一つしか記入できません
特許庁に商標登録出願をする際には一つの商標について一つの出願をすることになっています。
例えば、うさぎのマークを喫茶店業務に使用し、ライオンのマークを不動産賃貸業務に使用する場合、うさぎのマークとライオンのマークを一つにまとめて出願することは認められないのです。
この場合には、うさぎのマークについて喫茶店業務を指定して一つの願書を作成し、さらにライオンのマークについて不動産賃貸業務を指定してもう一つの願書を作成して特許庁に商標登録出願を行います。
商標記載欄に二つの商標を記載した場合
願書の商標記載欄に商標を二つ以上記載した場合、全体で一つの商標として扱われます。このため例えば、「東京太郎株式会社」として出願した場合、全体の中から「東京」 の部分のみを抜き出して他人に「東京」という文字をつかうな、とか、「株式会社」という文字をつかうな、ということは原則できないです。「東京太郎株式会社」が商標として一つのものだからです。
ただし、商標の欄に記載されたものは一体としてしか扱われないのか、というとそうではありません。
商標の類否判断においては商標の中の重要な部分を考慮することが通常行われます。上記の「東京太郎株式会社」の場合、株式会社の部分は株式会社を設立する人の誰もが自由に使うことができます。
このため株式会社の部分は商標全体の中の重要度が下がります。そうすると商標「東京太郎株式会社」と「東京太郎」とは類似すると考えることができます。この当たりの判断については個別具体的に検討する必要がありますので専門家の意見を聞いて手続を進めるようにしてください。
複数の商標をまとめて出願するべきか、それぞれ分けて出願すべきか
願書に複数の商標を一つにまとめて出願した場合と、それぞれに分けて出願した場合にはメリットとデメリットが出てきます。
(1) 願書に複数の商標を一つにまとめて出願した場合
願書に複数の商標を一つにまとめて出願した場合には出願料金が一つ分で済むため、費用総額が安くて済むメリットがあります。
これに対して例えば、AのマークとBのマークが一つの出願に記載されている場合、Aのマークのみの使用は権利範囲外であると主張されてしまうデメリットがあります。
一商標一出願の原則に従えば、AのマークとBのマークの二つがそろって一つの商標権になるからです。
(2) 複数の商標をそれぞれ別々に出願した場合
例えばのマークとBのマークとをそれぞれ別々に出願した場合は、AのマークとBのマークのそれぞれについて商標権が発生しますので、AのマークまたはBのマークの一方だけを使っている者の使用を止めさせることができるメリットがあります。
これに対して出願費用は二つ分がかかるため、費用が二倍になってしまう点がデメリットがあります。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247