商標権者になれるのは先に出願した者だが
商標権者になることができるのは実際に特許庁に誰よりも早く商標権の付与を求める願書を提出した者です。このように先に特許庁に商標登録出願の手続を行った者に商標権を与える制度のことを先願主義といいます。
先願主義では誰が商標権者であるのかが明確なため、法的安定性が高いとされます。
このため多くの国でこの先願主義が採用されています。
ところがこの先願主義の間隙を付いてこちらの知らない間に勝手に出願を済ませてしまう者が現れる場合があります。
そのまま放置しますとこの勝手に出願した第三者が正当権利者になってしまいますのでこれを阻止する必要があります。
出願中の商標に対して特許庁に対して情報提供ができます
上記のような場合には特許庁に対して情報提供を行うことができます。具体的にはこちらがその商標の正当な権利者となるべき理由、宣伝広告費をかけて相当有名にしてきた経緯などを説明します。
有効な情報提供ができれば相手方の商標登録出願を拒絶査定に追い込むことができます。
ただし情報提供したとしても、その内容を特許庁の審査官が採用するかどうかは審査官の裁量です。情報提供の内容を参照しなくても違法行為にはなりません。
また情報提供は、書面でしなければならない等の規定がありますので注意が必要です。
特許庁に対する情報提供が間に合わなかった場合
実務上、相手の出願に気がつくのが遅れて情報提供が間に合わず、登録査定となって商標権が発生してしまう場合があります。
このような場合には商標公報発行後2か月以内に商標登録異議申立を行うか、別途無効審判を請求することにより商標権の有効性について争うことができます。
情報提供の場合は、情報提供の内容を審査官が審査に反映させる義務がないのに対し、商標登録異議申立や無効審判の場合は、提出された書面は必ず審判官が判断することになっています。
このため情報提供に失敗した場合には商標登録異議申立か無効審判を請求するのがよいでしょう。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 平野 泰弘
でんわ
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