先生!この拒絶査定には納得できません。裁判所で争いたいです。

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1.まずはじめに

日本国憲法には次のような規定があります。

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
(第七十六条)

ここで注目していただきたいのは第三文です。つまり、行政機関である特許庁は終審としての裁判を行うことが出来ませんので、特許庁の下した結果に不服がある場合には、必ず裁判所へ出訴できるようにも思えます。

しかし、特許庁が扱う事件は、例えば特許のようなその内容が技術的事項であったり、かなり高度な専門性を有する事案を扱っているます。また、判断に専門的な知識が要求されるのは意匠や商標でも同じことです。

そこで、商標法は特許庁が扱う事件の審査結果である「査定」に対しては、地方裁判へ直接出訴することは認めず、専門官庁である特許庁内部に審査に対する上級審を設け、上級審である審判の結果についてのみ出訴することを認めているのです(審判前置主義といいます。)。

2.拒絶査定不服審判

商標法では拒絶査定不服審判について以下のように規定されています。

拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に審判を請求することができる。

(商標法)

それでは、細かな内容を解説してみます。

(1)主体的要件

拒絶をすべき旨の査定を受けた者です。当然ですが、他人の拒絶査定を根拠に勝手に審判を請求することはできません。

また、共同出願の場合には共有者全員で請求する必要があり、一人でも欠けた場合不適法な審判請求となり、請求が却下されてしまします。このような場合には、抜けたいと申し出た人の持ち分をあらかじめ移転してから審判請求すべきですね。

(2)客体的要件

もちろん拒絶査定です。

なお、査定には二種類あります。審査合格を意味する「登録査定」と審査不合格を意味する「拒絶査定」です。当たり前のことですが、登録査定に対しては審判請求が認められてはおりません。実は昔の商標法ではこの点については不明確だったそうです。そこで現行法では「拒絶をすべき旨の査定」と明記したそうです。

(3)時期

拒絶査定の謄本の送達があった日から3カ月以内です。結構短いようにも思えますが、以前はさらに短い30日しかなかったので、審判請求の依頼を受けは弁理士は、準備をするのに結構大変だったようです。

なお、出願人に不責事由が生じていた場合などのやむを得ない場合には、その理由がなくなった日から14日以内でかつ3カ月の期間の経過後6カ月以内に限り、審判請求が認められます(2項)。

(4)手続

審判請求書を特許庁長官に提出します。審判請求書の提出先は特許庁長官となっておりますが、実際に審判事件の内容を審理するのは審判官という審査官の上級行政庁になります。
また、審査官は単身で審理していますが、審判では三名また五名の審判官の合議体によって審理されます。

なお、無効審判や取消審判のように相手がいる場合、費用は敗訴者負担の原則が適用されますが、拒絶査定不服審判には相手がいませんので、自己負担になります。

(5)効果

請求の理由が認められた場合には、拒絶査定は取り消され、請求認容審決が出されます。一方、請求の理由が認められなかった場合には、請求棄却審決が出されます。

(6)不服申立て

請求棄却審決に対してはいよいよ裁判所へ出訴することが認められます。

ただし、審決を取り消すための訴訟(審決等取消訴訟といいます。)は通常の三審制が適用されません。これは事件の専門性を理由に行政庁内部で審理をやり直しているおり、その上でさらに三度の裁判を認めると今度は事件の解決に時間がかかりすぎるためと言われております。従いまして、審決等取消訴訟は地方裁判所での審理を省略して東京高等裁判所の専属管轄とされています。

なお、東京高等裁判所で下された判決に不服がある場合には、さらに最高裁判所へ上告することもできます。

3.まとめ

このように審査不合格の内容に対しては、最高裁判所で争うことまで出来てしまします。しかし、ここまで争う場合、かなりの時間と費用と体力を消耗します。特に莫大な費用が掛かります。商標法では審査不合格でも内容を多少変更した上で出願し直す方法もかなり有効な手段です。審査不合格の場合でも、いたずらに争うのではなくその理由を冷静に判断して、内容に応じた適切な対応をするよう心掛けていただきたいと思います。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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