商標のRマークとは?弁理士がすっきり解説します!

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*2017年3月31日改訂

(1)Rマークって何?

(1-1) そもそも、Rマーク(Ⓡ)は、いったいどのようなものなのでしょうか?

Rマークは、商標が登録済みであることをあらわす記号です。

日本には商標登録制度があります。商標は一度登録すると10年の期間有効となり、10年ごとに更新します。

そして、一度商標を登録すると、その商標については自社が独占的に使うことができます。そこで、いったん商標登録すると、他の人が勝手に使うことができなくなります。ただ、何の表示もしていないで商標を表示していると、外から見たときに、その記号やイラスト、文字列などが商標登録されているのかどうかがわかりません。

そこで、Rマークをつけることによって、「この文字や記号は商標登録されていますよ」ということを示すのです。これを見た他の人は、Rマークがついていることによって、その商標を勝手に使ってはいけないことがわかります。

このように、Rマークは、商標登録されているかどうかを明らかにして、権利侵害を防ぐためのものです。

(2)Rマークの表示義務はあるの?

(2-1) 商標にRマークを表示しなければならないか?

それでは、商標にはRマークを表示しないといけないのでしょうか?

実は、日本ではRマークの表示をする必要がありません。

Rマークは、アメリカの特許庁に由来する制度であり、日本の法律によるものではありません。Rというのは、英語のRegistered trademarkのことなのです。そこで、日本の商標法はRマークの表示を義務づけていません。

よって、商標を表示するとき、本当はⓇをつける必要はありませんし、つけなくても罰則が適用されることなどもありません。

(3)日本の商標制度で義務づけられている表示とは?

Rマークの表示が不要なら、日本の商標法ではどのような表示が義務づけられているのかが問題です。これについて、日本の商標法は、次のように定めています。

(3-1) 登録商標であることの表示義務(努力義務)

まず、商標表示するときには、それが登録された商標であると表示するよう、努力しなければなりません(商標法73条)。

これは、具体的には、登録商標の文字と登録番号を表示することを意味します(施行規則第17条)。商標登録すると、1つ1つの商標に登録番号をもらうことができるので、それを商標とともに表示するのです。

たとえば、「FarEast」という商標を登録した場合、「FarEast商標登録番号第〇〇〇〇〇〇〇号」とか、「FarEastは、XXX社の登録商標です(登録番号第〇〇〇〇〇〇〇号)」などと書きます。

登録番号表示の義務は、努力義務なので、表示をしなかったとしても、必ずしも違法になるわけではありませんし、罰則の適用もありません。実際に、登録番号は文字数が多く、スペースも必要になるため、表示されていないことが多いです。

(3-2) Rマークで事実上、商標を表示している

以上のように、商標法上は、「商標の登録番号をなるべく表示しましょう」、という以外、特に表示を強制されるようなことはありません。

ところが、何の表示もしないと、商標が登録されているのかどうかわからず、商標の独占利用を守ることが難しくなります。そこで、多くの企業が、アメリカの制度であるRマークを利用して、自社の商標をアピールしています。Rマークなら、Ⓡの一字で済むのでスペースも要りませんし、非常に使いやすいのです。

そして、このことより、誰からもその記号が商標登録されていることがわかりやすくなって、権利の侵害を防止することができます。このように、Rマークは、法律上の義務ではありませんが、わかりやすくて便利なので、事実上利用されているものです。

(4)誤認表示の禁止

商標法では、商標登録がなされていないのに、登録されているという誤解を受けるような表示をすることは禁止されています(商標法74条)。

この規定は単なる努力義務ではなく、違反すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

商標登録をしていないなら、誤解を受けるような紛らわしい表示はしないよう、注意しなければなりません。

(5)ケース別の商標の表示例

次に、世間では実際に商標をどのように表示することが多いのか、その例を見てみましょう。

(5-1) 登録番号を表示するケース

まず、商標の登録番号をそのまま表示するケースがあります。たとえば、カタログやパンフレット上に商標を掲載するときには、スペースが十分あるため、登録番号をそのまま表示することが多いです。

たとえば、以下のような記載となります。

「○○○○」は、XXX社の登録商標です(登録番号第〇〇〇〇〇〇〇号)。

(5-2) Rマークを表示する例

次に、Rマークを表示する例をご紹介します。たとえば、ラベルなどに表示するときには、スペースも小さいことからRマークを利用することが多いです。

Rマークで表示をするときには、多くの場合、登録商標の後ろにⓇをつけます。Ⓡのフォントは小さくして上に寄せてつけることもありますし、下に寄せてつけることもあります。小さくせず、文字列と同じ大きさで表示することもあります。

商標がデザインになっている場合には、デザインのイメージを崩さないよう、小さな®をつけることが多いです。

(5-3) 他社の登録商標を表示するとき

会社の運営をしていると、他社の登録済み商標を表示しないといけないことがあります。

たとえば、パソコンのカタログにおいて、windows(マイクロソフトの登録商標)と記載する場合などです。

このように、他社の登録商標を表示するときには、誤解を招かないように、他社の登録商標であることを明示しなければなりません。

たとえば、以下のような表示をします。

「○○○○」は、XXX社の登録商標です(登録番号第〇〇〇〇〇〇〇号)。

(5-4) 登録申請中の商標を表示したいとき

現在、商標登録の出願中で、また決定が出ていない場合、保有している商標は未登録なのでRマークを使うことはできません。ただ、この場合でも、近々商標登録される予定ですから、周囲の人に商標登録が行われる記号であることを知らせる必要があります。

そこで、この場合には、TMマーク(™)を使います。TMマークについては後に詳しく説明します。

なお、商標の出願中において、Rマークを利用することは認められません。そのようなことをすると、既に登録を受けたと思われて、誤認を招くおそれがあるためです。

(5-5) 表示してはいけないこと

登録されていない商標や記号に対し、Rマークをつけることは認められません。このことは、たとえ申請中であっても同じです。

日本で正式商標登録されていないものに対してRマークをつけると、虚偽表示とみなされて刑事罰(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)が科されるおそれもあります。

(5-6) 表示してはいけないこと

登録されていない商標や記号に対し、Rマークをつけることは認められません。このことは、たとえ申請中であっても同じです。

日本で正式商標登録されていないものに対してRマークをつけると、虚偽表示とみなされて刑事罰(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)が科されるおそれもあります。

(6)Rマークの位置は決まっているの?

(6-1) Rマークの位置は、基本的に自由

次にRマークの位置について、見てみましょう。

Rマークは、商標の後ろについていることが多いですが、決まりはあるのでしょうか?

実は、そういった制限や決まりはありません。

そもそもRマークは日本の制度ではありませんし、つけなくても良いものなので、つける場所についても定めがないのです。商標そのものを邪魔しない位置ならば、どこに表示するのも自由です。

(6-2) 商標と混同される位置につけてはいけない

ただし、商標と混同されるような位置に入れることは認められません。たとえば、商標の真ん中にⓇが入ることにより、Ⓡが商標の一部なのかそれともRマークなのかがわからなくなるケースなどです。

混同される表示により、商標が取り消されるおそれもある!

もし、商標と混同される位置にRマークを入れて、商標と一体として利用していると、どのような問題があるのでしょうか?

商標登録をした場合には、登録した商標を使う必要があり、他の記号や商標を使っても商標の利用とは認められません。登録した商標を使っていない場合には、不使用取消審判という手続きによって、商標利用が取り消されてしまいます。

たとえば、FarEastという商標を登録している場合、「FarⓇEast」という表示を常にしていると、「FarEast」の商標を利用していることにならず、もともとの「FarEast」の商標が取り消されてしまうおそれがあります。

そこで、商標を表示するときには、商標の途中(真ん中)ではなく、必ず商標の外側に表示するようにしましょう。
Rマークを表示するとき、多くのケースでは、右上か右下につけています。

(6-3) 一部が商標登録されている場合のRマークの位置

名称の一部が商標登録されていることがあります。たとえば、FarEastという商品がある場合、FarとEは商標登録しているけれども、astは商標登録していない場合などです。

この場合には、FarⓇEⓇastと表示します。

つまり、Farの後ろに1つのⓇ、Eの後ろに1つのⓇがついています。

ここで、FarEastⓇにすると、商標登録していないastについてもⓇマークを表示することになってしまい、虚偽表示になります。

一部が商標登録されている場合の表示方法には、注意が必要です。

(6-4) Rマークはどこにつけるのがおすすめ?

それでは、Rマークはどこにつけるのが良いのでしょうか?

これについては、一般的にもよく使われているように、商標の右上または右下につけることをおすすめします。

理由としては、その方が一般的でなじみやすく違和感がないことと、日本語や英語の場合、文字は左から右に読むので、Rマークを終わりにつけると、そのことによってどこまでが登録されている商標なのかがわかりやすいからです。

左上にⓇがついていると、どこまでが商標なのかがわかりにくくなり、おすすめはできません。

(7)Rマークに期待される効果

ここまでお読みいただいた方の中には、そもそも、Rマークを利用することに、どのような意味があるかを疑問に感じる人もいるかもしれません。そこで、以下ではRマークに期待される効果をご紹介します。

(7-1) 真似されにくくなる

商標登録をしたら、権利者はそれを独占的に利用することができます。しかし、一見しただけでは、その記号などが商標登録されているかどうかがわかりません。

商標が登録されると、特許庁におけるデータベース(PlatPat)を検索して無料で登録情報を調査することも可能ですが、わざわざそのようなことをする手間をかける人はほとんどいないからです。

そこで、商標登録をして、何の手立ても講じずに利用していると、続々と真似をする人が発生するおそれがあります。

そこで、Rマークをつけることにより、商標登録していることを周囲に認識させる必要があります。それが、Rマークの重要な効果です。

このことにより、せっかく登録した商標が勝手に第三者に使われることを防止出来ます。

(7-2) ブランドづくりの一環となる

商標登録をすると、ブランド造りに役立ちます。ただ、単に商標登録しただけでは、世間一般にそのデザインが商標であることを認知してもらいにくいですし、真似をされるおそれもあります。

そこで、Rマークをつけて、「商標ですよ」ということをアピールし続けることと、真似を防ぎ続けることによって、徐々に世間にブランドが浸透していきます。このことも、Rマーク利用の大きなメリットです。

(7-3) 登録商標が一般の名称になってしまうことを防ぐ

きちんとRマークをつけるなどして商標であることを主張し続けないと、登録商標であっても一般名称になってしまうこともあります。たとえば、「エスカレーター」や「ホッチキス」は、実はもともと登録商標でしたが、今ではすっかり一般名称になっています。

Rマークをつけて商標としての主張をし続けていたら、そのようなおそれはありません。

(8)Rマークについての知識

次に、Rマークについて、知っておきたい知識をご紹介します。

(8-1) Rマーク(Ⓡ)のキーボード変換の方法は?

まずは、パソコン上でのRマークⓇへの変換方法をご紹介します。同時に、後に説明するTMマークやCマークについてもご説明します。

マイクロソフトOFFICE IMEのケース

Windowsを使っていて、マイクロソフト社のOFFICEによる変換では、”CONTROL”+”ALT”+”r”のキーを同時に押すと「Ⓡ」と入力されます。

後に説明をするTMマーク(™)は、”CONTROL”+”ALT”+t””のキーを同時に押すと「™」と入力されます。

さらに、同じく後に説明をするCマーク(©)は、”CONTROL”+”ALT”+”c”のキーを同時に押すと「©」と入力されます。

また、全て半角で(r)と入力するとⓇ、 ™ と入力すると™、(c)と入力すると©即座に自動的に(即時に)変換されます。

さらに、「とうろく」と入力すると®(Rマーク)、

「しょうひょう」または「とれーどまーく」と入力すると™(TMマーク)、

「ちょさくけん」、「こぴーらいと」と入力すると©(Cマーク)に変換することができます。

JustSystem ATOKのケース

この場合には、

「とうろくしょうひょう」と入力すると®(Rマーク)

「とれーどまーく」と入力すると™(TMマーク)

「ちょさくけん」、「こぴーらいと」と入力すると©(Cマーク)

に変換することができます。

Macのケース

Macの場合には、カタカナで「アール」と入力して変換をすると、「Ⓡ」が表示されます。

ただし、Ⓡは環境依存文字なので、異なるアプリケーションなどで使うと文字化けすることもあります。

(8-2) 商標登録は「表記」に対して行われる

商標登録は、文字列やデザインなどの「表記」に対して行われるものです。音に対する商標登録はありません。このことが原因で、自分では商標登録ができているつもりでも、実は商標登録が行われておらず、Rマークを使えないケースがあります。

たとえば、「tered」(読み方はテアード)が商標登録されているケースを考えてみましょう。

この場合「tered」は、が登録商標です。

ただ、会話では、「テアード」と発音されます。そこで、「テアード」株式会社の人が、自社名を商標登録して、弁理士に「『テアード』にRマークをつけていいですか?」と尋ねたとします。この人は「テアード」が商標登録されたと思っています。

このとき、これを聞いた弁理士が「いいよ」と言うかもしれません。しかし、弁理士は、「tered」に対してRマークをつけても良い、と言っているのであって、「テアード」につけても良い、と言っているのではありません。

しかし、質問をした本人は「テアード」にRマークをつけても良いものだと誤解して、「テアードⓇ」と表示してしまうかもしれません。そうすると、虚偽表示になってしまい、商標法違反になってしまうのです。

このように商標登録をしてRマークの表示をするとき、登録されるのはあくまで「表示方法」に対するものであることをよく覚えておきましょう。

(8-3) 類似商標にも注意!

Rマークをつけるときには、類似商標にも注意が必要です。商標には、似たものも非常に多いため、間違いが起こりやすいのです。

特にロゴ商標の場合、いろいろなマークと文字の組み合わせがあるため、類似商標が非常に多く、区別が簡単ではありません。どの形が登録商標であったかについて勘違いしてしまうと、本来は商標登録していないロゴにRマークをつけてしまうことになります。この場合には、商標の虚偽表示につながります。また、自分の商標権の範囲であっても、紛らわしいケースではRマークをつけられない可能性があります。

一般では、自分の商標権の範囲内ならいつでもRマークを使うことができる、と誤解されがちなので、注意が必要です。
正しく安全にRマークを使うためには、弁理士によって表示方法の指定を受けておくことをおすすめします。

(8-4) イラストと文字の組み合わせ商標の場合

自社の商標が、イラストと文字の両方を含む場合には、問題が起こりやすいです。

この場合、イラストにはイラストとしての商標登録、文字には文字としての商標登録が必要です。また、イラストと文字の組み合わせのデザインを使う場合には、イラストと文字のデザイン全体について商標登録が必要です。

ここで勘違いしやすいのは、イラストの商標と文字の商標をそれぞれ取得している場合、イラストと文字の組み合わせを表示するときにRマークをつけて良いと考えてしまうのです。

しかし、そのようなことをすると、虚偽表示につながります。

「イラスト」、「文字」、「イラスト+文字」、の3種類の商標を使い分ける場合、そのすべてについて、商標登録をしなければなりません。それが面倒であれば、登録していないパターンについてはRマークや登録番号をつけてはいけないので、注意しましょう。

(8-5) 商標を変更した場合

いったん登録した商標を変更する場合にも、注意が必要です。

会社が長年存続していると、ネーミングやロゴマークなどのデザインを変えることも普通にあります。しかし、その場合、新たに変更した名前やロゴデザインは商標登録されていないのですから、Rマークをつけることはできません。デザイン変更をしたら、新たにそのデザインについて商標の出願をして、登録しなければならないのです。

変更をしたとき、商標登録をやり直すと手数料がかかりますし、面倒なので放置することもありますが、そうすると、他社に真似をされたり、他社に先に商標登録されたりしても文句を言えなくなってしまうため、登録しておくことをおすすめします。

(8-6) カテゴリー以外の事業で利用できない

商標の登録は、事業カテゴリーによって分けられています。そこで、ある商標を登録しても、登録した事業カテゴリー以外では商標登録していることになりません。

よって、登録カテゴリー以外の事業において商標を使い、Rマークをつけると違法になってしまうおそれがあります。

たとえば、「パンの製造」というカテゴリにおいて商標登録をしたとして、その後に同じ商標を使って「洋菓子の提供」をするとします。この場合、洋菓子の販売業については、その商標にRマークをつけてはいけないことになります。洋菓子販売業でRマークをつけたいなら、飲食物提供のカテゴリで商標登録をする必要があります。

(8-7) 外国登録商標に注意

日本の商標登録制度は、外国のものとは異なります。そこで、外国で商標登録されていても、日本で登録されていなければ、その商標を使うことはできません。

たとえば、アメリカの特許商標庁で登録されている商品のトレードマーク(商標)であっても、日本で商標登録をしていないなら、日本でRマークをつけることはできません。

アメリカで有効な権利が、日本でも有効であるとは限らないので、注意が必要です。

(8-7) 特許には使えない

商標登録でときどきある誤解として、特許権との混同があります。特許を取得した場合、その特許内容の表示について、Rマークを使って良いと思ってしまうのです。

しかし、特許と商標登録はまったく別個の制度です。特許を取っても商標登録したことにはならないので、Rマークを使うことはできません。

特許を取得して、発明品について商標登録をしたら、その商標についてはRマークをつけることができます。

(9)Rマークの根拠は?

(9-1) Rマークはアメリカの制度

次に、Rマークの根拠を確認しましょう。

Rマークは、アメリカの制度です。アメリカの特許商標庁において商標登録されると、Ⓡという表示をすることができます。

そして、アメリカでは、Ⓡを表示しているのに勝手にその商標を使われたら、損害賠償請求ができるとされています。

このように、Rマークはもともとアメリカに由来する制度ですが、便利なので日本で利用しているのです。後に説明するTMマークやSMマークも、同じくアメリカの特許庁に由来するものです。

(9-2) Rマークが使われている国

アメリカ以外でも、Rマークが使われている国がたくさんあります。

その例をご紹介します。

まず、ドイツ、ベルギーやハンガリー、オランダやポーランド、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国。

コスタリカやエクアドル、ニカラグァなどの中南米の国。

さらに、中国などでも利用されています。

(10)Rマーク以外のマークについて

Rマークには、類似したマークがいくつかあります。そこで、以下ではそれらのRマーク以外のマークとその意味をご説明します。

(10-1) TMマーク

まず、TMマークがあります。これは、™と表示されますが、Trade Mark(トレードマーク)の頭文字をとったもので、単なる「商標」の意味です。

つまり、登録されていてもされていなくても、「商標」であれば、TMマークの表示ができます。商標の出願申請中であっても出願申請前であってもTMマークなら利用可能で、表示してもOKです。

このTMマークもアメリカに由来する制度であり、日本の商標法にもとづくものではないため、法的な効力はありません。

商標を主張したい人なら、誰でもTMマークを使って大丈夫です。また、TMマークは、「商品」の商標に利用します。これに対し、次に説明するSMマークの対象はサービスです。

(10-2) SMマーク

SMマークは、℠と表示されますが、Service Mark(サービスマーク)の頭文字をとったものです。

考え方は、TMマークとまったく同じで、「商標」であることをあらわします。アメリカの制度であり、日本の法律上の根拠にもとづかない点も同じですし、日本の商標法上の制度ではないので、未登録や出願中の商標についても利用することができます。

ただ、TMマークが販売する「商品」に対して利用されるのに対し、SMマークは商品ではなく「サービス(役務)」の商標に利用されます。

たとえば、塾や予備校、レッスン教室などの教育のサービスや医療のサービスなどを表示する商標です。

なお、日本の商標制度にも役務商標というカテゴリがあります。そして、役務商標だからといって、商品商標と異なる特別な取扱いを受けることはありません。

(10-3) Cマーク

Rマークに一見よく似たマークとして、Cマークがあります。ただ、これはRマークやTMマーク、SMマークとは性質が異なります。
Cマークは、©と表記されますが、Copyright (コピーライト)の頭文字をとったもので、著作権を表示するものです。

著作権は著作物に対して認められますが、著作物は、自分が作り出した言葉や絵、音楽などの芸術的な要素を持ったものですから、商品やサービスに認められる商標権とは全く異なります。

商標については、商標登録しないと独占的な利用権が保護されませんが、著作権は、著作者に当然に認められる権利なので、登録は行いませんし、著作権の登録のための制度もありません。

そして、日本には著作権の登録制度がないため、Cマークについての定めも存在しません。Cマークをつけてもかまいませんが、つけなくても著作権として守られます。

著作権と商標権の違い

著作権と商標権の違いを、もう少し詳しく見てみましょう。

まず、権利の発生が異なります。

著作権の場合には、ある表現行為をすることで著作物をつくりだしたら、著作権は当然に発生します。登録の必要はありません。これに対し、商標を作っても当然に商標権が発生するものではなく、商標権は特許庁において登録してはじめて発生します。

また、権利侵害をした際の行為者の認識についての考え方が異なります。

まず、著作権を侵害した場合、「侵害していると知らなかった」と主張すると、責任を免れる可能性があります。このことは、著作権が登録されていないので、公示されていないことと関係があります。

これに対し、商標の場合にはきちんと登録されているため、侵害すると「知らなかった」としても、責任が発生します。このように、著作権と商標権とでは、保護の対象や権利の発生時期、権利の強さが、全く異なります。

登録が必要な分、商標権の方が強く保護されるので、大切な言葉やデザインは、著作権でなく商標登録によって守ることを考えるべきです。

著作権の2つの方式と条約について

以下では、著作権の考え方についてもう少し詳しく説明します。このことは、Cマークの意味とも関連します。

実は、著作権の取扱については、2つの方式があります。

1つは、権利が発生するために特別の申請や登録が不要な方式です。このことを、無方式主義と言い、日本はこちらの制度を採用しています。

これに対し、著作権の発生のために、特別の申請や登録が必要な方式があり、これを方式主義と言います。

方式主義を採用している代表的な国は、アメリカや南アメリカの諸国などです。

このように、著作権の取扱方法が異なるのは、条約と関係があります。

著作権に関する条約には、万国著作権条約とベルヌ条約の2つがあります。そして、万国著作権条約にのみ加盟している国は、方式主義を採用していて、Cマークを利用します。

このような国ではCマークの表示をしないと著作権の主張ができません。

これに対し、日本のように、ベルヌ条約に加入している国は、無法式主義を採用しています。その場合、申請や登録をしないでも、当然に著作権が発生するので、Cマークを表示しなくても著作者として権利を主張し、認めてもらうことができます。そこで、日本では特にCマークを表示しなくても、著作権が守られます。

また、このように2つの方式が対立している状態を調整する努力も進められています。

具体的には、現在ではほとんど全ての国がWTOに加盟しており、その中のTRIPs協定という協定によって無方式主義を基本とする合意ができています。

(11)まとめ

以上のように、Rマークは日本における制度ではありませんが、自社の商標を主張するために非常に役立つ方法です。

ただし、自分ではRマークを利用できると思っても、実は利用できないケースもあります。

また、長らく利用していなかったり間違った使い方をしたりすると、虚偽表示とみなされたり取り消されるおそれもあります。

そこで、Rマークを使うときには、きちんと管理し、正しく利用することが大切です。

Rマークをつける方法やつけても良いケースなどについて、自分では詳細な要件などを判断しにくい場合には、弁理士事務所に相談して、指示を受けると良いでしょう。

弁理士は、東京をはじめとして全国に対応していますし、商標登録や更新の手続きも代行してくれます。今回の記事を参照して、上手に商標を活用して、自社に良い結果をもたらしましょう。

ファーイースト国際特許事務所

平野泰弘所長弁理士