特許事務所は客を見て対応を変える?
特許事務所や法律事務所は、客を見て態度を変えます。
あなたは特許事務所や法律事務所が客を見て態度を変える、と聞いてびっくりしましたか?別に特許事務所や法律事務所は、金持ちだけを優遇する、という意味ではないです。
法律により、お客さまからの仕事の依頼を断らなければならない場合があるのです。実は特許事務所や法律事務所には、「敵と味方の両方の仕事を請けてはいけない」との法律のしばりがあります。
例えていうなら、野球の同一試合で「阪神」の監督と「巨人」の監督とを、一人が兼任することはできない、というものです。
仮に野球の試合で両チームの監督が通じあっていれば、いくらでも八百長ができてしまいます。敵と味方の監督が同じでは公正な試合ができません。
このような事態が商標の分野で実際に発生することを防ぐために「既に受任している先のお客さまと敵対関係にあるライバルの仕事を受注してはいけない」、との決まりが特許事務所や法律事務所にはあるのです。
要は、敵の案件と味方の案件との関係のように、利益が互いに相反する商標登録の案件を請けることができない決まりになっています。
寄らば大樹の陰が鉄則だが
仕事を依頼するなら寄らば大樹の陰の原則にしたがい、老舗の特許事務所に仕事を依頼することをあなたが考えたとします。
仮にあなたが自動車のトヨタをライバルとする会社であったとします。
あなたからの仕事を請けることになる老舗の特許事務所は、「あなた」を選択するか、あるいは、「トヨタ」を選択するかの究極の二択を迫られることになります。
トヨタに限らず規模の大きい会社からは継続的に大量の受注が発生します。
これに対し、規模が小さい会社からは大企業の場合に比べて、それほど受注は発生しないのが通常です。
老舗の特許事務所が仮にトヨタと付き合いがあったとしたら、あなたからの仕事の依頼を躊躇なく断ることでしょう。
老舗の特許事務所側も、大企業からの大量の仕事に対応できるだけの大人数を雇用し続けなければなりません。このため、現行と同等以上の大量の仕事を発注してくれる保証がないかぎり、トヨタ等の大企業からの仕事を捨てる決断をしないのです。
これが、新しく商標の仕事を老舗の特許事務所に依頼した時に、「敷居が高いな」と感じる理由です。
一見さんお断り、ということですね。
老舗の特許事務所がネットで広く商標の仕事を募集していないのは、上記の事情によるところが大きいです。
商標の特許事務所を選ぶ際の注意点
ネットで調べると多くの業者が商標関連の広告を出しています。
商標の特許事務所を選ぶ際の注意点は次の通りです。
(1)特許事務所の運営が確認できること
特許事務所を名乗ることができるのは弁理士だけです。また特許庁に商標登録の手続を職業として実施できるのも弁理士だけですが、違法業者は法律上、特許事務所も弁理士資格も名乗ることができません。
どの特許事務所が運営しているか分かりにくいウェブサイトは避けるのがよいです。
特に運営者の住所はインターネットで検索し直した方がよいです。実体のない、郵便ポストだけのバーチャルオフィス場合や時間貸しオフィスの場合は、全く同じ住所に互いに関連のない業者情報が大量に出てくるので、それと分かります。
アパートの一室の経営等の場合には、例えば、住所の最後に「321号」等といった部屋番号がでてくるので、それと分かります。
(2)仲介業者の場合は、ネットで裏を取ること
仲介業者を通して特許事務所を選択する場合は注意が必要です。仲介業者の立場に立てば分かりますが、できるだけ高い単価で受注して、できるだけ安い下請けに仕事を回した方が、仲介業者が儲かります。
しっかりした特許事務所であればお客さまが自然に集まるから、そもそも仲介業者に頼る必要がありません。仲介業者に頼るところは、何らかの問題を抱えている可能性があります。
このため仲介業者により紹介されている情報は、最低限、実際にネットで情報を再検索してみて、その情報が確認できるかどうかを検証します。
特許事務所を選ぶ条件
(1)あなたのライバルの代行を行っていないこと
競業者の関係先に、あなたの最新情報を託すことは避けた方がよいです。これから仕事を依頼する特許事務所が、あなたのライバルの仕事をしているかどうかは、ここから分かります。
(2)商標専門弁理士が手続を行っていること
通常、特許事務所の所長は商標以外にも、特許・実用新案・意匠等の産業財産権に加え、侵害訴訟にも対応してます。ですので、特許事務所には「所長以外の」商標専門弁理士が必ずいます。
この「商標専門弁理士」の活動実績を事前に必ずチェックします。
商標専門弁理士の活動実績が確認できない場合には、外部からは見えない何らかの事情が隠れています。商標に不慣れな弁理士が商標業務を兼任しているか、または、商標専門の弁理士が、そもそも存在しない可能性があります。
「商標専門弁理士」の活動実績が、ここから分かります。
(3)二名以上の弁理士の存在が外部から確認できること
一名しか弁理士がいない事務所に仕事を依頼した場合、その弁理士が病気で倒れたら、業務の進行が全面ストップします。このリスクがあるため、通常弁理士が一名の事務所に対して、しっかりした会社は仕事を依頼することを躊躇します。
一名しか弁理士がいない事務所には仕事が集まりませんので、大手特許事務所で仕事を請けて、その仕事を一名弁理士に下請けに出すことにより、一名しか弁理士がいない事務所で、その一人弁理士が病気になったり、事故にあったりして業務を遂行できなくなった場合に備えます。つまり、元請けの大手特許事務所が業務遂行の保証を行います。
もちろん、大手特許事務所はあなたからの仕事を下請けに出す、とはあなたにはいいません。「提携事務所と共同で業務を遂行している」、と表現します。「提携」とか「共同作業」とかのキーワードにより、下請けに出しているかどうかが分かります。
ただし、一名しか弁理士がいない特許事務所にもメリットはあります。
一名しか弁理士がいない特許事務所に、大手特許事務所を介さずに直接仕事を依頼すれば、大手特許事務所のはねるマージン分を安くしてもらえます。その弁理士が病気で倒れたとか、交通事故にあったとかの不測の事態に遭った場合は業務の進行が全面ストップするリスクはあるものの、大手特許事務所との下請け関係が解消されるので、格安の費用で商標登録の仕事を引き受けてくれる場合があります。
さらに一名しか弁理士がいない特許事務所では多くのスタッフを雇う必要がないため人件費を節約することができ、格安の費用で商標登録の仕事を引き受けてくれる場合があります。
特許事務所に何人の弁理士が所属しているかが、ここから分かります。
【重要】特許事務所に所属する弁理士の人数を水増しする方法
勤務実態のない弁理士を、勤務弁理士として登録することにより、特許事務所に一人しか常勤弁理士がいないにも関わらず、二人以上に見せかける方法があります。
上記で弁理士の特許事務所を特定した後は、各弁理士ごとに「(主)主たる事務所」の表示がされています。ここに「(従)従たる事務所」の表示がでていれば、その弁理士は「その事務所にはいない」、と推定することができます。通常は主たる事務所にいるからです。
「(従)従たる事務所」の表示が出た弁理士については、その弁理士の「(主)主たる事務所」がどこかを追跡することにより、特許事務所相互間の業務上の下請け関係、元請け関係を知ることができます。
(4)所長に特定侵害訴訟代理業務付記資格があること
弁理士の場合、弁理士の資格があるだけでは東京地裁や大阪地裁等の裁判所における商標権の侵害訴訟の代理業務ができません。商標権の侵害訴訟代理業務を行うためには、弁理士の資格とは別に「特定侵害訴訟代理業務」についての資格を持つ必要があります。
商標権の訴訟に対応できる特許事務所の場合、通常は、所長は特定侵害訴訟代理業務付記資格を持っています。
確認の方法は簡単です。電話をかけて、東京地裁や大阪地裁で、商標権の「侵害訴訟代理」を務めたことがありますか、と聞いてみればよいです。
「侵害訴訟の代理人」がキーワードです。
侵害訴訟の代理ができない業者の場合には、「侵害訴訟の経験がある(補佐人として参加したことがある等)」とか「提携先がある(外部に丸投げする等)」とか、言葉を濁してきます。
(5)常勤の弁護士が実在すること
東京地裁や大阪地裁等の裁判所における商標権の侵害訴訟の代理業務は、弁護士との共同受任が法律で義務付けられています。このため、特許事務所内に弁護士がいない場合には、「特許事務所の対応費用」に加えて「弁護士のいる法律事務所への委託費用」が、二重に必ず発生します。
弁護士が常勤している特許事務所の場合には、将来の商標権活用を念頭においた内容を商標登録出願の書類内容に盛り込むことが可能です。
ファーイースト国際特許事務所