(1)「大曲の花火」と商標のかかわり
毎年、8月末に秋田県で行われる全国花火競技大会は、「大曲の花火」として広く知られ、日本三大花火大会の1つに数えられています。
その歴史は古く、第1回目が行われたのは明治時代(1910年)というから驚きです。
この大会では、作製した花火を花火師が自ら打ち上げ、優秀者には内閣総理大臣賞や経済産業大臣賞などの各賞が与えられます。
毎年、多くの観客が足を運び、2010年には過去最高に80万人が訪れました。
(1−1)登録商標「大曲の花火」について
最初に商標登録されたのは?
「大曲の花火」として、最初に商標登録したのは秋田県内にある秋田清酒株式会社でした。
登録情報や区分は次のようになります。
商標登録 第2517230号
出願日:1990年7月9日
登録日:1993年3月31日
区分は以下の通りです。
- 第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒」
花火大会にまつわる商標登録
その後、大曲商工会議所によって、花火大会に関連する「大曲の花火」の商標が複数登録されています。
それぞれの登録情報と区分は次のようになります。
商標登録 第4692016号
出願日:2002年5月22日
登録日:2003年7月18日
区分は以下の通りです。
- 第41類「花火の興行の企画、運営または開催」
商標登録 第5458799号
出願日:2011年6月16日
登録日:2011年12月22日
区分は以下の通りです。
- 第16類「印刷物」
- 第41類「花火の興行の企画、運営または開催」
商標登録 第5791830号
出願日:2015年2月2日
登録日:2015年9月11日
区分は以下の通りです。
- 第9類「電気通信機械器具、電子応用機械器具およびその部品、インターネットを利用して受信しおよび保存することができる画像ファイル、録画済みビデオディスクおよびビデオテープ、電子出版物」など
- 第11類「電球類および照明用器具、家庭用電熱用品類、ちょうちん、加熱器、調理台」など
- 第14類「キーホルダー、記念カップ、身飾品、時計、宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品」など
- 第16類「紙製包装用容器、プラスチック製包装用袋、紙類、文房具類、写真」など
- 第18類「かばん類、袋物、傘、愛玩動物用被服類、つえ」など
- 第19類「セメントおよびその製品、木材、石材、灯ろう、石製彫刻」など
- 第20類「クッション、まくら、マットレス、木製・竹製またはプラスチック製の包装用容器、うちわ」など
- 第21類「化粧用具、ガラス製または陶磁製の包装用容器、プラスチック製の包装用瓶、貯金箱、花瓶」など
- 第24類「布製身の回り品、かや、布団、カーテン、テーブル掛け」など
- 第25類「被服、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」
- 第26類「テープ、リボン、ボタン類、造花、腕章」など
- 第28類「人形、将棋用具、すごろく、トランプ、運動用具」など
- 第29類「乳製品、肉製品、加工水産物、加工野菜および加工果実、カレー・シチューまたはスープのもと」など
- 第30類「茶、コーヒー、菓子、調味料、穀物の加工品、」など
- 第31類「生花の花輪、野菜、果実、ドライフラワー、苗」など
- 第32類「清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、乳清飲料、ビール製造用ホップエキス」
- 第34類「たばこ、喫煙用具、マッチ」
- 第35類「広告業、トレーディングスタンプの発行、コンピュータデータベースへの情報編集、建築物における来訪者の受付および案内、広告用具の貸与」など
- 第43類「宿泊施設の提供、飲食物の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介または取次ぎ、動物の宿泊施設の提供、会議室の貸与」など
(1−2)ブランドを守るために 〜商標使用の規定について
権利者である大曲商工会議所は、2016年4月から「大曲の花火」の商標使用を有償にするなど、使用についての規定をまとめました。
使用希望者は、商標のサンプルや写真を添付して「商標使用許諾申請書」を提出します。
その後、審査が行われ、問題がある場合は「使用拒否通知書」が発行されます。
このようにして、不正に名称が利用されたり、関係する商品が製造・販売されることを防ぎ、これまで長い時間をかけて築き上げてきた「大曲の花火」のブランドを守ろうとしているのです。
(2)演出や技術も商標登録で保護を
(2−1)現代花火のショーを商標登録
花火の技術も時代とともに進化しています。
現在では、夜空に花火玉を打ち上げるだけでなく、趣向を凝らした演出で観客を魅了する大会も増えています。
国内外で数多くの花火ショーを手がける丸玉屋では、会場に流れる音楽と花火を連動させる「花火ファンタジア」を商標登録しています。
これは、花火専用のコンピューターシステムを使い、点火から開花までの時間やハイスピードでの打ち上げを制御することで、一連の打ち上げを大きな流れとして見せるものです。
この演出によって、観客は花火の美しさにふれるだけでなく、ストーリー性のある音楽花火ショーとして楽しむことができます。
登録商標「花火ファンタジア」について
「花火ファンタジア」は、複数登録されています。
それぞれの登録情報と区分は次のようになります。
商標登録 第4045757号/第4107684号
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
商標登録 第4045757号
出願日:1995年6月9日
登録日:1997年8月22日
区分は以下の通りです。
- 第13類「花火玉」
商標登録 第4107684号
出願日:1995年6月9日
登録日:1998年1月30日
区分は以下の通りです。
- 第41類「花火ショーの企画・制作または開催、コンピューターを使用した花火・照明効果および音楽からなる屋内・屋外ショーの企画・制作または開催、音楽その他を演出効果として使用した屋内・屋外での花火ショーの企画・制作または開催」
商標登録 第5271878号
出願日:2009年4月10日
登録日:2009年10月9日
区分は以下の通りです。
- 第41類「花火ショーの企画・制作または開催、コンピューターを使用した花火・照明効果および音楽からなる屋内・屋外ショーの企画・制作または開催、音楽その他を演出効果として使用した屋内・屋外での花火ショーの企画・制作または開催」
(2−2)祭りで披露される花火を商標登録
春を告げる祭りとして、埼玉県秩父地方で行われている「山田の春祭り」では、毎年、音楽に合わせた花火が披露されています。
これは地元に本社工場がある金子花火によるもので、約25年の歴史があります。
日本で初めて「音楽花火」の開発を行ったといわれており、商標登録もそのときに行われました。
音楽花火(商標登録 第3022259号)
出願日:1992年8月24日
登録日:1995年1月31日
区分は以下の通りです。
- 第41類「打ち上げ花火の上演」
(3)まとめ
各地で行われる花火大会は、開催地と密接にかかわっています。
地域振興においても重要な役割を果たすことから、大会そのものをブランドとしてとらえ、商標登録によって権利を守ろうとする自治体も出てきました。
また、職人や関係者が苦労してつくり上げた花火の技術や演出を他者に奪われないためにも、商標登録で保護することが重要になります。
多くの観客を魅了する花火の裏側には、開催に至るまでの地元の人々や関係者の尽力と、商標登録による保護があったのですね。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247