1. 沼津港深海水族館の商標とは
小さな絵に込められた水族館の目玉
沼津港深海水族館では入り口やホームページなど、さまざまなところで特徴的な商標が使われています。この商標を最初にみたとき、左上の魚のシルエットに目がいった方も多いのではないでしょうか。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
このシルエットは「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスの姿を表しています。
沼津港深海水族館の2階には「シーラカンス・ミュージアム」があり、世界で唯一、冷凍されたシーラカンスをみることができます。水族館の大きな特色が、商標のなかにしっかりとデザインされていることがわかります。
沼津港深海水族館(商標登録 第5802605号)
沼津港深海水族館は、2011年に地元の水産会社によって建設されました。その後、2015年に商標として登録されています。
3億5000万年前と変わらない姿・シーラカンス
シーラカンスが最初に捕まえられたのは、1938年の南アフリカ、チャルムナ川沖での出来事でした。絶滅したと考えられていたシーラカンスが、3億5000万年前と同じ姿で発見されたという事実は、当時の世界の人々を仰天させました。
シーラカンスは背骨がなく、体液で満たされた脊柱で頭から尾びれまでつながっており、まるで歩くような姿で泳ぎます。肉質の胸びれと腹びれには大きな骨と関節があり、これはほかの魚にはみられない特徴です。そのため、魚の時代と呼ばれている古生代デボン紀にシーラカンスの仲間から進化が始まったと考えられています。魚類から両生類へと変化する過程の姿でいる可能性も指摘されています。
シーラカンスは、最初の発見以降、南アフリカ以外にもタンザニアやコモロ諸島、インドネシアなどで姿が確認されています。
2. 深海という未知にふれられる空間
深海生物に囲まれて感じる進化の謎
沼津港深海水族館のすぐそばにある駿河湾は、最も深いところで2,500メートルという日本一の深さを誇っています。館内では、駿河湾で発見された深海生物を中心に、多くの生きものがテーマ別に展示されています。一風変わった姿をしたものや貴重な生きものも多く、深海という未知の世界にふれることができます。
深海には生命の誕生や進化に関する謎を解く鍵があるといわれています。太陽の光の届かない深い海で、何万年も前から姿を変えずにきた多くの生きものたち。そんな深海生物に囲まれた館内を歩いていると、遠い昔から現在までの長い長い地球の歩みも感じられます。
世界的にも貴重な施設「シーラカンス・ミュージアム」
「シーラカンス・ミュージアム」では、5体のシーラカンスが展示されています。そのうちの2体は、世界でも類をみない冷凍個体です。
シーラカンスはワシントン条約に指定されており、通常では商業目的の展示を行うことはできません。しかし、沼津港深海水族館のシーラカンスは一般公開が正式に認められたもので、日本で直接目にできるのはこの施設のみとなっています。
個体展示のほかに、シーラカンスの映像をみることもできます。コモロ諸島で撮影された海中の遊泳映像や、0.6mm幅のCTスキャンを行って再現した立体映像などをみながら、最新のデータを元に生体の謎にも迫れます。
沼津港深海水族館に足を運びたい方へ
沼津港深海水族館は、静岡県沼津市にあり、基本的に年中無休となっています。詳細は、以下のURLで確認できます。
「沼津港深海水族館」
https://www.numazu-deepsea.com/
館長は「海の手配師」としても活躍
館長の石垣幸二氏は、沼津港深海水族館の立ち上げに奔走し、現在も仕入れや展示など、水族館の運営に大きな役割を果たしています。世界の水族館やペットショップに生物を届ける「海の手配師」としての顔ももっています。たくさんのイベントやメディアにも登場しているので、お顔をみたことがある人もいるのではないでしょうか。
3. まとめ
商標のなかに小さく描かれたシーラカンスのシルエットは、沼津港深海水族館にとって大きな意味をもつものでした。
普段、観光施設のホームページや看板、グッズなどで商標を目にしても、それほど気にとめない方も多いでしょう。しかし、じっとみてみると、その施設の特徴がわかりやすく示されているものも数多くあります。
休日にどこかに行ったとき、その施設の看板などに注目してみてはいかがでしょうか。商標のなかの小さな絵やデザインの意味に気づき、ちょっとした知識を披露できるチャンスになるかもしれません。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247