(1)商標権は売ることができる?
はい、商標権は財産権なので、売却が可能です
商標権の大きな特徴の一つは、他人に勝手に商標を使わせない権利があることですが、もう一つ重要なポイントは、その商標権自体が売買できるということです。
商標権の大きな特徴の一つは、他人に勝手に商標を使わせない権利があることですが、もう一つ重要なポイントは、その商標権自体が売買できるということです。
注目ポイント!
商標権は、不動産の権利と同様に、売却が可能です。
商標権の売買方法
実際には、商標権を持つ人が、その権利を欲しい人に対して権利を譲渡する形で取引が行われます。この際、有償で条件を設定することで、商標権を実際に売買することができるのです。
たとえば、長年使ってきた商品名に関する商標権を他者に売却する場面を想像してください。
契約が成立すれば、その商品名の商標権を売却し、対価を受け取ることができます。
商標権は売ることができるの?
商標権は売買可能な権利なので、商標権の購入を希望する人と合意できたなら、有償移転の形で売却できるんだ。
商標権がなければ、自由に使われるリスクが…
もし商標権を持っていなければ、他人に無断であなたの商標を使われても、その使用を止めさせることは非常に難しいでしょう。
商標権がないと、法的に他者の使用を阻止する根拠が弱くなってしまうからです。
商標権で交渉を有利に進める!
一方、商標権を持っていれば、無断使用に対しては差止請求や損害賠償を求めることが可能です。さらに、法人には3億円以下の罰金、個人には10年以下の懲役刑などの刑事罰が科される場合もあります。
この強力な法的保護を背景に、商標権を売却する際の交渉でも、圧倒的に有利な立場に立つことができるのです。
(2)商標権の売値は取得総額を参考に
商標権の売値に関して、「いくら以上で売るべき」や「これ以下では売ってはいけない」といった明確な基準は存在しません。オークションと同様に、交渉次第では数億円以上の取引が成立することもあります。
コストアプローチとは?
注目ポイント!
コストアプローチは、商標権を取得する際にかかった総費用をベースに売値を決める方法です。
具体的には、商標権を取得するのに要した費用、つまり手続きや登録にかかった金額を基準に、その商標権の価値を評価します。
コストアプローチのメリット
コストアプローチの利点は、商標権の売値決定のプロセスが透明である点です。
商標権取得にどれくらいの費用がかかったかは、インターネットや日本弁理士会の公開資料などで確認できるため、当事者間で価格に納得しやすくなります。
コストアプローチのデメリット
一方で、コストアプローチには課題もあります。たとえば、誰も欲しがらないような商標権でも、非常に価値のある商標権でも、同じように取得費用を基準に売値を設定してしまうと、両者が同じ価格帯にされてしまう危険性があります。
つまり、価値の異なる商標権を同じ基準で扱うことで、取引において問題が生じることがあるのです。
コストアプローチは最低価格の目安に
そのため、コストアプローチは商標権の売買において積極的に使われるというよりも、最低売値の参考基準として利用されることが多いです。
商標権の取得額から商標権の値段を考えるのがコストアプローチなのね。
費用の考え方としては非常に分かりやすいけれど、どの商標権もほぼ同額になってしまう問題があるよ。
(3)商標権の売値は市場の取引額を参考に
例えば、インターネットオークションで欲しい商品を落札しようとする際、その商品がどの程度の価格で取引されているのかを調べるでしょう。同じように、商標権を売却する際にも、市場での取引価格を参考にする方法があります。
注目ポイント!
商標権の売値を、市場での取引情報をもとに決定する手法を「マーケットアプローチ」と呼びます。
商標権の売値を、市場での取引情報をもとに決定する手法を「マーケットアプローチ」と呼びます。
マーケットアプローチは、日常の経済活動でもよく使われている手法で、実際の取引額を参考にしながら最終的な売値を決めます。
マーケットアプローチのメリット
マーケットアプローチの利点は、実際の市場価格を基準にすることで、取引額に納得感を持たせやすい点です。似たような商標権の取引価格を参考にすることで、売値が不当に高すぎたり、逆に安く買い叩かれるリスクを減らすことができます。
マーケットアプローチのデメリット
しかし、商標権は独占権であり、同じ内容のものは二つとして存在しません。そのため、他の商標権の取引価格を、完全に自分の商標権に当てはめることができるかどうかは疑問が残ります。
さらに、商標権の売買事例は一般に広く公開されているわけではなく、専門家でなければ実際の価格帯を知る機会が限られるという問題もあります。
マーケットアプローチは、商標権を売却する際の価格決定に有効な手段ですが、他の商標権との売却額の公平性をつかみにくい点に注意が必要です。
商標権の市場取引価格から商標権の値段を考えるのがマーケットアプローチなのね。
独占権である商標権は全く同じ権利内容のものは二つとしてないので、他の取引価格を参考にできるかという根本問題があるんだ。
(4)商標権の売値はその商標権の稼ぐ力を参考に
同じ規模の2つの会社が、同様の商品を販売しているにもかかわらず、売上が大きく異なることがあります。その理由は、目に見えない「ブランド」の影響です。商品が高く売れる背景には、このブランド力が関係しているのです。
注目ポイント!
商標権が生み出す利益を基に、その価値を決める方法が「インカムアプローチ」です。
例えば、ある商標権が年間1000万円の利益を生み出しているとした場合、その商標権の価値はどれくらいなのかを考え、その商標権の売却額を算出します。このように、商標権がもたらす利益を基にして売値を決めるのがインカムアプローチです。
インカムアプローチのメリット
インカムアプローチでは、例えば年間1000万円の利益を生み出す商標権がどのくらいの価値を持つかを考えます。これは、同じく利益を生み出すベンチャー企業の買収価格や事業承継の事例を参考にして、商標権の価値を検討することができます。さらに、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)を用いて、将来の利益を現時点の価値に換算することで、商標権の具体的な売値を算定します。
この手法は、商標権の個性を考慮に入れた価格決定が行われるため、取引に関わる全員が納得しやすいという利点があります。
インカムアプローチのデメリット
一方で、インカムアプローチにはさまざまな仮定や係数を使用するため、その妥当性について意見が分かれることもあります。これにより、売値の算定において解釈が異なることがある点がデメリットと言えるでしょう。
商標権の売値をインカムアプローチで決定する際には、商標権がどれだけの利益を生み出す力を持っているかを正確に把握することが重要です。
商標権が生み出す利益から商標権の値段を考えるのがインカムアプローチなのね。
一定額を生み出すシステムはどのくらいの価値があるのか計算で求めるのがインカムアプローチなんだ。
(4)まとめ
商標権の売値を決める際には、さまざまなアプローチがあります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、特に「コストアプローチ」や「マーケットアプローチ」と比較しても、価格の根拠が明確に示される「インカムアプローチ」が多く採用される傾向にあります。
しかし、商標権を売却する際に重要なのは、「売ってほしい」と申し出るのではなく、商標権の価値を高めることです。
自分から商標権を買ってほしい、と願いでるのは商標権を廃品回収に出すのと同じで、買い叩かれてしまいます。
考え方はオークションと同じで、その商標権がほしい、という方が多数現れないと、高額売却は望めないです。
商標権を廃棄物のように安く手放すのではなく、他者から「ぜひ使いたい」「ぜひ譲ってほしい」と言われるような価値ある商標権を育てることが、あなたに求められる重要な役割です。自分から買ってください、というのではなく、相手から売ってください、といってもらうのがコツです。
商標権はビジネスの大きな資産です。その価値を最大限に引き出し、適切に取引するためには、しっかりとした価値の見極めとアプローチが欠かせません。
これからの活動で、あなたの商標権が多くの人に求められる存在になることを目指しましょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247