1. ヴァンフォーレ甲府が登録している商標について
サッカーチームのブランド価値を守る商標登録は重要な役割を果たしています。株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブは、チームの象徴的なエンブレムやロゴ、そして親しまれている「vfk」という通称について、複数の商標登録を行っています。
現在では解決しましたが、以前はチームとは商標権者が違ったので問題が生じていました。
2. 問題に関連する商標権
以前商標権の所有を巡って争いがあった事件に関連する登録商標は6件存在します。それぞれ特許庁に正式に登録されています。
商標登録第4216037号
第4226167号
第4387618号
第4391483号
第4429216号
第4840423号
これらの商標は、チームのアイデンティティを法的に保護する重要な資産となっています。
商標登録の対象となるのは、サッカーチームのシンボルマークだけではありません。ファンから愛される「vfk」という文字商標も、チームの価値を守る上で欠かせない要素として登録されています。これらの登録により、チームのブランドイメージが第三者による無断使用から守られているのです。
3. vfkの商標をめぐる問題とその解決
商標登録の意義は、単なる権利の確保だけにとどまりません。ヴァンフォーレ甲府の事例では、商標権をめぐる問題が発生し、その解決において商標登録が重要な役割を果たしました。
サッカーチームの商標には、経済的な価値が存在します。vfkのロゴが付いた商品は、サポーターはもちろん、一般の消費者にも広く購入されています。
もし正規品でない商品が市場に出回ってしまうと、正規品を求めて購入した消費者の信頼を損なうことになります。商標登録は、こうした事態を防ぐための法的な防御手段として機能しています。
2009年から2014年にかけて、ヴァンフォーレ甲府と前身である甲府サッカークラブの間で、エンブレムやロゴの商標権をめぐる訴訟が発生しました。
この争いは、ヴァンフォーレ甲府関連の商標権を保有する旧クラブの代表者が営業権の有償譲渡に対する対価が支払われていないと主張し、支払いや商標使用の差し止めを求めて提訴したことから始まりました。
一方、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ側は、商標権利用料の支払いは適切に行われており、日本プロサッカーリーグ発足時には営業権も正当に移転していたと主張しました。
この訴訟は長期にわたって続きましたが、最終的には両者の和解により解決に至りました。
4. 商標登録が持つ真の価値
この訴訟を通じて浮き彫りになったのは、商標登録が単なる権利の保護以上の意味を持つということです。
仮にヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ側が訴訟で勝訴したとしても、旧クラブが商標権を保有している事実は変わらず、使用料を支払い続ける必要がありました。
そこで、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブは実務的な判断を下し、合理的な金額で商標権の譲渡を受けることにしました。同時に、旧クラブが主張していた事項について、今後一切の請求を行わないという内容で和解が成立しました。
和解成立後、当時の会長である海野一幸氏は「解決できてほっとしている。さらなる飛躍に向け努力する」とコメントし、チームの前進への意欲を示しました。
その後、現在に至るまでエンブレムやロゴなどの商標に関する新たな問題は発生しておらず、vfkの商標を巡る問題は安定的に解決されています。
もしvfkなどの商標が正式に登録されていなかったとしたら、誰が真の権利者であるかを巡って、さらに複雑な紛争に発展していた可能性があります。
特許庁における商標登録は、権利者を明確に確定させ、将来的な紛争を予防する役割も果たしているのです。
商標登録は、チームのブランド価値を守るだけでなく、権利関係を明確にし、ビジネスの安定的な運営を支える基盤となっています。ヴァンフォーレ甲府の事例は、スポーツチームにおける知的財産管理の重要性を示す貴重な実例となっています。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247