(1)商標の調査とは
商標調査の重要性
商標権侵害を回避する
ネーミング等に、新たに商標を使うケースでも出願申請のケースでも、先の権利者に無断で登録商標と比べて同じ商標か類似する商標を、登録商標の指定商品とか指定役務と関連する分野に使用すれば商標権侵害になる点を商標法は規定しています。
先んじて商標の調査により確認すれば、既に商標登録された他の商標権に対して、商標法違反と判断されることを防ぐことができます。
商標出願、登録時の手間を省く
既に類似する商標が登録されている場合、類似する商品とかサービスに対して後から申請出願しても審査で拒絶理由通知が審査官から出されるため、対応を迫られます。
特許庁のウェブサイトを通じてアクセスできるJ-PlatPat等の商標データベースを用いて商標調査を先んじて行えば、商標出願の際に審査を通過できない場合の対応の手間がなくなり、登録までの手間や時間を節約することができます。
(2)商標の調査方法
特許情報プラットフォームによる商標検索
特許庁のウエブサイト経由で無料によりアクセスできる特許情報プラットフォームとの商標データベースで、商標検索は通常実施します。
この特許情報プラットフォームがJ-PlatPatです。
図形商標検索
ネットでいつでも利用可能な特許情報プラットフォームは、図形商標検索に対応できます。
図1 図形等商標検索の画面
図形商標の検索を実施する場合には、図形等分類のコードを検索欄に記入します。図形等分類コードは、図形等分類表により適切なものを選びます。
図2 図形等分類表の画面
関連するコードが多量にあり、慣れないと操作が困難です。目的とする図形等分類コードを見つけるためには、インターネットブラウザ上で「CTL(コントロール)+ F」により検索モードに切り替え、キーワードを入力しながら当たりを付けるといった方法もあります。
図3 図形等分類コード入力の画面
青色の下線が引いてあるコードをクリックすると、自動的に図形等商標検索の検索条件にセットされます。
右下の「セット」ボタンを押すと、図1の図形等商標検索の画面に図形等分類コードが入力されます。
図4 図形等分類コード入力の画面
次に区分を検索欄に入れます。入れる区分は、第1類から第45類までのいずれかにあてはまる区分です。例を挙げると図形商標に使用される役務が飲食物の提供のケースは、区分は第43類になります。この場合は区分の入力部分に「43」(括弧は不要。半角数字のみ)を入力します。
検索ボタンを押すと、図形商標の検索結果が出ます。
類似群
類似群とは、互いに類似する商品や役務のグループの総称です。
同じ区分に属する場合でも互いに異なる商品や役務があり、逆に同じ区分に属さない場合でも互いに類似する商品や役務があります。これらを分別する目的で、互いに類似する商品とか役務について、同じ類似群コードを割り振って判断基準に使います。
類似群分類表
参照用に、類似群分類表を示します。
コード
類似群コードとは、商品や役務のそれぞれに割り当てられた、数字4桁とアルファベット一文字とを組み合わせた文字列のことです。この類似群コードが合致する商品や役務は、互いに類似しているものとして特許庁で扱われます。
各商品や役務は区分ごとに45個に分かれて整理されています。各区分に属する商品や役務に対して、さらに個別に類似群コードが割り振られています。
類似群コードが各商品や各役務に振られているのは、区分の枠を超えて、互いに類似する関係を示すためです。相互に類似する商品や役務に対して、同じ類似群コードが振られます。
商標の区分は大きな分類であり、類似群コードは小さな分類である、と理解してよいです。
ただし、区分が一致しても相互に類似しない商品・役務があります。相互に類似するか類似しないかは類似群コードが相互に一致するかにより判定します。
称呼検索
商標の検索は、商標のカタカナの呼び方を検索欄に入れて実施します。
まず特許情報プラットフォームのJ-PlatPatを開き、称呼検索を選択します。
図5 称呼検索の画面
次に称呼を検索欄に入れます。例えば商標が「青空」の場合には、「アオゾラ」とカタカナで入力します。入力したカタカナが商標の称呼になります。
商品・サービス区分を入力して、検索ボタンを押せば、その区分に関係する検索結果が表示されます。
図6 称呼検索の結果表示画面
非常に簡単に扱えるJ-PlatPat の称呼検索に関して、実は商標データベースも完全ではありません。
例えば、商標「シュミレーション(造語。本当は”シミュレーション”が存在するかどうかを調べて見ましょう。
図7 商標「シュミレーション」の称呼検索結果
この結果をよくみると、右側の画像商標は「シミュレーション」と書いてあるのに、称呼(参考情報)には「シュミレーション」と書いてあります。つまり、称呼(参考情報)に誤記がそのまま残っています。
称呼(参考情報)に誤記があると、検索結果に影響がでることも考えられます。
もしかすると本当はヒットするはずなのにヒットしなかった、という事故が生じる可能性が残ります。人間の手で文字情報を入力している以上、ミスはあるかも知れませんが、こういったミスも見越した上で、大丈夫かどうかを考える必要があります。
自分で調べるべきか
調査スキルと時間があれば、自分で調査できます。
実際にJ-PlatPat等の商標データベースを使ううちに、検索に慣れてきます。
ただし、的確に検索できているかどうかは自分ひとりだけでは正しいのか修正が必要なのか判断が難しいとの限界もあります。
こういった背景から、慣れないうちはキーワード等の条件指定等が難しいデメリットがあります。
また自分で検索を行えば、時間がかかる問題があります。
時間を浪費したなら、本来ならその時間で本業で稼ぐことができるはずですから、時間を浪費した分だけ本業がストップし、機会損失が発生します。
このため自分で調べる必要があるのは、実はお金がない人ではなく、お金が潤沢にあり、手元に余剰費用がある場合です。
商標のプロが、無料で、商標の調査を行います
仮にご自身でJ-PlatPat等の商標データべースを使って情報が得られても問題が残ります。
商標調査の最大の難関は、検索結果に表示された商標が、果たしてこちらの商標の登録の障害となるのかどうか、という判断面にあります。この判断については、専門家の判断に一度耳を傾けた方が安全です。
(3)台湾での商標調査について
商標権は、日本で商標登録されたものは日本国内のみで有効です。
このため外国で商標権を得るとすればその外国で商標を登録することが求められます。
また行政上、台湾と中国とは別に扱われますので、仮に日本と中国で商標権が手に入ったケースでも、台湾の商標登録なしでは、台湾で商標権者の立場は承認されず、逆に商標権侵害で訴えられる可能性があります。
こういった事情から、台湾で商標を使うなら、先の台湾の商標調査を検討します。
調査の方法
商標に関し台湾のデータベースを用い、台湾で先に登録された商標を検索し、既に登録されているかを確認できます。
新たな商標出願をする際には、先行して商標調査を行い、審査通過へ妨げとなる登録商標があるか検討します。
台湾の商標調査に関しては、台湾特許庁商標局のデータベースが使われます。台湾の商標データベースはインターネットにより無料で使えます。
図8 台湾特許庁商標局データベースの画面
この画面の左上の丸字で囲った部分をクリックします。
図9 商標の入力
圖樣中文の欄に「東京」と入力して検索ボタンを押します。
図10 商標の入力
検索結果がでます。ここでは21頁分の検索結果がヒットしました。これらを順次みていきます。
なお、日本語を入力して得られた結果と、繁体字を入力して得られた結果は通常は異なります。この理由から繁体字による検索も要求されます。
調査の重要性
先行して商標を調査すれば、登録率を向上させることができ、成功率が高まります。
未調査のまま台湾に商標出願をすると、審査を通過できないと、出願費用が無駄になってしまいます。
また審査過程で審査官への指令応答により費用が求められるケースがあります。
最近では流行の言葉は直ぐに商標登録されてしまう傾向にありますから、審査上、登録の妨げになる類似商標が増加します。
審査を無事に通過させる上で、商標の調査は先行して検討することをお奨めします。
(4)まとめ
商標調査は専門家の意見を聞くことが一番
先の類似群コードのケースであれあ、例えば、光学フィルムカメラの類似群コードは、デジタルカメラの類似群コードと異なります。
事前に知っていれば何ということもないのですが、知らなければ、指定商品役務の一覧表にある「カメラ」を選んだ時点でデジタルカメラもカバーできたと思うでしょう。
反対に、類似群コードが相違するケースでも、相互に類似する商品役務とされるケースもあります。
油断すると、大切な商標権から重要な部分がごっそり抜け落ちることも生じかねません。このため、商標調査の結果については専門家の意見を聞いておくに越したことはないです。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247