「甲府ブランド」の旗印となる商標・「甲府之証」

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甲府市が2013年度に創設した「甲府ブランド認定制度」は、地域の誇りを商標という形で可視化し、まちづくりに活かす画期的な取り組みとして注目を集めています。

その象徴となる商標「甲府之証」は、単なる品質保証マークを超えて、甲府という土地が育んできた文化や技術、そして人々の想いを伝える重要な役割を担っているのです。

1. 甲府の地が誇る逸品ぞろい「甲府ブランド認定制度」

テロワールから生まれた「甲府の良きモノ」

甲府ブランド認定制度の根底にあるのは、フランスのワイン文化で使われる「テロワール」という概念です。

これは単に土壌を指すだけでなく、その土地の気候、地形、歴史、そして受け継がれてきた技術など、すべての要素が織りなす独自の価値を表現する言葉として知られています。

甲府市はこの考え方を大胆に拡張し、地域の特産品や伝統技術を活用した商品すべてを「甲府のテロワール」として捉え直しました。

武田信玄の時代から続く歴史ある城下町として、また宝石加工や果樹栽培の盛んな地域として培われてきた技術や文化。これらすべてが「甲府らしさ」を形作る要素となり、認定商品一つひとつに込められているのです。

地域経済の活性化という実利的な目的だけでなく、「この商品は甲府のテロワールから生まれた良きモノである」という誇りを共有し、次世代に継承していく。そんな想いが、この制度には込められています。

甲府の魅力を広く伝える3つの部門

制度開始から2年後の2015年度、認定制度は進化を遂げました。「食品」「クラフト系」「農林産物」という3つの部門を設定することで、甲府の多様な魅力をより効果的に発信できる体制が整ったのです。

この部門制の導入により、伝統的な和菓子から革新的な工芸品まで、幅広いジャンルの商品が「甲府ブランド」として認定される道が開かれました。

また、各部門の特性に合わせて「甲府之証」のデザインも個別に作成され、それぞれの商品群が持つ独自の価値観を視覚的に表現することに成功しています。

2. ブランドとして認めた印 〜食品部門〜

甲府之証/KOFU NO AKASHI(商標登録 第5922882号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
出願番号/登録番号/国際登録番号:登録5922882(商願2016-060221)
商標(検索用):§甲府\KOFU NO AKASHI\之証
区分:30 32 33
出願人/権利者/名義人:甲府市
出願日/国際登録日(事後指定日):2016/05/23
登録日:2017/02/17

食品部門の「甲府之証」は、認定制度創設当初から使用されている歴史あるデザインです。印鑑を模したこのマークには、「甲府ブランドとして認め、印を押す」という明確なメッセージが込められています。

商標登録第5922882号として正式に保護されているこのデザインは、シンプルながらも権威性を感じさせる仕上がりとなっています。消費者にとっては一目で「これは甲府が認めた品質」であることが伝わる、優れたコミュニケーションツールとして機能しているのです。

3. 「宝石の街」・甲府にふさわしい華やかなデザイン 〜クラフト系部門〜

甲府之証/KOFU NO AKASHI/MADE IN KOFU(商標登録 第5937779号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
出願番号/登録番号/国際登録番号:登録5937779(商願2016-060293)
商標(検索用):§甲府\KOFU NO AKASHI\之証∞MADE IN KOFU∞N∞S
区分:14 21
出願人/権利者/名義人:甲府市
出願日/国際登録日(事後指定日):2016/05/23
登録日:2017/04/07

クラフト系部門の「甲府之証」には、羽ばたくカワセミが描かれています。1984年に甲府市の鳥に指定されたカワセミは、その翡翠のような美しい羽色から「飛ぶ宝石」と呼ばれ、古くから宝石加工で栄えてきた甲府のシンボルとして最適な選択といえるでしょう。

商標登録第5937779号として保護されているこのデザインには、単なる装飾以上の意味が込められています。製作者たちが伝えたい「甲府らしさ」を、カワセミの羽ばたきに乗せて世界へ発信する。そんな壮大な願いが、一羽の小さな鳥の姿に託されているのです。

宝石研磨の技術は、細部にまでこだわる職人の精神を育み、それが他の工芸品づくりにも活かされてきました。このデザインは、そうした甲府の工芸文化の奥深さを象徴的に表現しているといえるでしょう。

4. 生産者と消費者を結ぶ象徴 〜農林産物部門〜

甲府之証/KOFU NO AKASHI/MADE IN KOFU(商標登録 第5922883号)


特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
出願番号/登録番号/国際登録番号:登録5922883(商願2016-060222)
商標(検索用):甲府\KOFU NO AKASHI\之証∞MADE IN KOFU
区分:29 31
出願人/権利者/名義人:甲府市
出願日/国際登録日(事後指定日):2016/05/23
登録日:2017/02/17

農林産物部門は、他の部門とは異なる独自の展開を見せています。商標登録第5922883号として保護されているデザインには、リボンのモチーフが採用され、生産者と消費者を結びつけるという重要な意味が込められています。

さらに注目すべきは、この部門が5つのカテゴリーに細分化されている点です。「特選」は甲府市の誇る至高の逸品を、「巧」は熟練の技が光る品を、「伝承」は甲府にしかない、または伝承的な農林産物を、「特産」は産地化され市場評価の高い農林産物を、そして「振興」は直接地域振興につながる農林産物をそれぞれ認定しています。

各カテゴリーの「甲府之証」では、リボン部分の「MADE IN KOFU」の下にそれぞれのカテゴリー名が加えられ、商品の特性が一目で分かる工夫がなされています。これは消費者にとって選択の指針となるだけでなく、生産者にとっても自身の商品の位置づけを明確にする効果があります。

5. 「甲府ブランド」に認定されているものとは?

実際に認定されている商品は実に多彩です。食品部門では、甲州ワインを使った洋菓子や、地元産の果物を活かしたジャム、伝統的な和菓子などが名を連ねています。クラフト系部門では、宝石加工の技術を活かしたアクセサリーはもちろん、印伝などの伝統工芸品も含まれています。農林産物部門では、ぶどうや桃といった果物から、地元で栽培される野菜まで、甲府の豊かな自然が育んだ産品が認定を受けています。

これらの商品に共通するのは、単に甲府で作られているというだけでなく、甲府の歴史や文化、技術と深く結びついているという点です。それぞれの商品には、作り手の想いと地域の誇りが込められており、「甲府之証」はその証明として機能しているのです。

甲府ブランド認定品 一覧

部門 カテゴリー(農林産物部門) 認定番号 認定品名 認定事業者・個人 認定日 現状ステータス
食品部門第1号きみひめ大福平成25年6月27日認定中
食品部門第2号shunkaロール平成26年3月12日認定中
食品部門第3号甲州地どり各種平成26年3月12日認定中
食品部門第4号葡萄屋kofuレーズンサンド株式会社FT山梨平成27年5月14日認定中
食品部門第5号清酒「純米大吟醸 帯那(おびな)」平成28年3月28日認定中
食品部門第6号甲州金まんじゅう平成29年1月25日認定中
食品部門第7号甲府ぶどうの葉カステラ平成29年8月8日認定中
食品部門第8号甲府Sparkling 甲州平成30年3月3日認定終了(令和5年3月31日)
食品部門第9号甲府Sparkling マスカット・ベーリーA,アリカント平成30年12月27日認定終了(令和6年3月31日)
食品部門第10号奇跡のサフラン ほうじ茶・玄米茶・紅茶・緑茶・和漢茶・感想サフラン平成30年12月27日認定中
食品部門第11号天使のカッサータ令和元年12月24日認定中
食品部門第12号山の都 甲府令和3年8月12日認定中
食品部門第13号里吉甲州ワイン令和3年8月12日認定中
食品部門第14号甲府ロゼスパークリング令和3年12月9日認定終了(令和6年3月31日)
食品部門第15号きみひめアイス令和3年12月9日認定中
食品部門第16号甲府盆地カレー令和4年6月13日認定中
食品部門第17号富岡葡萄農園「濃厚葡萄液」令和4年6月13日認定中
食品部門第18号オビナビール令和4年12月14日認定中
食品部門第19号甲州黄金色令和4年12月14日認定中
食品部門第20号甲府甲州令和6年2月14日認定中
食品部門第21号甲府スパークリングロゼパッション令和6年2月14日認定中
食品部門第22号昇仙峡はちみつファーム 百花生はちみつ・はちみつ紅梅富士興業株式会社令和7年1月27日認定予定
食品部門第23号アルガベリーファーム 干しぶどう・ぶどうジュース・ぶどうジャムアルガベリーファーム令和7年1月27日認定予定
クラフト系部門認定1号TO LABO×1DK(トゥーラボ ワンディケィ)シリーズ平成27年10月27日認定中
クラフト系部門認定2号SHIELD STAR PENDANT (シールドスターペンダント)平成30年1月15日認定中
農林産物部門特選第1号ぶどう(シャインマスカット)山梨みらい農業協同組合平成28年6月17日認定中
農林産物部門特選第2号もも(なつっこ)(一社)中道農産物加工直売組合平成29年8月4日認定中
農林産物部門特選第3号すもも(木成り甘熟大石早生)笛吹農業協同組合中道支所令和元年6月21日認定中
農林産物部門第1号もも(なつっこ)柿嶋美保子平成29年8月4日認定中
農林産物部門第2号ぶどう(シャインマスカット)河野功平成29年9月8日認定中
農林産物部門伝承第1号くいしき味噌農事組合法人上九ふれあいの里平成28年2月19日認定中
農林産物部門特産第1号甲州地どり農事組合法人甲州地どり生産組合平成28年2月19日認定中
農林産物部門特産第2号甲州信玄豚オオタ総合食品株式会社平成28年2月19日認定中
農林産物部門特産第3号ちぢみほうれんそう(一社)中道農産物加工直売組合平成28年2月19日認定中
農林産物部門特産第4号スイートコーン(ミルフィーユ)山梨みらい農業協同組合平成28年6月7日認定中
農林産物部門特産第6号スイートコーン(きみひめ)(一社)中道農産物加工直売組合等平成28年6月7日認定中
農林産物部門特産第7号なす(千両二号)山梨みらい農業協同組合平成30年8月22日認定中
農林産物部門特産第8号甲州乳酸菌豚クリスタルポーク株式会社大森畜産令和2年12月16日認定中
農林産物部門特産第9号スイートコーン(ドルチェドリーム)山梨みらい農業協同組合令和3年7月5日認定中

6. まとめ

商標登録によって法的に保護された「甲府之証」は、第三者による不正使用を防ぎ、ブランドの信頼性を担保する重要な役割を果たしています。初めて甲府を訪れる観光客も、この「証」を目印に安心して商品を選ぶことができるのです。

豊かな自然と歴史の奥深さにふれられる街・甲府。週末にふらりと訪れ、散策と温泉を満喫しながら、「甲府之証」の付いた商品を手に取ってみる。そんな体験を通じて、訪れる人々は甲府という土地の魅力を五感で感じ取ることができるでしょう。

「甲府ブランド」は今後、価値向上を通じて、市のイメージアップや観光客増加への貢献が期待されています。地域の発展を目指す住民たちの取り組みにおいて、商標はまさにその旗印となり、成功への後押しをしてくれる存在なのです。

甲府之証という小さなマークに込められた大きな想いが、地域の未来を切り開く原動力となっていくことでしょう。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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