索 引
夏の風物詩であるかき氷には、店舗名、商品名、ロゴなど、商標として使われる名前が数多くあります。同じ「かき氷」に関する名称でも、店舗で提供するサービスと、アイスバーなどの商品とでは、商標登録で指定する範囲が同じとは限りません。
かき氷の歴史と実際の登録例をたどりながら、飲食店や食品ブランドが確認しておきたい商標の考え方を見ていきます。
1. かき氷は平安時代から続く夏の味
清少納言の「枕草子」には、「削り氷にあまづら入れて、新しき金まりに入れたる」という記述があります。甘葛を煎じた甘味料を削った氷にかける食べ方で、かき氷の古い記録として知られています。
冷蔵技術がなかった時代、冬に採った天然氷を氷室で夏まで保存できる量は限られ、かき氷は宮中の貴族など一部の人だけが味わえるものでした。江戸時代末期には輸入氷の利用が始まり、明治時代に製氷技術が広がると、庶民にも身近な食べ物になっていきます。
現在では、天然氷、果物の蜜、エスプーマなど、店ごとの素材や削り方が個性になります。その個性を客が識別する手掛かりが店舗名や商品名であり、商標登録を検討する意味もここにあります。
店の評価は、名前だけで生まれるものではありません。氷の口どけ、蜜の味、器への盛り付け、接客といった体験が積み重なり、客は店名を見てその体験を思い出します。商標は、その名前と営業上の信用を他店の表示から区別する目印になります。
2. かき氷店の名称と商標登録
かき氷店の名前には、飲食物の提供を指定した登録や、かき氷などの商品も含めた登録が見られます。以下は記事作成時に確認した例です。出願や権利の状況は変わることがあるため、調査や出願の際にはJ-PlatPatで最新情報を確認します。
東京・谷中「ひみつ堂」
「ひみつ堂」は第30類と第43類を含む登録です。店舗でかき氷を提供する場面と、食品を商品として扱う場面を分けて検討していることが読み取れます。
奈良「ほうせき箱」
「ほうせき箱」には文字の登録例があり、図形や文字を組み合わせた標章についても出願例が掲載されています。文字とロゴは構成が異なるため、実際に使う表示を基準に出願方法を検討します。
鹿児島「天文館むじゃき」
鹿児島名物「白熊」の店として知られる「天文館むじゃき」にも登録例があります。古い登録では、現在の国際分類と区分番号の見え方が異なる場合があるため、番号だけで現在の出願区分を判断しないことがポイントです。
大阪「がるる氷」
「がるる氷」は文字と図形を組み合わせた標章で、第30類と第43類を含む登録例です。店舗の看板、メニュー、包装など、どの表示を継続して使うかが出願する商標を選ぶ手掛かりになります。
3. かき氷バーの商品名と商標登録
店内で提供するかき氷とは別に、持ち帰り用の氷菓やアイスバーには商品名の商標があります。商品として流通させる場合、飲食物の提供だけでなく、食品の指定も確認します。
「しろくま」バー
読み方が同じでも、文字の表記や登録された時期、指定商品は登録ごとに確認します。地域で親しまれている呼び名であっても、特定の商品について登録商標が存在することがあります。
「ガリガリ君」
「ガリガリ君」には文字の登録例に加え、図形や文字を組み合わせた登録例があります。後者の区分表示からは、食品以外の商品展開も視野に入れた出願があることが分かります。ただし、「…」は区分の省略表示なので、具体的な権利範囲は登録原簿で確かめます。
4. 飲食店と商品では登録する範囲が異なる
かき氷店が商標登録を考えるときは、店で飲食物を提供するサービス、包装して販売するかき氷や氷菓、シロップなど、実際の事業を分けて確認します。店舗名を登録しただけで、同じ名前を付けた全商品が自動的に保護されるわけではありません。
反対に、氷菓の商品名について登録があっても、それだけで飲食店サービスの名称まで常に同じ範囲になるとは限りません。商標の類否だけでなく、商品・サービスの類否も個別に判断されます。
店頭販売、通信販売、催事出店、ライセンス商品など、名称を使う場面を出願前に書き出しておくと、指定漏れを見つけやすくなります。登録例を参考にするときも、区分番号だけでなく、具体的な指定商品・指定役務まで確認します。
5. 文字商標とロゴ商標をどう選ぶか
店名や商品名を標準的な文字で広く使うなら、文字商標の出願が候補になります。特徴的な書体、図形、キャラクターとの組み合わせを看板や包装で継続して使うなら、実際のロゴを商標として出願する意味があります。
ただし、文字商標とロゴ商標を両方登録すれば、似たキャラクターをすべて排除できるという単純な関係ではありません。商標の類否は外観、称呼、観念などを総合して判断され、権利の効力は指定商品・指定役務との関係でも決まります。
また、商標登録は行政上の品質保証ではありません。登録の役割は、商品やサービスの出所を示す商標について、登録された範囲の権利を確保することです。品質への信頼は、事業者が商品とサービスを通じて積み重ねていくものです。
6. かき氷の商標登録に関するよくある質問
Q1: かき氷店の店名は何類で出願しますか?
A1: 店内でかき氷を提供するサービスと、包装した氷菓などを商品として販売する場合では、検討する区分が異なります。事業内容を分けて指定商品・指定役務を選びます。
Q2: 店名を登録すれば、同じ名前のシロップやグッズも守れますか?
A2: 店舗サービスの登録だけで、食品やグッズが当然にすべて含まれるわけではありません。実際に販売する商品ごとに登録範囲を確認します。
Q3: 文字とロゴのどちらを先に出願すればよいですか?
A3: 名称を複数の書体で使うのか、特定のロゴを中心に使うのかで優先順位が変わります。予算と使用実態を基に決めます。
Q4: 地域で昔から使われるかき氷の名称なら自由に使えますか?
A4: 地域で知られた呼び名であっても、特定の商品・サービスについて登録商標が存在する場合があります。使用前に先行商標と指定範囲を調べます。
Q5: 掲載されている登録番号だけ確認すれば十分ですか?
A5: 登録後に存続期間満了、更新、名義変更などが起こるため、過去の記事だけでは足りません。J-PlatPatで最新の経過情報と具体的な指定商品・指定役務を確認します。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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