1. はじめに
事業を始めた後に商標登録を検討した場合、既に商品や営業表示に使用している商標が実は使えない、ということが分かる場合があります。このような状況に直面すると、後から全てを作り直す必要もでてきます。
今回は、商標登録の基本を確認したうえで、商標登録を行う時期の考え方を見ていきます。
2. 商標登録の基礎知識
商標登録とは、自社が独自に作成した商品名やロゴ、キャッチフレーズなどを、他の事業体や個人が無断で使用しないように保護するための手続きです。商標を守ることで、自社のブランド価値を保ち、事業の競争力を維持できます。
商標登録の申請は、特許庁に対して行います。提出書類に必要な項目を記載し、商標のデザインや商標を使用する商品やサービスの範囲を明記します。事前に同じまたは類似の商標がすでに登録されていないかの確認も欠かせません。
この申請には特許庁に対して手数料がかかり、基本的な商標登録申請料は12000円となっています(2023年7月現在)。ただしこれは最低の区分の申請に要する手数料で、申請する商品やサービスの数や種類により、この費用は変動します。また審査に合格して実際に登録する時点で、特許庁に対して一つの区分について10年分の登録で32900円がかかります。
商標登録は、事業を始める前に済ませておきたい手続きです。ブランドの土台を固め、安心して事業を展開するための備えになります。
3. よく相談を受ける事例
商標登録の大切さを実感していただくために、想定事例として飲食店チェーンの場合を取り上げます。
その店舗は、オリジナリティ溢れる店名とロゴで知られ、口コミで急速にその名が広まりました。しかし、その成功を見た他の企業が、同じ店名とロゴを使ってビジネスを始めたのです。
この後発企業は先に商標登録を行い、事実上、オリジナルの店舗を使っていた先行企業に対して名前とロゴを使用することを禁止しました。オリジナルの店舗は、裁判で勝つために多額の弁護士費用を支払うか、または新たな店名とロゴを作り、これまで築き上げてきたブランドを捨てるかを強いられました。
小説か映画の世界の話のように聞こえると思いますが、このような事例が実際に生じています。
このような事態は、早い段階で商標登録を行っていれば防げたかもしれません。商標登録が守っているのは名前やロゴだけではなく、築き上げてきた企業の価値そのものだと分かる事例です。
4. 商標登録に向けた準備
商標登録を行う前に準備するべき事項を具体的に見ていきましょう。
商標を選ぶ際に何より大切なのは、オリジナリティです。ありふれた名前では他社の商標の中に埋もれてしまいます。
独自性のある商標は、自社の商品やサービスを特徴づけ、他の企業との区別にも役立ちます。また、商標は短く、覚えやすく、目に留まりやすいものが良いとされています。
続いて、選んだ商標が他の企業の商標と重複していないかを、特許庁の商標データベースで確認します。申請後に思わぬ問題に直面するリスクを減らせます。
また、申請書類の準備も欠かせません。商標のロゴやデザインのデータ、商標を使用する商品やサービスのリスト、申請者の情報(氏名や住所、連絡先)などをそろえます。
こうした準備が整っていれば、商標登録の申請は滞りなく進められます。
5. 商標登録は事業を始める前に
事業を始めるなら、商標登録は先に済ませておくのが安全です。
商標登録は、ビジネスの成功に向けた大事なステップです。ところが、商標登録の意義や手続きをよく知らないまま事業を始めてしまう方が後を絶ちません。これは大きなリスクを伴います。
なぜなら、他社がこちらの考えていたブランド名を先に登録してしまった場合、その名前の使用が制限されてしまうからです。これはまるで、他人の土地で作物を育てているようなもの。収穫の時期になったところで、土地の所有者に出て行けと言われてしまう可能性があるのです。
他社から自社の商標を使うな、と言われてはじめて、商標登録の重要性を痛感することになります。しかし、それでは遅すぎます。あなたが築き上げたブランドは他人のものになってしまいます。
商標登録はビジネスを開始する前に行うべきです。
初期段階ではブランド名を変更するのも容易ですが、ビジネスが大きくなると、それが困難になります。早いうちに商標登録を済ませ、あなたのビジネスとブランドを保護するのが大切です。
6. 事業にあたっての商標登録のよくある質問
「商標登録は事業を始める前に」についてのよくある質問とその回答を紹介します。
Q1. 商標登録は本当に必要ですか?
A1: はい、必要です。商標登録は、自社のブランド名やロゴが他社によって使われることを防ぎ、ブランドの価値を保護するための重要な手段です。登録しないと、自社のブランド名やロゴを他社が無断で使用し、あなたの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
Q2. 商標登録はどのように行えばいいのですか?
A2: 商標登録は、特許庁に申請を行うことで実施できます。まずはオリジナリティのある商標を決め、その商標が他の企業と重複していないことを特許庁の商標データベースで確認します。その後、必要な書類を準備し、特許庁に申請を行います。
Q3. 商標登録にかかる費用はどのくらいですか?
A3: 商標登録にかかる費用は、申請の内容や商標の種類により異なります。申請費用の他に、商標調査費や弁理士に依頼する場合の費用などが発生することもあります。
Q4. 一度商標登録をすれば永遠にその商標を使えるのですか?
A4: 商標登録は10年間有効で、その後も更新手続きを行えば引き続き使用できます。ただし、登録後3年間使用されない商標は、他の人からの取消請求を受ける可能性があります。
Q5. 商標登録した後にブランド名を変更したいと思ったらどうすればいいのですか?
A5: ブランド名を変更する場合は、新たな名前で再度商標登録を行う必要があります。なお、一度登録した商標名は変更できませんのでご注意ください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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