1. はじめに
商標登録は、いわば早い者勝ちの世界です。同じ商標を使いたい人が複数いても、権利を得られるのは、原則として最初に特許庁へ願書を提出した一人だけです。そのため、出願のタイミングが結果を大きく左右します。
「もう少し準備が整ってから」「売上が伸びてから」と先延ばしにしているあいだに、他社に先を越されてしまうことは珍しくありません。ここでは、商標登録の根っこにある先願主義の考え方から、審査にかかる時間、早期審査の仕組み、そして早く出願しておくことの利点までを、弁理士の視点でご説明します。
2. 商標は「先に出願した人」が勝つ
商標登録には「先願主義」という原則があります。文字どおり、最初に出願した人が権利を得られる仕組みで、日常でいう早い者勝ちと同じ考え方です。
なぜ先願主義なのか
商標は、ブランドや商品を見分けるための目印です。もし同じ商標に複数の権利が認められてしまうと、消費者はどれが誰のものか分からなくなり、混乱が生じます。こうした混乱を防ぐために、最初に特許庁へ出願した人にだけ権利を与えることにしているのです。
出願のタイミングが結果を分ける
同じ商標を登録したいと思っても、自分より一足早く他社や他の人が出願していれば、その商標権を得るのは難しくなります。逆に、早めに出願して先願の地位を確保しておけば、あとから出された同じ商標の出願は拒絶されます。先に動いたかどうかが、そのまま結果に直結します。
3. 審査にかかる時間
なぜ時間がかかるのか
商標の出願は、いまや年間10万件を超えています。そのため、特許庁の審査にはどうしても時間がかかります。ただし、自分の出願の審査に時間がかかるのは、審査官がその案件にだけ特別に時間をかけているからではありません。たいていは、自分より先に出された案件の審査がまだ終わっていないためです。出願は、提出した順番に審査が進んでいきます。
結果が出るまでの目安
出願してから最初の審査結果が出るまでには、おおむね半年から1年ほどかかるといわれています。これはあくまで目安で、審査の内容や特許庁の混み具合によって前後します。いずれにしても、それなりの時間がかかることを見込んで、早めに動いておくのが安心です。
4. 早く審査してもらう「早期審査」
審査には時間がかかりますが、一定の条件を満たせば、早く審査してもらえる「早期審査」という制度があります。
発売予定だけでは認められない
「来月、商品を発売するから早く審査してほしい」という要望は、だれもが抱きがちなものです。けれども、特許庁はすべての出願人に公平に対応する必要があるため、自分の都合だけを理由に優先してもらうことはできません。
早期審査の要件
早期審査を受けるには、定められた要件を満たす必要があります。たとえば、出願した商標をすでに使っている、または近く使う予定があり、なおかつ早く権利化する必要がある事情があること、たとえば第三者に無断で使われていることなどです。単に急いでいるというだけでは足りず、それを裏づける事情と資料が要ります。
準備と専門家の活用
早期審査を申し出るには、事前の調査や、要件を満たすことを示す書類の準備が欠かせません。どの事情が要件に当てはまるのか、どんな資料を整えればよいのかは判断が難しいため、弁理士に相談しながら進めると、手続きが滞りなく進みます。
5. 先に出願しておく利点
最初に出願して先願の地位を得ておくことには、いくつもの利点があります。
ブランドを安定して守れる
先に出願しておけば、自分の商標が登録されたあとに出された、同じような商標の出願は拒絶されます。模倣されるリスクが下がり、ブランドのイメージや信頼を守りながら、落ち着いて事業を続けられます。
トラブルになったときに有利
商標をめぐる争いが起きたとき、先に出願していたという事実は大きな強みになります。出願日は特許庁の記録に残るため、いつ出願したかを客観的に証明できます。誰が先に出願したかがはっきりしていれば、権利関係の主張もしやすくなります。
市場で優位に立てる
自分の商標を早く登録しておくことで、市場での存在感や認知度を高めやすくなります。消費者からの信頼も得やすくなり、結果として事業の成長につながっていきます。
6. よくある質問
Q1. 先に使っていれば、出願が後でも権利を得られますか?
日本では先願主義をとっているため、原則として、先に使っていたかどうかではなく、先に出願したかどうかで決まります。長く使ってきた商標でも、他社に先に出願されると不利になることがあります。使っているなら、早めの出願をおすすめします。
Q2. 審査を早めてもらうことはできますか?
一定の要件を満たせば、早期審査を申し出ることができます。ただし、発売予定があるというだけでは足りず、すでに使っている、または使う予定があり、早く権利化したい事情などが要ります。要件に当てはまるかは弁理士にご相談ください。
Q3. 出願から登録まで、どのくらいかかりますか?
最初の審査結果が出るまでに、おおむね半年から1年が目安です。その後の手続きを含めると、さらに時間がかかることもあります。事業のスケジュールに間に合わせたいなら、余裕をもって出願しておくことが大切です。
Q4. 出願の前にしておくべきことはありますか?
同じか似た商標がすでに出願・登録されていないかを調べておくことです。J-PlatPatで検索できますが、似ているかどうかの判断には専門的な視点が要ります。出願前に弁理士の確認を受けておくと安心です。
7. おわりに
商標登録で何より大切なのは、先手を打つことです。速やかに出願して先願の地位を確保しておけば、競合との差をつけ、安心して事業を進められます。
「いつか」と思っているうちに他社に先を越されてしまっては、これまで育ててきた名前を手放すことにもなりかねません。商標の出願をお考えなら、独力で迷う前に専門家へご相談ください。当事務所では、実務10年以上の現役ベテラン弁理士が、商標の調査から出願・管理まで一貫してお手伝いしています。お気軽にお問い合わせください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
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