商標登録を検討する際、多くの方がどの商標を、どのような範囲で登録すべきか迷われると思います。
商標権により得られるのは、登録された商標を独占的に使用する権利です。ただし、その権利範囲は登録した商品やサービスに原則限定されます。
登録した指定商品・指定役務と類似する範囲にまで権利の射程範囲に入りますが、登録の際に指定した商品役務と関係の範囲にまでは商標権の効力は届かなくなります。
そのため、登録範囲外の商品やサービスについては保護されません。
他者による自商標の使用を完全に防ぎたい場合は、広範な商品やサービスを指定する必要がありますが、これは特許庁への印紙代などの費用が膨大になる可能性があります。
さらに、日本国内で3年間使用されていない登録商標は、他社からの請求により取り消しの対象となることもあります。
他人に使われては困るから、との理由で、実際に使うこともない商品役務を広げて指定すると、費用がかさむことがあります。
商標権を単に他者の使用を防ぐためではなく、自身が使用する目的で取得することが重要です。
商標登録は、使用を開始した者ではなく、登録手続きを先に行った者に権利が与えられます。出願の遅れは、意図していた商標を他者に取られるリスクを高めます。
この点を気にしだすと、ありとあらゆる範囲の権利を取りたくなりますが、それでは資金がいくらあっても足りなくなります。
例えば、商標法に定める商品役務を一つの出願で全部カバーしようとすると、特許庁に支払う印紙代だけでも総額200万円を超えます。
自身が使用する商標の権利を確保するのが本来の姿で、他者に使用を許さないために登録するのは、本末転倒です。
まずは、自身が使用する商品やサービスに対して、他者より先に必要十分な範囲で商標権を確保することが肝心です。事業の成長に合わせて、必要に応じて保護範囲を拡大するのが賢明な戦略と言えます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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