(1)金魚の歴史について
金魚の歴史は古く、3世紀頃、晋の時代に中国南部でヒブナが発見されたことが始まりといわれています。
ヒブナはフナの突然変異であり、珍しい赤色をもつことから飼育され始めました。
これが現在の金魚のルーツとなっています。
日本には、室町時代に中国から大阪に渡ってきたといわれており、当時は、貴族や大名など裕福な人々によって愛玩されていました。
江戸時代に入っても、初期の頃はやはり一部の大名などの贅沢な趣味でした。
やがて17世紀中期に江戸で金魚の養殖が始まり、18世紀には『金魚養玩草(きんぎょそだてぐさ)』という、日本で最初の金魚飼育の手引き書が発行されます。
そして養殖の成功により価格が下がると、金魚は庶民の手が届くものになり、19世紀には大流行となりました。
この金魚の養殖は、収入の低い下級武士が副業として手がけていたともいわれています。
当時の浮世絵や着物の柄、俳諧の題材には金魚が取り上げられており、人々にとっていかに身近なものであったかがうかがえます。
また、当時は木桶や金魚玉と呼ばれるガラス製の器で飼っていたため、上からその美しい姿を鑑賞していました。水槽で飼い、横から眺めることの多い現代とは、また違った趣がありそうですね。
(2)幻想的な空間で金魚を愛でる「アートアクアリウム」
(2−1)「アートアクアリウム」とは?
そして現代では、金魚を水槽で飼うだけではなく、趣向を凝らした空間で鑑賞できる展覧会も行われています。
これは「アートアクアリウム」と呼ばれ、「水槽」や「水族館」を意味するアクアリウムに、アートやデザイン、エンターテインメントといった要素を融合させたものです。
アートアクアリウムアーティスト・木村英智氏によって、会場全体の構成や照明、音楽などがプロデュースされ、幻想的な空間がつくり上げられています。このような展覧会では、アート性はもちろん、適切な水質調査や生体管理も必要とされます。
さまざまなデザインを施された水槽で、多くの金魚が泳ぐ様子は圧巻です。
(2−2)多くの人が訪れる展覧会
この展覧会は、2007年に東京・六本木ヒルズで夏季限定で開催されていた「スカイアクアリウム」に始まり、金魚をメインとした「アートアクアリウム」は、2010年から開催されています。
「アートアクアリウム」は、東京、京都、名古屋、札幌など各地で行われてきました。毎年多くの人々の関心を集め、これまでに約730万人(2017年5月末)が足を運んでいます。
(2−3)金魚を鑑賞し、江戸の涼にふれる展覧会(東京・日本橋)
そして、この夏は「ECO EDO 日本橋 アートアクアリウム 2017 〜江戸・金魚の涼〜&ナイトアクアリウム」と銘打った展覧会が、東京・日本橋で開催されています。
これは、江戸時代には優雅に泳ぐ金魚の姿を鑑賞し、涼をとっていた文化を蘇らせることをテーマにしています。
また、会場は「龍宮城」をコンセプトにした装飾が施されており、非日常を感じられる空間で約8,000匹の観賞魚を愛でることができます。
展覧会は2017年7月7日(金)〜9月24日(日)にかけて、日本橋三井ホール(COREDO室町1)で行われており、詳細はこちらのURLで確認できます。
「アートアクアリウム2017」
http://artaquarium.jp/
(2−4)和の世界に浸る「アートアクアリウム城」(京都・二条城)
「アートアクアリウム」は東京での展示を終えた後、舞台を京都に移し、「大政奉還150周年記念アートアクアリウム城 〜京都・金魚の舞〜」が開催されます。
これは「アートアクアリウム」の展覧会のなかで最大級の規模となり、唯一の野外展示となります。
普段は入場できない夜の時間帯での鑑賞となるため、金魚や錦鯉の美しさはもちろん、元離宮二条城のもつ400年以上の歴史をいっそう強く感じられるかもしれません。
展示は、元離宮二条城のなかで一般非公開エリアである二の丸御殿中庭、台所前庭、台所において行われます。
2017年10月25日(水)〜12月11日(月)に開催予定であり、詳細は上記(2−3)のホームページで、順次確認できます。
「ART AQUARIUM/アートアクアリウム」(商標登録 第5640819号/第5860716号/第5873946号)
「ART AQUARIUM/アートアクアリウム」は、展覧会を主催する株式会社エイチアイディー・インターアクティカによって商標登録されています。
「ART AQUARIUM」(商標登録 第5640819号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
出願日:2012年8月31日
登録日:2014年1月10日
区分は以下の通りです。
- 第9類「録画済みビデオディスクおよびビデオテープ、インターネットを利用して受信しおよび保存することができる画像ファイル、電子出版物、デジタルフォトフレーム、携帯電話機によるダウンロードが可能な動画」など
- 第16類「印刷物、書画、写真、文房具類、紙類」など
- 第21類「観賞魚用水槽およびその附属品」
- 第41類「美術品の展示またはこれに関する情報の提供、映画・演芸・演劇または音楽の演奏の興行の企画または運営、興行の企画・運営または開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行およびスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く)、娯楽施設の提供」
「アートアクアリウム」(商標登録 第5860716号)
出願日:2014年8月20日
登録日:2016年6月24日
区分は、上記の「ART AQUARIUM」(商標登録 第5640819号)と同様です。
「アートアクアリウム」(商標登録 第5873946号)
出願日:2016年3月1日
登録日:2016年8月12日
区分は以下の通りです。
- 第28類「おもちゃ、人形、遊戯用器具、トランプ、遊園地用機械器具」など
(3)達人たちが腕を競う「全国金魚すくい選手権大会」
毎年、夏になると、全国各地でさまざまなお祭りが開催されています。
立ち並ぶ屋台のなかでも人気のある金魚すくいは、挑戦したことのある方も多いのではないでしょうか。
では、この金魚すくいを「競技」としてとらえ、参加者たちが競い合う全国大会があるのをご存知でしょうか?
(3−1)「全国金魚すくい選手権大会」とは?
奈良県大和郡山市は、愛知県弥富市、東京都江戸川区とともに金魚の三大産地の1つに数えられています。
ここでは、毎年8月に「全国金魚すくい選手権大会」が開催されます。
この大会では、1人1枚のポイを使って3分間で何匹とれるかを競い合います。
反則やすくった匹数については、講習を受けた「公式審判員」が判定するという、本格的なものです。
1995年に開催された第1回大会は696人が参加し、盛況のうちに幕を閉じました。その後、さらに参加者は増え、2016年に開催された第22回大会では1,932人となりました。
当日は大会のほかにも、野外ステージでのパフォーマンスや屋台の出店もあり、地域を盛り上げる一大イベントとなっています。
また、大和郡山市では、毎年大会を開催している8月第3日曜日(日曜日が5回ある場合は第4日曜日)を「金魚すくいの日」としています。
金魚と地域が深く結びつき、その振興に貢献していることがよくわかりますね。
「全国金魚すくい選手権大会」(商標登録 第5305784号)
「全国金魚すくい選手権大会」は、大和郡山市によって商標登録されています。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
出願日:2009年12月3日
登録日:2010年3月5日
区分は以下の通りです。
- 第41類「金魚すくい大会の企画・運営または開催」
(4)まとめ
冷房のなかった江戸時代に、水のなかを泳ぐ金魚の姿をみて涼しさを感じていたというのは、とても素敵な文化ですね。
いまでは、金魚は世界中で親しまれ、3世紀に突然変異で生まれたヒブナの子孫は、ワキンやリュウキン、デメキンやランチュウなど、さまざまな品種に分かれています。
その優雅に泳ぐ美しい姿をみながら、過ぎゆく夏を惜しんでみてはいかがでしょうか?
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247