索 引
1. はじめに
自社のウェブサイトに使っているドメイン名を、そのまま商標として登録できないだろうか。ビジネスをオンラインで展開していると、こう考える場面が出てきます。せっかく定着したサイトの名前を、他人に似た形で使われたくないという気持ちは自然なものです。
ただ、「ドメイン名を商標登録する」という言い方には、少し気をつけたいところがあります。実は、ドメイン名そのものに権利が与えられるわけではありません。ここでは、ドメイン名と商標の関係を整理したうえで、どこまでが登録の対象になるのか、登録するとどんな保護が得られるのか、そして気をつけたい点を具体的に説明します。
2. ドメイン名と商標は、そもそも別の仕組み
最初に押さえておきたいのが、ドメイン名と商標はまったく別の制度だということです。
ドメイン名は、インターネット上の住所にあたるものです。登録管理機関に申し込み、まだ誰も使っていなければ、原則として早い者勝ちで取得できます。審査のようなものはなく、お金を払って契約している間だけ使えます。
一方、商標は、商品やサービスの「出所」を示す目印です。特許庁の審査を通って登録されてはじめて、指定した商品やサービスの範囲で独占的に使える権利になります。早い者勝ちのドメイン名とは違い、識別力があるか、先に似た登録がないかといった点をクリアしなければなりません。
つまり、ドメイン名を取得しただけでは、ブランドとしての法的な保護はほとんど得られません。逆に、商標登録があっても、それだけで特定のドメイン名が自動的に自分のものになるわけでもありません。この二つは役割が違うのだと理解しておくことが出発点になります。
3. 「ドメイン名そのもの」は商標登録できない
ここが一番のポイントです。結論からいうと、ドメイン名を文字列まるごと商標として登録することは、基本的にできません。
たとえば「example.com」というドメイン名を考えてみます。このうち「.com」や「www.」といった部分は、世界中のサイトが共通して使う記号にすぎず、商品やサービスの出所を示す力(識別力)がありません。そのため、こうした部分を含めて文字列全体を商標にしようとしても、識別力がないとして拒絶されてしまいます。
では何が登録できるのかというと、ドメイン名の中心にある「ブランドを表す部分」です。先ほどの例でいえば「example」にあたる文字です。この部分が独自性のある造語やブランド名であれば、特定の商品やサービスを指定したうえで、文字商標として登録できる可能性があります。
逆に、その中心部分が「shoes(くつ)」や「tokyo-ramen」のように、商品の内容や産地をそのまま表しただけの言葉だと、識別力がないと判断されて登録は難しくなります。「ドメイン名を取れたのだから商標も取れるはず」とは限らない、ということです。
4. 商標登録で得られる保護
ドメイン名の中心となるブランド名を商標登録しておくと、オンラインでのトラブルに対して強い立場を取れるようになります。
- 同じブランド名を商品やサービスに無断で使う相手に対して、商標権をもとに使用の差し止めを求められる
- 自社ブランドに似た紛らわしい名称が使われたとき、出所の混同を理由に対応しやすくなる
- ブランドが事業として評価されるとき、登録商標という裏づけが信用や価値を高める
特に問題になりやすいのが、有名になったブランド名と同じ、あるいはよく似たドメインを第三者が先に取得してしまう「ドメインの横取り」です。商標登録があれば、こうした行為に対して、ドメイン名をめぐる紛争処理の手続きや不正競争防止法を使って取り戻しを求める際に、自分が正当な権利者だと示す有力な根拠になります。
5. 登録までの流れと、気をつけたいこと
ブランド名を商標登録する流れは、ドメイン名特有のものというより、商標一般の手続きと同じです。大まかには次のように進みます。
- 登録したいブランド名と、それを使う商品・サービスの範囲(区分)を決める
- 同じ・似た商標がすでに登録されていないかを調査する
- 出願書類を作成して特許庁に提出する
- 審査を経て、問題がなければ登録される
このとき、特に気をつけたい点がいくつかあります。
ひとつは、登録できるのは「実際に事業で使う商品・サービス」についてだという点です。サイトを運営しているからといって、あらゆる分野で権利が取れるわけではありません。自社が本当に展開している(あるいは展開予定の)分野を、過不足なく指定することがポイントになります。
もうひとつは、登録した後も使い続ける必要があるという点です。商標は、継続して3年以上まったく使っていないと、第三者から不使用取消審判を起こされ、登録を取り消されることがあります。そのうえ、商標権には存続期間があり、放っておくと失効します。10年ごとの更新を忘れないようにしましょう。
6. 専門家に相談するメリット
ドメイン名にまつわる商標の相談は、「この文字列は登録できるのか」「どの区分で取るべきか」「似た登録がないか」といった、判断の難しいポイントが重なります。識別力の有無は微妙なケースが多く、自己判断で出願して拒絶されると、時間も費用も無駄になりかねません。
ファーイースト国際特許事務所では、実務経験10年以上のベテラン弁理士がお客さまを直接担当し、ドメイン名のどの部分をどの区分で登録すべきかを具体的にアドバイスします。オンラインのブランドを守りたい方は、まず無料相談・調査のお問い合わせからお気軽にご連絡ください。費用の目安は商標登録の費用ページでご確認いただけます。
7. よくある質問
Q1:取得したドメイン名は、そのまま商標として登録できますか?
「.com」や「co.jp」などの部分は識別力がないため、ドメイン名の文字列をまるごと登録することは基本的にできません。登録の対象になるのは、ドメインの中心にあるブランドを表す部分です。その部分に独自性があれば、商品・サービスを指定して文字商標として登録できる可能性があります。
Q2:ドメイン名を持っていれば、同じ名前の商標は他人に取られませんか?
いいえ。ドメイン名の取得と商標登録は別の制度です。ドメインを持っているだけでは、同じ名前を他人が商標出願するのを止められません。ブランドを守りたいなら、別途商標登録をしておくと安心です。
Q3:自社ブランドに似たドメインを第三者に取られてしまいました。取り戻せますか?
商標登録があれば、ドメイン名をめぐる紛争処理手続きや不正競争防止法をもとに、取り戻しや使用の中止を求めやすくなります。自分が正当な権利者であることを示す根拠として、商標登録は大きな意味を持ちます。
Q4:どんなドメイン名でも商標登録できないことがあるのですか?
中心部分が商品の内容や産地をそのまま表しただけの一般的な言葉だと、識別力がないとして登録できないことがあります。独自性のある造語やブランド名であるほど、登録は通りやすくなります。
Q5:商標登録した後に気をつけることはありますか?
登録した商標は、指定した商品・サービスで継続して使うことが欠かせません。3年以上使っていないと取消の対象になり、また10年ごとの更新を怠ると権利が失効します。取得して終わりではなく、使い続け、更新することがブランド維持のポイントになります。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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