中国「MINISO(名創優品)」商標は侵害?ユニクロ・無印・ダイソー連想問題を再検証

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2014年5月当時、フジテレビ『世界HOTジャーナル』から取材を受けました。「中国でユニクロ、無印良品、ダイソーを一つにまとめたような店が流行しているが、日本企業との関係で問題にならないのか」という内容でした。番組内で私は「結論から言うと微妙ですね」とコメントしました。

当時、話題の中心にあったのは、中国で「MINISO/名創優品(メイソウ)」として展開されていた正方形の赤地に白抜き文字のブランド商標です。ユニクロの赤と白の印象、無印良品のミニマルさ、ダイソーの均一価格といった要素が組み合わさり、視聴者にも取材側にも分かりやすい話題として注目されていました。

2026年のいま、私はあの「微妙」という結論自体はまだ捨てていません。ただし、微妙である理由が、2014年とは別物に変わりました。

本稿では、2014年当時の論点を土台にしつつ、MINISOがその後どう変わったのか、中国の知財環境がどう変わったのか、日本企業が何を学ぶべきかを、商標登録の実務家として、読者がすぐに活用できる形でアップデートします。

1. 2014年の現場感から振り返る

2014年当時の私のブログは、いま読み返しても骨格は変わりません。

ユニクロが赤い正方形に白抜きの文字表現を使っているとしても、「赤い正方形と白抜き文字」という表現形式そのものを、ユニクロが独占できるわけではありません。

「ユニクロ」という文字をそのまま使えば、商標権侵害や不正競争で争いやすくなります。

文字列が異なる場合にまで「赤四角に白抜き文字は全部ダメ」と広く押さえ込むのは、商標法の発想としても無理が出ます。

この「無理が出る」という感覚が、当時私が「裁判に持ち込んでも一刀両断というわけにはいかない」と述べた背景です。

当時の例として、日本国内では「ダイソー」と「メイソウ」が一定分野で共存している登録例があり、日本の特許庁が両者を別物として扱っていることも、私の判断材料の一つです。

見逃せないポイントは、商標権は原則として属地主義だということです。日本で商標登録していても、その効力が中国に自動で及ぶわけではありません。

中国で争うなら、中国での権利として出願、登録、使用実績、周知性の立証が必要になります。この基本は、いまも変わりません。

2. 法律より先に世論が結論を出す時代

2014年の時点で私は法的評価を中心に語りましたが、2026年のいま注意を促したいのはここです。

ブランド紛争は、裁判所より先に、世論とSNSが判決を出します。そして、その判決は、法的に正確かどうかとは別に、売上、出店、提携、採用、金融市場に直接影響を与えます。

MINISOはまさに、その現象の教科書になりました。

初期には「日本っぽい」ことが拡大の推進力になり、のちにそれが逆回転して批判の燃料になりました。この構図そのものが、2014年当時の日本側の直感、つまり「うまく微妙ラインを突いている」という見方を、別角度から裏付けています。

3. 2014年前後の日本語圏での語られ方

2014年前後の日本語圏では、MINISO(名創優品/メイソウ)はしばしば「ユニクロっぽいロゴ」「無印っぽい内装」「ダイソーっぽい価格帯」とセットで語られました。

当時の報道や観察としては、店舗看板やロゴの印象だけでなく、日本発を思わせる表示や演出が問題視されていました。「日本企業と関係があるのでは」と誤認する余地がある、と見られていた面があります。

この段階では、日本企業側が正面衝突で勝ち切るというより、むしろ中国側の出願状況(商標の先取り)、「日本製」「日本発」といった表示の真偽、店舗やパッケージの総合的な出所混同といった論点の積み上げが必要というのが実務的な読み筋でした。

4. 2015年以降の日本における新しいタイプの商標

2014年当時、「赤い正方形と白抜き文字」を商標で独占するのは難しいという感覚は依然として正しいです。ただし、2015年4月1日から日本では、色彩のみからなる商標など「新しいタイプの商標」が制度として認められるようになりました。

「色」や「位置」といった要素を、条件付きで権利化する環境自体は強まっています。

もっとも、特許庁自身が示す通り、色彩のみ商標は原則識別力なしとされやすく、登録には使用による識別性の立証が強く求められます。つまり「制度がある」と「簡単に取れる」は同じではありません。

ユニクロのような赤白の雰囲気を守るには、商標だけでなく、表示規制、不正競争、著作権、意匠、そして何より証拠設計を組み合わせる必要があります。2014年の「微妙」は、2015年以降むしろ「複数の武器を束ねる難しさ」という意味で、より現実味を増したともいえます。

5. 中国側の環境変化と悪意出願への歯止め

2014年当時、中国は「先願主義(first-to-file)」の激しさがしばしば強調され、外国企業にとっては「やられやすい市場」という印象が強かったです。しかし近年、中国の商標制度は、悪意の大量出願を抑制する方向で改正や運用が進んでいます。

2019年施行の中国商標法改正です。「使用意思のない悪意の出願は却下される」という趣旨が条文上も明確化されました。

この改正は「出願した者が強い」一辺倒だった世界観に、善意、使用、市場秩序というブレーキを足したものといえます。これで全て解決ではありません。ですが、2014年の頃よりも、悪意の権利行使に対して理屈を立てやすくなったのは事実です。

6. ユニクロ関連事例から読み取れる教訓

2014年の「赤い四角の話」と並ぶ、もう一つの重要論点があります。それは「似ている・似ていない」以前に、権利そのものが悪意で作られていないかという論点です。

ユニクロに関しては、いわゆるCompass/Zhongwei(関連会社2社)による多数の提訴が問題になった事例が、解説記事等で広く参照されています。この件では、最高人民法院が、横取り商標権車側の原告側の行動を権利濫用(悪意の権利行使)として退けたという実情が示されています。

ここから読み取れる実務的な教訓は明快です。中国では「先に出した者が強い」だけでなく、どういう目的で出したか、出した後にどう使っているかが、裁判所の評価対象になり得ます。ブランド側は「登録を奪われたら終わり」ではなく、悪意性、不使用、譲渡目的、大量出願といった事情を束ねて反撃する設計が可能になってきたということです。

7. 無印良品(MUJI)事例が示す厳しい現実

一方で、制度が整っても、先回り出願を怠ったツケは極めて重いです。その現実を突きつけるのが、無印良品(MUJI)を巡る中国での紛争です。

2019年、北京市高級人民法院の終審で、「无印良品」商標(第24類=繊維製品等)に関する侵害が認定され、差止めや声明掲載、賠償等が命じられた旨が、公的系サイトや中国主要メディアで報じられています。

2021年には、声明の出し方が争点化し、商業誹謗(商業上の名誉毀損)で本家本元の無印商品側に追加の賠償等を命じられたと報じられました。

近年の報道や解説では、最高人民法院が再審申立てを棄却し、当該商標の登録が維持された旨が伝えられています(行政ルートの話として紹介されることが多いです)。

この一連の流れは、当時の知的財産権を扱う社会の流れに沿うものです。

「似ているから勝てる」ではなく、「権利を押さえていないなら、そもそも戦いの土俵に立てない」ということです。そして中国では、とりわけ中国語名称(漢字表記)と主要類(カテゴリ)を押さえる重要性が可視化されました。

8. 2022年の炎上とMINISOの「脱日本化」宣言

2014年当時、私は主に「法的に微妙」と説明しました。ところが2022年、MINISOは法律ではなく、世論で大炎上します。

発端は、海外SNS投稿で旗袍(チャイナドレス)を「芸者」と誤表記した件などを契機に、批判が拡大したことでした。MINISOは、自社が日本風に寄せてきたことを認め、方針転換を示したとReutersなどが報じています。

日本語圏でも、同社が2019年から「脱日本化」を進め、2023年3月末までに店舗装飾や宣伝物から日本的要素を取り除く作業を完了させる計画を示したという形で報じられました。

この流れは、商標実務家として示唆的です。2014年の争点は「似ているか/侵害か」だったのに対し、2022年以降の争点は、自分は何者なのか(ブランドの出自)という、もっと根源的な信用問題に変わったからです。

9. 2023年以降のMINISOの戦略転換

炎上後、MINISOは日本風の店という物語を精算し、代わりにIP(キャラクター等のライセンス)と体験型店舗へと重心を移していきます。この変化は、好き嫌い以前に、ビジネスとして非常に合理的です。IPライセンスは「正規」の証明になりやすく、店舗体験は「雰囲気の模倣」から距離を取れるからです。

2025年11月、MINISOの体験型店舗コンセプト「MINISO LAND」がMAPIC Awardsで「Best New Store Concept」を受賞したと、同社発表や専門媒体が伝えています。

また、同社の2025年6月30日時点の店舗数について、MINISO側の発表(決算リリース)では、グループ総店舗7,905、MINISO店舗7,612(中国本土4,305、海外3,307)などの数値が示されています。

2014年の「謎の日本風チェーン」という語られ方からすると、隔世の感があります。

「似せて伸びた会社」が、世界規模で「体験」と「IP」を売る会社へ、看板を書き換えています。これが、2014年から2025年の最大の変化の一つです。

10. 日本法人の清算結了の動き

2014年当時の混乱には、「日本企業なの?違うの?」という関係の曖昧さがありました。しかし2020年代に入ると、少なくとも日本側の法人については、かなりはっきりした動きが確認できます。

日本の法人情報(gBizINFO)では、「株式会社名創優品産業(閉鎖)」について、清算結了等により登記記録が閉鎖された日が2024年6月5日であることが示されています。

少なくとも日本国内で日本発の体裁を整える方向には進まず、結果として日本市場では足場を失った(あるいは撤収を選んだ)と読み取れます。これもまた、2014年の「日本っぽさで攻める」モデルが、永続戦略ではなかったことを示す材料です。

11. 2026年の現在における新たなリスク

ブランドが大きくなると、次に問題になるのは「似ているか」ではなく、どう運営されているか(ガバナンスと提携構造)です。

2025年には、MINISOが玩具ブランドTOP TOYのスピンオフ(香港上場を視野)を計画しているとReutersが報じました。別件として、MINISOが中国のスーパー大手・永輝(Yonghui)への出資を進める動きも報じられています。

直近(2026年1月12日)には、ニュージーランドでMINISOなどを運営する事業者が債務問題で清算手続に入ったとする報道も出ています。これはMINISO本体の倒産を意味するものではなく、運営会社やフランチャイズ等の構造リスクを伝えるニュースです。

2014年のロゴが似ている問題は、もはや入口に過ぎません。グローバル化したブランドに対して、社会が見るのは「信用の総合点」です。商標はその中核ですが、商標だけでは完結しない時代になりました。

12. 2014年の問いに2026年の答えを出す

ここからが、商標実務家としての再回答です。2014年の取材で問われたのは「日本のダイソー、ユニクロ、無印良品との関係で問題にならないのか」でした。2026年のいま、その問いは二層に分けて答えるのが正確です。

中国の模倣戦略は法律としてはどうなのか

まず第一層として、純粋な商標・不正競争の世界(法的に勝てるか)について説明します。

赤四角と白抜き文字のような「よくある抽象表現」は、それ単体では独占しにくいです。

ただし、文字や称呼、全体の印象、取引の実情、周知性、証拠の揃い方次第では、商標法や不正競争(中国なら反不正当競争法)で攻め筋は作れます。中国では近年、悪意出願の抑制(商標法の運用)も進む一方、MUJI事例が示す通り、先回り出願を落とすと致命傷になり得ます。

ここは今も「微妙」です。ただし「微妙」というのは「何もできない」ではありません。勝ち筋が「一点突破」ではなく「証拠、制度、類(区分)、言語(中国語名)」の総合戦になるという意味での微妙さです。

社会的責任が求められる風潮

次に第二層として、世論・炎上・プラットフォームの世界(勝っても損することがある)について説明します。

2022年のMINISO炎上が象徴するように、「日本風」に寄せることが、国や地域によっては逆に批判材料になり得ます。企業声明の出し方一つが商業誹謗として争点化し得ます(MUJIの2021年件)。そもそも「何者か」を誤認させる設計は、法のグレー以前に信頼を毀損します。法廷の外の戦場が巨大化しているのです。

2014年時点では主に法的な微妙さがありました。2026年の微妙さは、法に加えて、ブランドが社会にどう裁かれるかという不確実性まで含む、もっと立体的な微妙さです。

反不正当競争法というもう一つの武器

中国の反不正当競争法(Anti-Unfair Competition Law)にも触れておきます。中国でも、商標登録がすべてではありません。一定の場合、「一定の影響を有する商品名称、包装、装潢等」の無断使用(混同行為)が禁止される枠組みがあり、トレードドレス的な保護の根拠になり得ます。

ただ、ここも万能ではありません。「一定の影響」の立証、混同の立証、そして「どこまでを保護対象として切り出せるか」が勝負になります。日頃からの証拠設計(販売実績、広告、露出、受賞、模倣の比較資料、混同の実例)が効いてきます。

13. まとめ

2014年の私は、取材に対して「微妙」と答えました。2026年の私は、こう言い直します。

「微妙にされないように、最初から設計せよ。」

中国語名称を含めて、商標は事業開始前に押さえることが重要です。類(区分)は本業だけでなく、周辺と防衛も設計してください。模倣や誤認の証拠は、炎上してから集めるのでは遅いです。「日本風」は武器にもなりますが、政治と世論で一瞬で毒にもなります。そして、最大の敵は「似た店」より、静かに権利を奪う悪意出願かもしれません。

MINISOの12年は、単なる「パクリ騒動」ではありません。商標、不正競争、世論、グローバル展開が、一本の線でつながってしまう時代の実例です。

もしあなたがブランドを守る側なら、この話は「笑い話」で終わりません。もしあなたがブランドを作る側なら、この話は「やり方次第で世界を取れる」ことも示しています。

2014年の赤い四角から始まった問いは、いまや「ブランドの正体」と「知財ガバナンス」そのものを問うテーマに育ちました。あなたのブランドは、どこで、どの言語で、どの類で、誰に「本物」だと証明できますか?

※当時の「MINISOU/名創優品(メイソウ)」の問題についての私のコメントは平成26年5月3日(土)のフジテレビの世界HOTジャーナルで放送されました。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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