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商標出願と登録の10年トレンド(2014年〜2023年)|出願・審査・登録件数の推移と読み方

商標の出願や登録が年間どのくらい行われているのか、その数はどう動いてきたのか。特許庁が毎年公表する特許行政年次報告書には、こうした統計がまとめられています。

この記事では、特許行政年次報告書2024年版に掲載された2014年から2023年までの商標の出願件数、ファーストアクション件数、登録査定件数、登録件数を取り上げ、数字の動きと、その読み方をご紹介します。

1. この記事で扱うデータ

本記事で使う数字は、特許行政年次報告書2024年版の商標に関する統計(同報告書71ページ)に掲載された、2014年から2023年までの4つの指標です。

  • 出願件数:その年に特許庁へ提出された商標登録出願の件数
  • ファーストアクション件数:審査官が出願に対して最初の審査結果(登録査定または拒絶理由通知)を発した件数
  • 登録査定件数:審査の結果、登録できると判断された件数
  • 登録件数:登録料が納付され、設定登録された件数

出願から登録までには審査期間があるため、ある年の出願がその年のうちに登録されるとは限りません。4つの指標は同じ出願を別々の時点で数えたものなので、年ごとの数字が一致しないのは自然なことです。この点を押さえておくと、以下の推移が読みやすくなります。

2024年以降の数値は、その後に公表された年次報告書に掲載されています。最新の数字は特許庁のサイトで確認してください。

2. 出願件数の推移:2017年前後をピークとした山型

商標出願件数の10年間の推移を見ると、山型の曲線が浮かび上がります。2014年に約12万4千件だった出願件数は、2017年に約19万1千件と10年間で最も多くなり、2019年にもほぼ同じ約19万1千件を記録しました。

この時期の急増には、特許庁の印紙代を支払わないまま次々と出願を繰り返す、いわゆる横取り出願の影響が大きかったと当事務所は見ています。手続のちょっとしたミスを理由に直ちに出願が却下されないという出願人の保護措置が、逆手に取られた形です。

その後、こうした出願への対応が進み、2020年以降は年によって増減を挟みつつ減少傾向に転じ、2023年には約16万4千件となりました。2022年から2023年にかけては約6千件の減少です。

とはいえ、2023年の約16万4千件は、2014年の約12万4千件と比べれば3割以上多い水準です。ピークからは下がったものの、商標出願は2014年より活発な状態が続いていると読めます。

3. 登録件数の推移:出願の山より遅れて動く

登録件数は、出願件数とは違う曲線を描いています。2014年に約10万件だった登録件数は、2020年に約13万5千件、2021年に約17万4千件と増え、2022年には約18万4千件と10年間で最も多くなりました。

出願件数のピークが2017年と2019年であるのに対し、登録件数のピークは2022年です。出願された商標が審査を経て登録されるまでには時間がかかるため、出願の山は数年遅れて登録件数に現れます。

2023年の登録件数は約12万4千件で、前年から大きく減りました。この減少は、同じ年の登録査定件数(約12万6千件)の減少とほぼ対応しています。登録件数は登録査定を受けた出願のうち登録料が納付されたものを数えるため、審査処理の波がそのまま登録件数に現れた形です。

なお、横取り出願のように出願だけして登録手続まで進まない出願は、出願件数には含まれても登録件数には含まれません。出願件数と登録件数の差が年によって大きく変わる背景には、こうした出願の増減もあります。

4. ファーストアクションと登録査定:審査処理の波

ファーストアクションは、審査官が出願に対して最初の審査結果を通知した件数です。その年に特許庁がどれだけの出願を処理したかを示す指標といえます。

2014年に約12万2千件だったファーストアクション件数は、2020年に約17万3千件、2021年には約21万3千件と大きく増え、2022年も約20万9千件でした。2021年と2022年は、ファーストアクション件数がその年の出願件数を上回っています。出願の山で積み上がった審査待ちの出願が、この時期にまとめて処理されたことを示しています。

登録査定件数も同じ動きをしています。2014年の約10万6千件から2022年には約18万8千件へ増え、2023年には約12万6千件へ減りました。

2023年のファーストアクション件数は約14万2千件で、2022年より約6万6千件少なくなりました。処理すべき審査待ちの出願が減れば、ファーストアクション件数もそれに応じて減ります。2023年の減少は、出願件数の減少と、滞留していた出願の処理が一段落したことの両方を映していると考えられます。

5. 年度別まとめ(2014〜2023年)

年度:2023年
出願件数:164,061件
登録件数:124,334件
ファーストアクション件数:142,461件
登録査定件数:125,973件
年度:2022年
出願件数:170,275件
登録件数:183,804件
ファーストアクション件数:208,740件
登録査定件数:188,157件
年度:2021年
出願件数:184,631件
登録件数:174,098件
ファーストアクション件数:213,224件
登録査定件数:185,415件
年度出願件数ファーストアクション登録査定登録件数
2014124,442122,048105,63799,896
2015147,283111,831100,24498,085
2016161,859131,624113,025105,207
2017190,939126,407115,754111,180
2018184,483137,463119,610116,547
2019190,773134,834117,186109,859
2020181,072172,931146,708135,313
2021184,631213,224185,415174,098
2022170,275208,740188,157183,804
2023164,061142,461125,973124,334

【出典:特許行政年次報告書2024年版 71ページ】

6. 数字から読み取れること、読み取れないこと

上の表から読み取れるのは、出願の山が2017年から2019年にかけてあったこと、その処理が2020年から2022年に集中したこと、そして2023年には出願も審査処理も落ち着いたことです。

一方で、この表だけでは分からないこともあります。出願件数が減った理由が景気なのか、事業環境の変化なのか、特定の出願人の動向なのかは、件数の推移だけでは判断できません。審査にかかる期間も、この表には含まれていません。

年次報告書には、区分別の出願件数や、外国の出願人による出願の統計、審査期間に関する数値も掲載されています。自社の分野で出願が増えているのか、海外からの出願がどの程度あるのかを知りたい場合は、こうした統計をあわせて確認すると、自社の状況に合った見方ができます。

7. これからの商標戦略で意識したいこと

審査期間の変動を織り込んだ出願計画

ファーストアクション件数の推移が示すように、特許庁の審査処理量は年によって変わります。出願が集中した時期には審査待ちが積み上がり、登録までの期間も延びやすくなります。新商品やサービスの発表時期に合わせて商標権を確保したい場合は、特許庁が公表している審査期間の目安を確認したうえで、余裕を持って出願するのが安全です。

先願主義の下では出願の早さが決め手になる

商標は先に出願した人が優先される先願主義です(商標法8条)。年間16万件を超える出願がある中で、使いたい名前を他社が先に出願してしまう可能性は常にあります。名前が決まったら、使用開始を待たずに出願を検討してください。

権利範囲は狭く絞りすぎない

審査を早く通すために指定商品・指定役務を必要以上に狭く絞ると、後から隣の商品を取り直す際に、出願料と登録料を改めて負担することになります。同じ区分の中であれば、指定商品・指定役務を併記しても特許庁の料金は変わりません。事業で扱う商品と、その隣にある商品を出願時に含めておくことが、後の取り直しを防ぎます。

海外展開を見据えた権利取得

日本の商標権は日本国内でしか効力がありません。海外での販売や現地企業との取引を予定している場合は、進出先の国で先に同じ名前を出願されるリスクを考え、進出時期から逆算して各国での出願を検討する価値があります。

8. よくある質問

Q1. 2014年から2023年で商標出願件数が最も多かった年はいつですか?

2017年の190,939件です。2019年の190,773件がこれに続きます。

Q2. 登録件数が最も多かった年はいつですか?

2022年の183,804件です。出願のピークから数年遅れて登録件数のピークが来ています。

Q3. ファーストアクションとは何ですか?

審査官が出願に対して最初に発する審査結果の通知です。登録できる場合は登録査定、問題がある場合は拒絶理由通知として出願人に届きます。

Q4. 出願件数と登録件数が一致しないのはなぜですか?

出願から登録までに審査期間があり、同じ年に数えられないためです。また、拒絶された出願や、登録料を納付せずに終わった出願は登録件数に含まれません。

Q5. 最新の統計はどこで確認できますか?

特許庁のサイトで公表されている特許行政年次報告書で確認できます。各年版の統計・資料編に商標の出願・登録件数が掲載されています。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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