商標は、自社の商品やサービスを他社のものと区別するために使う目印です。商標法では、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、そして音などが商標になり得ると定めています。
ロゴや商品名のような従来からの商標に加えて、2015年からは動き、ホログラム、色彩のみ、音、位置という新しいタイプの商標も登録できるようになりました。この記事では、商標の種類ごとの特徴、出願から権利発生までの流れ、商標権の範囲をご紹介します。
1. 商標とは何か
商標法2条1項は、商標を「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」で、業として商品を生産・譲渡する者や役務を提供する者が、その商品・役務について使用するものと定めています。
商標の役割は、商品・役務の出所を示し、他者のものと区別することにあります。同じマークを継続して使うことで、需要者は「このマークならあの会社の商品」と認識できるようになります。商標登録は、このマークを指定した商品・役務について独占的に使用し、他者の無断使用を差し止めるための根拠になります。
登録していない名称やロゴも、使用すること自体は禁止されていません。ただし、先に他者が同じか似た商標を登録していれば、自分の使用が商標権侵害になる可能性があります。登録の有無は、使えるかどうかではなく、権利として守れるかどうかの違いです。
2. 以前から登録できる商標の種類
- 文字商標:商品名、サービス名、社名、標語などを文字で表したもの
- 図形商標:マーク、イラスト、キャラクターなどの図形
- 記号商標:文字を図案化した記号や、のれんに使う記号など
- 立体商標:商品や容器、店舗の看板などの立体的形状
- 結合商標:文字と図形、文字と記号など、複数の要素を組み合わせたもの
文字商標には、標準文字で出願する方法と、特定の書体やデザインで出願する方法があります。標準文字は文字そのものを保護する形で、ロゴのデザインは含みません。デザインされたロゴを使っている場合は、標準文字の商標とロゴの商標を分けて考える必要があります。
立体商標は、商品の形状そのものを保護できる一方で、形状は商品の機能や美感のために選ばれるものと見られやすく、識別力の審査(商標法3条)や、商品の機能を確保するために不可欠な形状の除外(4条1項18号)が問題になります。長年の使用によって形状が出所表示として認識されている場合には、3条2項の適用が検討されます。
3. 2015年から加わった新しいタイプの商標
2014年の商標法改正により、2015年4月1日から次の5つのタイプの商標が登録できるようになりました。
- 動き商標:文字や図形が時間の経過に伴って変化する商標。テレビCMや画面表示で動くロゴなど
- ホログラム商標:見る角度によって表示が変化する商標
- 色彩のみからなる商標:輪郭のない単色や、色の組合せだけで構成される商標
- 音商標:メロディや効果音など、聴覚で認識される商標。CMのサウンドロゴなど
- 位置商標:図形などを商品の特定の位置に付すことで構成される商標
これらの商標は、願書に「商標の詳細な説明」を記載し、タイプに応じて図面や音声ファイルなどを提出します。例えば音商標は、五線譜や音声ファイルで内容を特定します。色彩のみからなる商標は、色見本とともに色彩の名称や数値で特定します。
新しいタイプのうち、色彩のみからなる商標と音商標は、それ自体では出所表示と認識されにくいため、使用による識別力(3条2項)が問われることが多く、登録のハードルは文字商標や図形商標より高い傾向があります。出願前に、その色や音を長期間継続して使い、需要者に浸透しているかを示す資料を集められるかが検討点になります。
におい、味、触感の商標は、現在の日本の商標法では登録対象になっていません。出願しても、商標法上の商標に該当しないとして登録は認められません。
4. 出願から権利発生までの流れ
- 商標調査:同一・類似の先行商標や、識別力の有無を確認する
- 出願:商標、指定商品・指定役務、区分を記載した願書を特許庁へ提出する
- 審査:方式審査の後、審査官が登録要件を審査する。拒絶理由があれば通知され、意見書や補正書で対応する
- 登録査定と登録料納付:登録査定を受けた後、登録料を納付する
- 設定登録:登録料の納付を経て設定登録され、商標権が発生する。登録内容は商標公報に掲載される
登録の後、商標掲載公報の発行日から2か月間は、誰でも登録異議の申立てができます(商標法43条の2)。異議申立ては登録後の手続であり、登録前に異議を受け付ける期間はありません。
商標権の存続期間は設定登録の日から10年で、更新登録の申請により何度でも更新できます。出願から登録までの期間は案件によって異なるため、出願時に特許庁が公表している審査期間の目安を確認してください。
5. 商標権の範囲と登録の効果
商標権は、登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用できる範囲(専用権)と、類似する範囲での他者の使用を排除できる範囲(禁止権)で構成されます。マークだけを独占するのではなく、登録商標と指定商品・指定役務の組合せを基準に効力が定まります。
指定商品・指定役務は、第1類から第45類の区分に分けて記載します。区分は料金計算の単位であり、区分を指定すればその区分の商品すべてに権利が及ぶわけではありません。願書に記載した具体的な商品・役務が権利範囲の出発点になります。
商標権を取得すると、他者の侵害行為に対する差止請求(36条)や損害賠償請求ができ、登録商標である旨の表示もできます。なお、継続して3年以上使用していない指定商品・指定役務は不使用取消審判(50条)の対象になりますが、審判は商品・役務ごとに判断されるため、使っている商品・役務の権利まで失われるわけではありません。同じ区分の中で無料に含められる隣の商品・役務を、取消審判への心配だけを理由に外す必要はありません。
商標の種類が増えたことで、保護できる対象は広がりました。ただし、事業でどの要素を目印として使っているかによって、出願すべき商標の種類と範囲は変わります。文字だけでよいのか、ロゴや色、音まで必要なのかは、使用実態と費用を見ながら決めていきます。
6. よくある質問
Q1. どのようなものが商標として登録できますか?
文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、音です。2015年からは、動き、ホログラム、色彩のみ、音、位置の商標も登録できます。
Q2. においや味の商標は登録できますか?
現在の日本の商標法では登録対象になっていません。
Q3. 標準文字とロゴ、どちらで出願すべきですか?
使用実態によります。名称そのものを守りたいなら標準文字、デザインしたロゴを使うなら図形や結合商標として出願します。両方が必要な場合は別々の出願になり、費用も出願ごとにかかります。
Q4. 登録前に異議申立ての期間はありますか?
ありません。登録異議の申立ては、設定登録後に発行される商標掲載公報の発行日から2か月以内に行う手続です。
Q5. 商標権はいつ発生しますか?
登録料を納付し、設定登録された時点で発生します。出願しただけでは商標権は発生しません。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
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