商標を特許庁に出願する際、その商標が法的に保護されるまでに一定の時間を要します。その間に、第三者が無断でその商標を使用していることに気づいた場合、どのように対応すべきでしょうか？今回は、商標権が正式に成立する前後の適切な対応策について詳しく解説します。
商標権の成立前と後の違い
審査段階では商標権が未成立
商標を出願している段階では、商標権はまだ正式に認められていません。つまり、この段階では「商標登録を申請中」というステータスに過ぎず、法的に商標権で保護される権利が発生していないのです。そのため、もし誰かがこの商標を無断で使用していても、現時点で商標権による法的な手段に訴えることはできません。
商標権成立後に備える
商標審査に合格し、商標権が正式に発生すると、その商標に対する独占的な使用権が得られます。
この時点から、無断使用者に対して警告や法的措置を取ることが可能になります。したがって、まずは商標権の成立を確実にすることが最優先となります。
商標権成立前のリスク管理
情報提供による商標権成立阻止の可能性
商標権が成立する前に、第三者がこちらの商標が出願中であることを知ると、特許庁に情報提供を行い、商標権の成立を阻止しようとする可能性があります。
例えば、相手が特許庁に対して、既存の商標との類似性を主張したり、先に使用していた証拠を提出したりすることで、審査の結果に影響を与えかねません。このため、商標権が成立するまでの間、自らの商標出願状況を公にしないことが重要です。
商標権成立後の対応策
商標公報発行後の異議申立期間
商標権が正式に成立した後も、商標公報が発行されてから2ヶ月間は、第三者がその商標に対して特許庁に異議申立を行うことが可能です。
この異議申立が認められると、商標権が取り消される可能性もあります。そのため、この2ヶ月間は、無断使用者に対して直接的な行動を取ることを控えることが賢明です。
異議申立期間終了後の権利行使
異議申立期間が終了し、正式に商標権が確定した時点で、無断使用者に対して権利行使を行うことが最も効果的です。
例えば、警告書を送付し、無断使用の即時中止を求めることができます。これにより、相手に対して法的なプレッシャーを与えることが可能です。
無断使用に対する具体的なアクション
証拠の収集
無断使用に対する最初のステップは、しっかりと証拠を収集することです。
例えば、無断使用された商品やサービスの証拠写真、侵害者側のウェブサイトのスクリーンショット、販売記録などを保存しておきます。これらの証拠は、後々法的措置を取る際に非常に重要となります。
警告書の送付
異議申立期間が終了した後、まずは無断使用者に対して警告書を送付します。
この警告書には、商標権が成立していること、そして無断使用が違法であることを明示し、使用の即時中止を求めます。多くの場合、これだけで相手は使用を中止することが期待できます。
法的措置の検討
もし警告書に応じない場合、次のステップとして法的措置を検討します。
具体的には、差止請求や損害賠償請求などが考えられます。これらの法的措置により、無断使用者に対してさらに強力な圧力をかけることができます。
まとめ
商標出願中に無断使用が発覚した場合、焦らず冷静に対応することが重要です。
商標権が正式に成立するまでの間は、無駄なリスクを避け、異議申立期間が終了してから適切な権利行使を行うことが最も効果的です。これにより、商標権をしっかりと守り、ビジネスを安心して進めることができるでしょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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