索 引
(1)「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」の企画内容
所ジョージさんの発明品で特許を取ろう
今回の2時間スペシャルの企画内容は、所さんの発明品について特許を取ろうじゃないか、というものです。所さんの発明品は靴についてのものです。
かかとの靴底が簡単に着脱交換できる構造になっていて、左右のかかとの部分を靴から取りはずして交換することができます。この発明品であれば、適宜靴のかかと部分を相互に交換することにより、靴のかかの一方の部分のみがすり減ることを防ぐことができます。
また、かかと全体がすり減ってしまえば、また新たなかかと部分に交換もできる構造になっています。
番組では、アンジャッシュの児島さんがこの所ジョージさんの靴の発明品について、街行く人々にどう思うかインタビューをします。
また自分で工作できる工房に行って、実際に所さんの発明品の試作に挑みます。
ただし、単に市販の靴を加工する程度では所さんの発明の内容を実現するのは難しそう。そう感じたアンジャッシュの児島さんはプロの靴職人の方に、所さんの発明品の試作を依頼します。
そして、ほぼ所さんの発案通りの試作品が出来上がります。
この試作品が特許できるかどうか。この観点から、アンジャッシュの児島さん自ら、ファーイースト国際特許事務所に来てくださいました。
(2)まずは特許されるかどうか調べてみましょう
所さんの靴の発明品は着眼点がよいと思います。
しかし、いくら優れた発明品であっても、似たようなものが先に発表されている場合には、後から特許を取ることができません。
そこでまずは特許できるかどうか、調べてみましょう、ということになりました。
実際には特許庁の「J-PlatPat」とのシステムを使って、インターネットで無料で発明情報を調べることができます。ここで靴やかかと関連のキーワードで実際に調べてみたところ、残念ながら所さんの発明品の内容とほぼ同じ内容の先行発明が見つかってしまいました。
実際の発明品についての検索結果詳細は、番組内では放送枠の関係上、カットされていました。アンジャッシュの児島さんとの相談内容として、現在の発明にプラスアルファの要素を盛り込めば、もしかしたらチャレンジできる余地があるかも、という結論になりました。
(3)特許を取るためには
特許される前提として、超えなければならない二つの大きなハードルがあります。
(A)発明の内容が、秘密の状態にあること
一つ目のハードルは、発明の内容が部外者以外に漏れていないということです。
発明の内容をホームページやツイッター、フェイスブック等のSNSで発表してしまうと、その発明はもはや秘密のものではなくなりますので、特許を取ることができなくなります。
自分の発明なら、発表してしまっても後日特許を取ることができる、と勘違いされている方が少なくないので注意してくださいね。
この一方、特許法では救済措置として、自分で発明を発表してしまった場合には、特許庁の審査で不利に扱われることがないようにする手続が別途設けられています。
ただこの手続は例外手続であり、特許庁への特許出願申請手続が遅れると救済を受けることができない場合があります。
またこの例外手続は、あくまで特許庁の審査で不利に扱われない、というだけであって、出願自体が優先的に取り扱われるわけではありません。このため第三者の出願に遅れて出願した場合には特許を取ることができなくなる場合もあります。
(B)発明の内容が、既にあるものから簡単に思いつくことができないこと
二つ目のハードルは、既に知られている技術から簡単に思いつくことができるものではダメだ、ということです。
誰でも簡単に思いつくようなものがどんどん特許されると、他の人は困ることになります。これを防ぐために、特許法では優れた発明にのみ、特許を与えるようにしています。
(4)アンジャッシュの児島さん、がっくり
今回の場合は、既に所さんの発明内容を外部に発表してしまっているから特許を取ることが原則できない、というのが番組のオチです。
アンジャッシュ児島さん:「だったら、そもそも発明についてテレビ番組取材をやったらダメになるじゃないですか」
ファーイースト国際特許事務所・平野:「その通りですネ。」
アンジャッシュ児島さん:「あちゃ〜」
・・・といった感じの流れになっています。
もし発明したなら、外部に発表する前に専門家に相談して、特許化が可能かどうか先に検討するようにしましょう。
(5)所さんの発明品を守る方法は?
自ら発明品を公開して特許を取ることができなくなった場合とか、既に同じ様な発明品が公開されていて、公開された発明から簡単に思いつくことができるとして特許を取ることができない状態であったとしても、別の知的財産権で発明品を間接的に保護することができます。
一つの例としては、所ジョージさんの発明品であるかかと部分が交換可能な靴についてネーミングを考えて、そのネーミングを商標登録してしまう方法があります。
靴のネーミングについて商標登録をしてしまえば、関係のない業者は無断ではその靴のネーミングを使うことができなくなります。
また靴のネーミングから、一般需要者はその靴が所ジョージさんの発明品であることが分かるというメリットもあります。
発明の場合には世の中に知られてしまった場合には特許を受けることができないのですが、商標の場合には、世の中に知られてしまった場合であっても登録を受けることができる点が大きく異なります。
この違いが活用できないか、検討するようにしてくださいね。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247