ワニのロゴを掲げる2つのブランド、ラコステとクロコダイル。どちらも長い歴史を持ち、世界各国で事業を展開してきました。ところが、よく似たロゴを巡って両社は数十年にわたる商標紛争を繰り広げてきました。この事例は、ブランドロゴの類似がどれほど深刻なリスクになるのか、そして商標権をいかに守るべきかを教えてくれる格好の教材です。
1. 2つのワニが辿ってきた道
特許庁公開の商標公報より引用
ラコステは、1933年にフランスで元テニス選手のルネ・ラコステ氏が創業したアパレルブランドです。ロゴは右を向いたワニで、これはラコステ氏本人のニックネーム「ワニ」に由来します。それまで服の内側に隠されていたブランドロゴを、服の表に出した先駆者としても知られています。ワニのマークが付いたポロシャツは世界中でライセンス生産され、一度は目にしたことがある方がほとんどでしょう。
一方のクロコダイルは、1952年に香港のクロコダイルガーメンツ社(現在はシンガポール企業)が立ち上げたブランドです。ロゴは左を向いたワニで、ラコステとは向きが逆になっています。日本では1980年にヤマトインターナショナル株式会社が商標を取得し、主力ブランドとして育ててきました。野球選手やプロゴルファーを起用したプロモーションで、一定の認知度とファン層を築いた歴史があります。
日本市場への上陸時期は、クロコダイルが1963年、ラコステが1971年です。ワニの向きこそ違うものの、一見すると似通ったロゴが同じ国内市場で並び立ったことで、両社の衝突は避けがたいものになりました。
2. 日本と世界の法廷で交わされた攻防
日本では、クロコダイル側が先手を打ちました。1969年、クロコダイル・インターナショナル社がラコステ社を大阪地方裁判所に提訴します(大阪地方裁判所昭和44(ワ)2333 商標権民事訴訟 昭和46年2月24日)。争点は「鰐図形」の商標権侵害でした。
その後、両社は高等裁判所で和解に達し、1983年に和解契約を締結します。日本弁理士会 国際活動センターアジア情報によれば、この和解契約では「両者の関連する標示は関連する国家及び地区において共存しており混同を起こさないことを確認した」とされています。
ところが、舞台を日本から世界に移すと、両社の衝突はむしろ激化しました。中国では最高人民法院が双方のロゴの並列存在を認める判断を下しています(中華人民共和国最高人民法院民事判決:(2009)民三終字第3号「ラコステ商標訴訟」)。2015年2月のニュージーランドの控訴裁判所では、ラコステ側に有利な判決が出ています。
数十年にわたる応酬の末、クロコダイル側は大きな転機を迎えます。2012年秋から、ブランドロゴにあったワニの図案をなくし、クロコダイルの文字のみを残す方向にデザインを一新しました(2012年5月29日付 日本経済新聞「クロコダイル、ワニいない新デザイン」)。発売50周年という節目に合わせ、長年のシンボルを手放す決断でした。
3. この事例が教えてくれること
ラコステとクロコダイルの紛争から学べる教訓は、ブランドロゴの類似リスクの大きさです。一度ロゴを世に出し、消費者に定着した後で変更を迫られると、ブランド資産の毀損は避けられません。ロゴを手がかりに選んでくれていた顧客、積み上げてきた知名度、それらがロゴ変更と同時に揺らいでしまいます。
もう一つ忘れてはならないのは、他人のデザインを一切参照せず独自に作り上げたロゴであっても、結果として他人の商標権を侵害してしまうケースがある点です。商標権の侵害判断では、相手の登録商標を知っていたかどうかは考慮されません。善意でも結果責任を問われるのが商標制度です。
こうしたリスクを避けるには、ロゴを世に出す前の商標調査が欠かせません。類似する先行商標がないかを事前に確認しておけば、後から訴えられる事態の多くは回避できます。
しかも、調査だけで安心してはいけません。日本の商標制度は、先に使っていた者ではなく、先に特許庁へ商標登録出願をした者が権利者になる仕組みです。調査して類似商標がないことを確かめても、登録を怠れば、後から第三者に先を越されて出願されるおそれがあります。攻撃こそ最大の防御、という言葉は商標の世界にも当てはまります。
4. 登録した後にも落とし穴がある
商標権を取得したら終わり、ではありません。登録商標には使用義務が課されていて、日本国内で3年間、登録したものと同じ商標を使っていないと、第三者から不使用取消審判を請求されるリスクがあります。
不使用取消審判を請求されたとき、登録商標そのものを使用している事実を証明できなければ、せっかく取った商標権が消滅してしまう結末もあり得ます。登録商標と実際に使っている商標が少しでもずれていると、この証明でつまずくケースがあるのです。
商標権は取得した後のメンテナンスも含めて、ブランド戦略の一部として見ていく姿勢が欠かせません。油断は禁物です。
ラコステとクロコダイルの事例のように、ブランドロゴを巡る紛争は一度始まると数十年単位で続くことも珍しくありません。自社のブランドを守るには、ロゴ作成の段階から商標の専門家に相談しておくのが賢明です。当事務所では、実務10年以上の現役ベテラン弁理士・弁護士がお客さまを直接担当し、商標調査・出願・権利活用まで一貫してサポートします。まずは無料調査をご利用ください。費用の目安もあわせてご確認いただけます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
商標のことでお困りですか?
商標登録の出願・調査・侵害対応について、
弁理士が無料でご相談に応じます。お気軽にお問い合わせください。
ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

