目次
(1)商標登録証とは何か?
商標権の証明確認としての役割
商標登録申請書を特許庁に提出し、無事審査を通過すると、その後商標権が付与されます。ただし、申請者はこの時点では、いつ商標権が生じたのかを知ることはできません。
特許庁から商標登録証が郵送されてくると、初めて商標権が発生した日付を知ることができます。
商標登録証には、商標権が発生した日を示す「登録日」が記載されています。
商標登録証は商標権を持つ者のみに交付されます。商標登録証を所持し、商標登録証に書かれている商標権者の情報と証の保持者が一致していれば、その証が商標登録の確認の役割を果たします。
商標登録の原簿の役割が不可欠
商標登録証が、その中に記載されている商標が実際に特許庁に登録されているものであるという一定の証明力を持つ、というのは、その理由は商標登録証の中には発行時点での情報が含まれているからです。
例えば、商標登録証には東京都中央区が住所として記載されていたとしましょう。その後、本社が九州へと移転したら、商標権者の住所はもはや東京都中央区ではなくなります。
さらに、住所の変更だけでなく、社名の変更や、商標権の移転(会社から個人へ、またはその逆)もあり得ます。
こうした商標権の内容が変化しても、商標登録証は初回発行時の情報を保持し続けます。
では、商標権の情報はどのように管理されるのでしょうか。それは、全ての商標権の詳細が特許庁が保有する商標登録簿により一元管理されているからです。
住所の変更、名前の変更、商標権者の変更だけでなく、商標登録の区分、指定商品、指定役務の削減等、これら全ての変更情報が商標基本簿に記録されています。
商標登録の最終的な証明は、この商標登録簿を基に行われます。
つまり、商標登録証に記載された内容は過去のものであり、現在の商標権の内容とは異なる可能性があるということです。現行の商標権の内容を確認するためには、特許庁から商標基本簿の謄本を取得する必要があります。
また、特許庁のデータベースである特許情報プラットフォームを通じても、商標権の内容を無料で確認することができます。
商標登録証の見本
図1 登録商標「商標とうろくんⓇ」の商標登録証
商標登録の一連のプロセス
商標登録証が発行されるまでの流れを説明します。
登録証取得への出願申請
初めに、登録を希望する商標と出願者について記入した商標登録申請書を特許庁に提出します。商標登録願(ねがい)と呼ばれるものです。
申請書の記載に誤りや、法的な手続きに反する記述がある場合、特許庁から申請書の修正指示が出されます。この場合、指示に従い申請書の内容を修正します。
申請書が特許庁に無事受け付けられれば、商標登録の申請手続きは完了となります。
実際の商標審査では
商標登録の申請が終了すると、申請書は特許庁で審査待ちの状態になります。
年間で約10万件以上の申請書が特許庁に集まります。特許庁は全国に一箇所、東京の虎ノ門に存在し、すべての申請書がここで審査されます。
先に提出された申請書の審査が終わった後、新たな申請書の審査が開始されます。審査官が申請書を手にするまでに約5ヶ月から1年程度かかります。審査官が1年間悩んでいるのではなく、審査の順番がくるまでに一定の期間が必要とされます。
商標審査の合格
特許庁の審査に合格すれば、次は登録査定のステージです。これは審査を無事通過した証明になります。この登録査定を受け取ると、審査合格が確定します。
登録料金の納付支払
登録査定を受けてから、特許庁に指定された期間内に登録料を支払うと、商標の登録が完了し、商標登録証が交付されます。
商標登録が終了すると、商標権が発生します。その後、商標登録証が特許庁から郵送されてきます。商標登録証の郵送は、登録料の支払いから約一ヶ月程度です。
権利更新登録
商標権の有効期間は登録日から10年間です。更新申請を行うことで、有効期間をさらに10年延長することができます。
登録料は基本的に10年分を一括で支払います。この10年分の登録料を半分に分け、5年分ずつ支払うことも可能です。しかし、最初の5年分を支払ったとしても、後半の5年分の登録料を支払わなければ、権利が失われます。
(2)商標登録証はいつ発行されるのか?
登録証取得への出願申請時
申請時点では、まだ審査が始まっていないため、商標登録証は発行されません。
管理原簿登録時
商標が正式に登録された際に、初めて商標登録証が発行されます。
商標登録証は、初回登録時に一度だけ発行されます。その後、自動的に再発行されることはありません。
権利更新登録時
更新手続きが完了した際には、更新申請登録通知書が郵送されますが、商標登録証は再発行されません。
商標登録証には登録日が記載されていますが、更新の有無については記載されていません。そのため、商標権の有効期間を確認するには、特許庁から商標原簿の謄本を取り寄せる必要があります。
なお、商標権が更新されたかどうかは、特許庁のデータベースである特許情報プラットフォームで無料で確認することができます。
(3)紛失した場合、商標登録証は再発行できる
もし商標登録証をなくしたとしても、あるいはそれが破れてしまった、または汚れてしまった場合でも、心配する必要はありません。それはなぜかと言うと、特許庁では紛失や破損、汚損した商標登録証の再発行を受け付けているからです。再発行される商標登録証は、元々の内容と何一つ変わることなく、初回発行時の証と全く同一のものとなります。
再発行を依頼するにはどうすれば良いのか。それには、商標登録証再交付請求書を作成し、それを特許庁に提出する必要があります。
ただし、注意すべきは、商標登録証が汚れたり破れたりした場合、その汚損、破損した商標登録証証を特許庁に返還しなければならないという点です。
もしも商標登録証を紛失したとしても、その商標権自体がなくなるわけではないということを理解しておきましょう。
商標登録証とは、初回の商標登録時の情報が記載された証明書の一種で、商標権の有無やその内容は特許庁に保管されている商標原簿によって管理されています。
そして、商標権を現在の保有者から新たな保有者に移転する場合、そのための手続きが必要になるのです。
商標登録証があなたの手に渡ったとしても、それだけでは商標権自体が移転するわけではありません。商標権の移転手続きを行うには、譲渡証とともに特許庁に申請を行う必要があります。
(4)中国における商標登録証の扱い
早ければ半年から1年で取得可能
中国では年間に200万件以上の商標登録申請が行われ、かつてはその審査に2年以上もかかっていました。しかし、近年は審査期間が徐々に短縮されており、1年以内に商標登録証が取得できる様になってきています。
ただし、早期審査は難しい
だけども、中国での商標登録申請の審査にはやはり時間がかかります。日本では早期審査制度があり、通常の審査よりも時間を短縮できますが、中国ではこのような早期審査制度は存在しません。
審査期間は最大でも9か月
しかし、最近では商標審査の迅速化が中国国内で認められ、最長でも9ヶ月以内に商標登録申請の審査が完了するという方針が示されています。
中国の商標登録の手続き
中国の商標登録の手続きは日本と大筋では同じですが、いくつか違いもあります。
一つは、審査が通らない場合、日本のように拒否理由の通知がなく、いきなり拒否決定が下される点です。
もう一つは、3ヶ月の異議申立て期間中に他人からの異議申立てがなければ、そのまま商標登録が行われる点です。
商標権の行使には登録証が必須
日本では、商標権を行使するために商標登録証は必須ではありませんが、中国では商標権者であることの証明に商標登録証が用いられますので、保有していることが求められます。
ただし、日本からマドリッド協定を利用して直接中国に商標登録を申請した場合、商標登録証は中国で発行されないので注意が必要です。
(5)まとめ
日本では商標法上、権利行使時の位置づけがそれほど重要ではない商標登録証ですが、中国のようにその重要性が高い国も存在します。また、香港などでは商標登録証の再発行を行ってくれない国もあるため、商標登録証の扱いは国により異なります。
商標登録証を通じて商標権の内容や権利更新日を簡単に確認することができます。大切に保管しておきましょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247