商標登録を考えているものの、その真の意味がわからずに悩んでいる方々から質問を受けることがあります。
「商標登録をするべき時期はいつなのか?」
私は商標登録の専門家として、その悩みを共感できます。
これまでのコラムでも繰り返し触れてきましたが、商標登録はブランド保護に欠かせない強固な武器だと私は信じています。
商標登録の真価が発揮されるのは、商標が広く認知された後です。
例えば、「エルメス」のロゴが付いたハンドバッグと、ロゴがないハンドバッグを思い浮かべてみてください。同じデザインのバッグでも、価格は雲泥の差があるでしょう。
それこそが、ブランドの力というものです。
しかし、どのブランドもその力を最初から持っていたわけではありません。
出発点ではブランド力は「ゼロ」です。
誰もが無名の存在からスタートし、その価値は当初はゼロです。
しかし、ブランドを慎重に育て上げ、価値を持つものに成長させるのです。
ブランドの価値は最初はゼロあるいはほぼゼロなので、その段階で商標登録の必要性を感じない、という方々の気持ちも理解できます。
しかし、ブランドの価値が上がった時点で商標登録を考える、というのはどうでしょうか?
私はそれには違和感を覚えます。
たとえば、株価が長期間低迷している会社の株を買う意欲は沸かないかもしれません。
しかし、ある日その株価が急騰した場合、その時に初めて株を買おうとする考え方はあまり賢明とは言えません。
この場合に例えると、ブランドが有名になってから保護するという考え方は、株価が低いときに株を買わず、株価が急騰してから株を買おうとする考え方に似ていると思います。
商標登録と株とを同じというつもりはありませんが、どちらも「未来」を見据えて行動するという観点では共通点があります。
未来を予測できる人だけが株市場に参入できるように、
未来を見越して行動できる人だけが、適切なタイミングで商標登録を行うことができます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247