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インターネットビジネスにおける商標登録のポイントと留意事項


1. はじめに

ネットショップ、SaaS、サブスク型サービス、オンライン教育、配信プラットフォームなど、インターネットを軸にしたビジネスは、業態のバリエーションがどんどん広がっています。これに合わせて、商標登録の場面でも「自社の事業はどの区分に当てはまるのか」が分かりにくくなってきました。

商標は「区分」という分類で守られます。区分の選び方を間違えると、せっかく登録しても自社の本業を守れない、という残念な状態になってしまいます。本記事では、インターネット系ビジネスで商標登録を検討するときの考え方、典型的な業態ごとの区分の目安、よくある落とし穴、そして実務でのポイントをまとめてお伝えします。

2. なぜネット系ビジネスは区分選びが難しいのか

商標登録の区分は、第1類から第45類までに分かれています。もともとは「商品」と「サービス(役務)」を整理するためのもので、製造業や小売業を念頭に作られた仕組みです。

ところが、インターネットを軸にしたビジネスは、

  • 商品を売っているのか、サービスを売っているのか
  • 自社が直接エンドユーザーに提供しているのか、プラットフォーマーとして場を提供しているのか
  • 提供しているものは「通信」「情報」「ソフトウェア」「コンテンツ」のどれに該当するのか

といった切り分けが曖昧になりがちです。一つの事業の中に、商品要素もサービス要素も同居していることが珍しくありません。

このため、ネット系ビジネスの商標出願では、区分の網羅性と精度が、地に足のついた業態の場合よりも重要になります。

3. 典型的な業態ごとの区分の目安

実務でよく出てくる業態ごとに、区分の目安を整理しておきます(最終的な区分・指定役務は、商品・サービス内容を見て個別に判断します)。

インターネットサービスプロバイダー・通信系

ネット接続そのものや、通信インフラを提供する事業者は、第38類の「電気通信」関連の役務が中心になります。クラウドストレージや動画配信プラットフォームの一部も、通信機能を提供する側面があるため第38類が登場します。

オンラインショップ・ECサイト

EC事業の本質は「商品の小売り」です。第35類の「広告、事業の管理、事業の運営、事務処理」「他人の便益のために行う商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が中心です。取り扱う商品分野に応じて、第35類の指定役務を細かく書き分けます。

SaaS・ソフトウェア提供

ソフトウェアそのものの提供は、ダウンロード型なら第9類の「ダウンロード可能なコンピュータプログラム」、サービス型(クラウド)なら第42類の「電子計算機用プログラムの提供」が候補になります。1つのプロダクトでも、提供形態が複数あれば両方の区分を押さえることがあります。

オンラインゲーム

ダウンロード型のゲームは第9類、オンライン上でプレイするタイプのゲームサービスは第41類の「ゲーム提供」が中心です。加えて、ゲーム内アイテムを販売する場合の決済関連で別の役務が絡むこともあります。

オンライン教育・eラーニング

「電子計算機端末による通信を用いて行う教育」「セミナーの企画・運営又は開催」など、第41類の教育役務が中心です。

情報提供サービス

ヘルスケア情報、旅行情報、不動産情報など、特定分野の情報提供は、その分野に対応した区分(第44類の医療系、第39類の旅行系など)と、第41類「電子計算機端末による通信を用いて行う情報提供」を組み合わせるパターンが一般的です。

4. よくある落とし穴

「サービスをすべて第38類で出せばいい」と思ってしまう

「インターネットを使ったサービスだから、ぜんぶ第38類でしょう」と決め打ちしてしまうのは、最もよくある誤解です。第38類は通信そのものの提供を指す区分で、ECや教育、情報提供のほとんどはここに該当しません。

一つの事業を一区分で済ませようとする

実態として、ネット系ビジネスは複数区分にまたがるケースが多くなります。「コア部分の1区分だけ取って終わり」では、周辺サービスや拡張領域で他社にブランド名を抑えられるリスクが残ります。

「商品」と「役務」の区別を見落とす

ダウンロード可能なソフトウェアは「商品(第9類)」、クラウド上で提供するソフトウェアは「役務(第42類)」と扱われます。同じプロダクトでも、提供形態によって区分が変わる点を見落としやすい部分です。

拡張計画を反映していない

「将来オンライン教育にも展開したい」「海外でも展開したい」といった拡張計画があるのに、現状の事業に合わせた区分しか取らない、という出願も少なくありません。拡張計画は商標の設計段階で必ず反映させておきましょう。

5. 国際展開を視野に入れる場合

越境ECやグローバルSaaSのように、最初から海外展開を視野に入れる場合は、マドリッドプロトコル(マドプロ)の活用が選択肢になります。日本での出願をベースに、複数の国・地域へ一度の手続きで保護を広げられる国際出願の仕組みです。

ただし、各国での審査は国ごとに行われ、区分や指定役務の解釈にも国ごとの個性があります。事業の重点国(米国、EU、中国、東南アジアなど)については、現地代理人と連携した個別出願も検討に値します。

6. 出願後の運用で気をつけたいこと

商標は登録して終わりではなく、運用のフェーズで価値が決まります。

  • 商標を実際に使っている証拠(広告、ECページ、配信実績、ユーザー数の推移など)を継続的に残しておく
  • 不使用取消審判のリスクを意識し、3年以上使っていない区分・役務がないかを定期点検する
  • 競合の出願動向をモニタリングし、自社の商標が希釈化されていないかを確認する
  • 海外展開を進めるたびに、現地での先行商標と権利の有無を確認する

ネット系ビジネスはピボットが頻繁に起こります。事業内容が変わったら、商標も合わせて見直す習慣をつけておくと、後の事故を予防できます。

7. まとめ

インターネット系ビジネスの商標登録は、「区分の網羅性」と「拡張計画への対応」がポイントです。「ネット系だから第38類」と決め打ちせず、自社の事業の実態と将来計画に合わせて、複数の区分を組み合わせて設計してください。

迷う場面では、最初の段階で弁理士にご相談ください。無料相談(/mailform)と費用感の目安(/fee-schedule-trademark)をご用意しています。

8. Q&A:インターネットビジネスの商標登録でよくいただくご質問

Q1. ネット系ビジネスで商標登録するメリットは何ですか?

A. ブランドの法的保護です。登録された商標は、他社が同一・類似の商標を使うことを法的に止められます。ドメイン名やSNSアカウントだけでは得られない、強い保護が手に入ります。

Q2. インターネットサービスで指定役務を選ぶときに気をつけるべき点は?

A. 一つの事業が複数の区分にまたがるケースが多いため、コアの区分だけでなく周辺の区分も検討してください。たとえばオンラインショップなら「通信サービス」ではなく「小売役務」が本筋です。専門家と一緒に区分マップを作るのが安全です。

Q3. 商標登録の手続きで、いちばん時間がかかるのはどこですか?

A. たいていは、特許庁の審査段階です。出願から登録までは現在の運用でおおむね11か月前後を見込んでください。早期審査制度を使える場合もあるので、急ぐ事情があるときはご相談ください。

Q4. 海外展開する場合、商標はどう守ればよいですか?

A. マドリッドプロトコルを使った国際登録が定番です。一度の手続きで複数国の保護を求められます。事業の中心国については、現地代理人を介した個別出願との組み合わせも検討に値します。

Q5. 商標登録後に、商標の使用範囲を広げたい場合は?

A. 同じ商標で、新たに別の指定役務を加える出願(追加出願)を別途行います。既存の登録に直接「追加」できる仕組みはないため、新規出願のかたちで審査を受け直すことになります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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