1. はじめに
商標登録って本当に必要なのかという疑問が相談項目としてよく寄せられます。
商標の扱いやブランドの展開方法など、それぞれの戦略によって異なるので、一概に答えるのは難しいです。要するに、商標登録の選択は、経営者やブランドオーナーの考え方次第です。
以下のような状況の人は、商標登録が不要だと感じるかもしれません。
- 短期間でビジネスを終える予定の人
- 地元の小さなコミュニティやサークルで活動する人
- 他者の商標を横取りして利益が得られないか考える人
確かに、これらのシチュエーションでは必要性を感じないかもしれません。
しかし、異なる視点で考えると、その答えは変わってくるかもしれません。
2. 商標登録、実は信用を守るもの
ビジネスを行っていると、商品やサービスを展開する中で、商品名やサービス名、そして会社や店舗の名前が知名度を持ち、人々に親しまれることがあります。
これは、その名前が消費者からの厚い信頼を得ているからです。
その信頼は、名前そのものと深く結びついています。
例を挙げるなら、「トヨタ」という名前がついた車には多くの人が魅力を感じ、購入を考えます。
仮に、もし私の名前「ヒラノ」という名前がついた車があったとして、多くの人は購入をためらうでしょう。
なぜなら、「トヨタ」には既に消費者の信頼があり、一方「ヒラノ」という名前の車には、その信頼がまだ築かれていないからです。
このような消費者の信頼を保護する役割を果たしているのが、商標登録なのです。
3. 商標登録、実はビジネスの盾
あなたの商品を売り出す努力の結果、会社名や店名が人々の間で知られるようになりました。この名前には、あなたのビジネスへの信頼が詰まっています。
商標を正式に登録することで、他者があなたの築き上げた信頼を勝手に使うのを阻止することができるのです。
「うちのブランドにはまだ商標登録の必要性を感じない」と思うかもしれませんが、それは現在、あなたのブランドがまだ十分な信用を獲得していないからかもしれません。
ただ、その考え方が当てはまらない場合があるのです。
全ての有名ブランドも、かつては未知の存在でした。誰もが認知されていない時代を乗り越え、今の信頼と認知度を手に入れました。
トヨタやセブンイレブンも、かつては無名だったのです。しかしその後、彼らは絶え間ない努力をして、今や世界中の人々に知られる存在となりました。
そのように、あなたのブランドも今後の成長と努力で、商標の価値を高めることができるのです。
4. 商標登録、自分のビジネスの盾となるか？
大手企業の「トヨタ」や「セブンイレブン」のような有名な商標の価値は、いくらだと思いますか？
もし１億円でその権利を手に入れられるのなら、多くの人が飛びつくでしょう。ただ、実際にはそう簡単に手に入れることはできません。
興味深いことに、これらの大手企業がまだ無名だった時、彼らの商標登録に必要な費用は、今のあなたが商標登録に必要な費用と同じです。権利範囲が同じなら。
商標の真価は、登録した後の経営の取り組みによって決まります。商標を持つだけでなく、それをブランドとして育て上げる努力が必要です。
一方で、「今はまだ自社のブランドがそこまで有名ではないから、後で商標登録すればいい」と思っている企業も少なくありません。
しかしそのような考え方は危険です。もし将来有名になりそうな商標を持っているのであれば、他の企業がそれを先に登録するリスクがあります。
商標登録は、自社の価値を守るための大切なステップです。後でいい、という考えはもしかすると間違っているかもしれません。
なぜなら、商標登録する意味が分かるのは、将来のどこかの時点で、自分の商標を他社に取られているのを知ったときだからです。
5. 商標登録、今すぐ行動する理由
商標登録は未来を予見する行動です。
たとえば、将来ブランドとして有名になると確信している商標を早めに登録しないと、他者にその価値を見込んで登録される可能性が高まります。
これは、道路建設の計画を公表する前に、該当地を先に確保しないことに似ています。計画を公表すれば、その土地を狙う業者が増え、不正な方法で土地が買収されることもあります。
商標も同様で、認知度が上がるにつれ、商標を狙う者が増えるのです。
そして、「そろそろ登録しよう」と考えた時、すでにその商標が他者によって登録されていることも。
この現実は、多くの専門家が教えてくれないかもしれません。なぜなら、教えることで高額な裁判やアドバイス料を受け取るチャンスが減るからです。
このような事態を避けるためには、早めの商標登録が肝心です。
6. 商標登録のタイミング、今がその時かもしれません
ある日突然、大事に育てたブランドが商標登録不可能だと知ったら、どうしますか？登録の大切さをそんな時に気づくのは遅すぎるのです。
「まだブランドが浸透していないから、注目されるようになってから考えよう」と思う方もいるかもしれません。
それは、「今はまだ株価が低いから、価値が上がってから買おう」と考えるのと同じ。
実際は、株価が高騰する前に投資するのがベストですよね？高騰してから購入するのは、お得感がないばかりかリスクも高まります。
同様に、商標も早い段階での登録が最も安全かつ効果的。先を見据える戦略家は、商標の未来の価値を理解して行動します。
私は、未来を先取りするような方々に、商標登録のアドバイスをしています。今がそのタイミングかもしれません。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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