ビジネスを立ち上げる準備をしている仲間同士で、信頼関係を築きながら進めているとしましょう。しかし、もし仲間の一人が裏切り、独断でみんなで使うはずの商標を自分だけで特許庁に登録してしまった場合、法律的にはどうなるのでしょうか?
実は、「仲間に無断で商標登録したこと」は商標法上、商標登録の拒絶理由や無効理由には当たりません。
つまり、法律的にはこの行為自体を理由に商標登録を無効にすることはできないのです。
確かに、有名な商標を横取りするような出願には登録が認められない規定があります(商標法第4条第1項第10号、15号、19号)。
しかし、仲間内の事情だけを理由にその商標登録を認めないという規定は存在しません。
審査官はそのような内部の事情を知ることはできず、どちらの言い分が正しいかを判断することも難しいのです。
商標法上、仲間が無断で商標登録をしたことのみを理由に、商標登録を無効にしたり取り消したりする手続きは存在しません。
もちろん、仲間同士の約束に反する行為があれば、裁判に訴えることは可能です。
しかし、その約束を裁判官が納得できる程度に主張立証できなければ、裁判で有利な結果を得るのは難しいでしょう。
さらに、裁判で決着するには時間とお金、手間がかかります。
このような事態を防ぐために重要なのは、以下のポイントです:
- 1. ビジネス上の計画を進める際には、信頼できる仲間に限定して情報を共有すること
- 2. ビジネスに参加するかどうかわからないメンバーにも情報を開示する場合は、事前に必要な権利確保を行うこと
これらの対策を講じることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247