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アパレル業界における商標登録のポイント|第25類の範囲、靴類の指定漏れ、早期審査の使いどころ

1. アパレルの商標登録は発売日と展示会から逆算する

アパレル業界では流行の移り変わりが早く、商標登録も早く動いたほうが有利です。ブランド名を決めてから出願するまでの間が空くほど、同じ名前を他社に先に出願される機会が増えます。

特許庁の審査は、出願から最初の審査結果が届くまで半年から1年程度かかります。展示会の直前に出願しても、展示会までに登録は間に合いません。出願が済んでいれば先願の地位は確保できますが、商標権が発生するのは登録後です。

急ぐ事情があるときは早期審査の制度を使えます。ただし、早期審査は出願した商標をすでに使っているか、使用の準備が相当程度進んでいる商品が前提で、申出の書類も必要です。開発中の商品すべてに使える制度ではありません。条件は7章で説明します。

展示会や発売日が決まっている場合は、日程から逆算して出願時期を決めます。ブランド名の候補が固まった段階で専門家と話し合っておくと、審査期間を織り込んだ計画が立てられます。

2. 第25類に入るもの、入らないもの

商標登録の願書には、商標を使う商品・サービスを区分ごとに指定します。衣服は第25類です。第25類には被服のほか、履物、つまり靴も含まれます。帽子、靴下、下着、ベルトも第25類です。

一方、バッグや財布は第18類、ネックレスや指輪などのアクセサリー(身飾品)は第14類で、第25類には含まれません。洋服と靴とバッグを同じブランド名で展開するなら、第25類と第18類の2区分を指定します。

区分の数は特許庁に納める料金に直結します。同じ区分の中で指定商品を増やしても特許庁料金は変わりません。区分をまたぐと、区分ごとに料金が加算されます。第25類の商品の全体像は商標登録区分の第25類にまとめています。

スポーツ専用の衣服と靴は別の商品として扱われる

スポーツ専用の衣服や靴は、第25類の中でも通常の衣服や靴とは別の商品として扱われます。特許庁の商品分類では、空手衣やスキー競技用の衣服は「運動用特殊衣服」、スパイクシューズや登山靴は「運動用特殊靴」という商品で、「被服」「履物」とは類似の範囲が別に設定されています。

「被服」と「履物」だけを指定した商標権では、運動用特殊衣服や運動用特殊靴は権利の範囲に入りません。スポーツ関連のアパレル事業を営む方は、通常の衣服・靴に加えて運動用特殊衣服・運動用特殊靴を指定しておかないと、主力商品が権利から漏れます。

反対に、スキージャケットやトレーニングパンツのように日常でも着る衣服は「被服」に入ります。野球用グローブやアイススケート靴のように特定のスポーツに必須の用具は第28類です。スポーツ関連の区分はスポーツの商標は何類?で説明しています。

3. 2020年を境に増えた「洋服だけで靴がない」登録

同じ第25類で追加料金なしに併記できるにもかかわらず、洋服だけを指定して靴を外した商標登録が2020年を境に急増しています。当事務所がJ-PlatPatで集計したところ、洋服を指定し靴類を含まない登録は2019年の1,886件から2020年の2,999件へ、1年で1,113件(59.0%)増えました。2022年の3,575件をピークに、2023年は2,657件へ下がりましたが、2024年も2,710件と2019年の約1.4倍の水準です(集計は2024年分まで)。検索条件によって件数は変わるため、この数値は筆者集計の一例です。集計の詳細はアパレル商標で「靴類」を外すリスクに掲載しています。

これだけ続く増加は、担当者個人のうっかりでは説明がつきません。2020年頃から、指定商品を狭く絞って審査を通す実務が業界に広がったことが背景にあります。狭く絞れば拒絶理由通知を受ける確率が下がり、早く登録になります。当事務所を含め、出願を受ける側には、拒絶査定になって費用を回収できない事態を避けたい事情があります。依頼する側から見ると、早く登録できたように見えて、追加料金ゼロで取れたはずの靴の権利が最初から入っていません。

洋服のブランドが靴やスニーカーへ商品を広げるのは、ごく普通の展開です。登録証を受け取った時点で、指定商品欄に履物が入っているかを確かめてください。アパレル分野で権利範囲の狭い登録が増えている背景はアパレル分野で権利漏れ商標登録案件が急増かでも取り上げています。

4. 同じ区分なら追加料金なし、取り直すと1区分分の費用

第25類の中で「被服」「履物」「帽子」「靴下」「ベルト」をまとめて指定しても、「被服」だけを指定しても、特許庁料金は同じです。1区分で出願して10年分の登録料を納める場合、出願料12,000円と登録料32,900円の合計44,900円です。

靴を外して登録したあとで靴の権利を取り直すには、新しい出願を一からやり直します。同じ44,900円の特許庁料金がもう一度かかり、代理人に依頼すれば手数料も別途かかります。審査も最初からやり直しで、半年から1年の待ち時間が再び生じます。その間に第三者が同じ名前で靴の商標を先に出願する余地も残ります。

最初の出願に靴を入れておけば、特許庁への追加料金は0円でした。同じ区分内の商品は、使う時期が未定でも入れておくのが費用対効果の高い判断です。費用の内訳は商標登録の費用に掲載しています。

5. 「使わない商品は不使用取消審判が心配」は外す理由にならない

「使う予定のない商品まで指定すると、不使用取消審判で取り消される」という説明を聞いて、指定商品を削る方がいます。この心配は制度の理解が違います。

不使用取消審判は、登録から3年以上使っていない商標について第三者が請求できる制度で、指定商品・役務を選んで請求できます。ただし請求は一体です。請求された指定商品・役務のうち一つでも使用を証明できれば、請求は退けられ、登録は維持されます。使っている商品を含めて請求されても、その使用の証拠で守れます。

使っていない商品だけを対象に請求された場合は、放置すればその部分が消えるだけで、使っている商品の登録には影響しません。実害も追加費用もありません。不使用取消審判を理由に、特許庁料金が増えない商品を外す必要はないのです。入れる対象は、将来使う可能性のある商品です。使う時期が未定でも、同じ区分内なら追加料金なしで入れておけます。

6. 出願した後に商品は足せない

願書を特許庁に提出した後、指定商品を追加することはできません。出願後の補正で商品を足すことは認められず、登録後も同じです。漏れた商品の権利を取るには、改めて出願するほかありません。

このため、出願前の商品の洗い出しが商標登録の成否を分けます。出願書類を作る前に、商標を使う商品を具体的にリストアップし、その全部が願書に書かれているかを確認してください。

出願前に洗い出す商品の例

いま販売している洋服・靴・帽子・靴下・ベルト・下着に加え、今後3年以内に扱う可能性のあるバッグや財布、ノベルティやコラボ商品として作るTシャツやトートバッグ、店舗やECサイトで他社の商品も扱うなら小売サービス(第35類)まで、候補を書き出します。スポーツ用の衣服や靴を扱うなら、運動用特殊衣服・運動用特殊靴も加えます。

洗い出した商品は、区分ごとに分けて費用と照らし合わせます。同じ区分の商品は全部入れる、区分をまたぐ商品は事業計画と料金を見て決める、という順番です。区分を1つ増やすごとに、特許庁料金は出願料8,600円と登録料32,900円の計41,500円が加算されます。バッグを売り出す時期と、その区分の権利が要る時期を見て決めます。洋服の商標で靴下や手袋が漏れる例は洋服の商標権に靴下の権利の取得漏れで説明しています。

7. 早期審査を使うときは商品を削らずに条件を確かめる

展示会や発売日に間に合わせたいときは、早期審査を検討します。申出が認められると、通常の審査を待つ場合より数か月早く最初の審査結果が届きます。特許庁への申出手数料はかかりません。

早期審査の対象は3つあります。対象1は、指定商品の一部で商標を使っているか使用準備が相当程度進んでいて、第三者から警告を受けているなど権利化を急ぐ事情がある場合です。対象2は、願書に書いた商品の全部について使用または使用準備を示せる場合です。対象3は、一部の商品で使用または使用準備があり、指定した商品の表示がすべて特許庁の基準に掲載されたものである場合です。いずれも「早期審査に関する事情説明書」を提出し、使用の資料を添えます。

注意したいのは、対象2に合わせるために未発売の商品を願書から削ってしまうことです。削った商品は後から足せないため、その商品の権利を取り直す費用が生じます。一部の商品で使用があり、残したい商品の表示がすべて特許庁の基準に掲載されていれば、対象3で商品を外さずに申し出られます。基準に載っていない表示が含まれる場合はこの方法は使えないため、どの表示なら載っているかを出願前に確認します。早く審査してもらうことと、権利の範囲を狭めることは別の話です。

早期審査は登録しやすくする制度ではなく、審査の順番が早まるだけです。他人の商標と似ているなどの拒絶理由があれば通知は届きます。なお、商標のファストトラック審査は2023年3月末から休止しています。制度の詳細は商標ファストトラック審査は休止中で説明しています。

8. 出願前に専門家と検討する意味

アパレルの商標登録は、出願書類を出す前の設計で結果が決まります。第25類のどこまでを入れるか、バッグやアクセサリーの区分まで広げるか、スポーツ用の商品を別に指定するか、早期審査を使うなら何を残すか。これらは出願後には直せません。

当事務所では、実務10年以上の弁理士・弁護士がお客さまを直接担当し、ブランド名の候補と商品の一覧を伺ったうえで、特許庁料金が増えない範囲の商品を落とさない指定商品案を出願前にお示ししています。展示会や発売日が決まっている場合は、その日程に合わせた出願時期と早期審査の可否も一緒に検討します。

ブランド名の候補と扱う商品をお知らせいただければ、お問い合わせフォームから登録可能性の調査を受け付けています。出願から登録までの費用は料金案内に掲載しています。

9. アパレル業界の商標登録についてよくある質問

Q1. アパレル商品の商標登録はなぜ重要ですか?

ブランド名は、お客さまが商品を選ぶときの目印です。商標登録をしておけば、他社が似た名前を同じ商品に使うことを差し止められ、お客さまの混同を防げます。登録した商標権は譲渡やライセンスの対象になり、ブランドの価値を高め、事業を広げるときの資産になります。反対に登録がないと、後から他社に同じ名前を登録され、自分のブランド名を使えなくなる場合があります。

Q2. 商標登録をする最適なタイミングはいつですか?

新しいブランドや商品ラインの計画が固まった段階です。審査には半年から1年かかるため、展示会や発売日から逆算して、その前に出願を済ませます。ブランド名を公表してからの出願では、その名前を第三者に先に出願される余地が生じます。

Q3. 指定する区分はどうやって決めますか?

衣服、靴、帽子は第25類が中心です。バッグや財布は第18類、アクセサリーは第14類、店舗やECサイトでの小売サービスは第35類です。同じ区分内の商品は追加料金なしで併記できるので全部入れます。区分をまたぐ商品は1区分ごとに特許庁料金41,500円が加算されるため、その商品を売り出す時期を見て決めます。

Q4. 商標登録でよくある失敗は何ですか?

指定商品の漏れです。洋服だけを指定して靴を外した登録は、2020年以降に急増しています。同じ区分内で追加料金なしに入れられた商品を外すと、後から取り直す費用と時間がかかります。もう一つは事前調査の不足です。似た商標が先に登録されていると拒絶され、出願料は戻りません。出願前に調査をしてから出願します。

Q5. 商標登録をすると、どこまで保護されますか?

日本の特許庁に登録した商標権は、日本国内で効力があります。海外で展開する場合は、国ごとに出願するか、マドリッド協定議定書に基づく国際登録を使って各国に権利を広げます。登録後は、登録商標を無断で使う第三者に対して、差止めや損害賠償の請求ができます。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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