1. 請求書では報酬・特許庁費用・税を分けて見る
弁理士から届く請求書には、弁理士の報酬、特許庁へ納める料金、通信費などの実費、消費税、源泉徴収税額が並ぶことがあります。源泉徴収は値引きではありません。支払者が弁理士へ渡す報酬の一部を差し引き、その金額を所得税及び復興特別所得税として国へ納める仕組みです。
商標登録出願では、特許庁の出願料と、弁理士へ支払う事務所報酬は別の費用です。2026年8月時点の特許庁料金は、商標登録出願が3,400円+1区分につき8,600円、設定登録料が10年一括で1区分につき32,900円、5年分割で1区分につき17,200円です。料金改定もあるため、納付前には特許庁の料金一覧を確認してください。
当事務所の報酬と特許庁料金は商標登録の費用で確認できます。請求書の各欄が何を示すのか分からないときは、支払前に発行元へ確認してください。
2. 源泉徴収する人と、しない人
国税庁は、居住者である弁理士の業務に関する報酬を源泉徴収の対象に含めています。会社が弁理士個人へ対象報酬を支払う場合は、原則として会社が源泉徴収義務者となり、税額を差し引いて支払い、国へ納付します。
個人からの支払いがすべて対象になるわけではありません。給与について源泉徴収義務を負わない個人が弁理士へ報酬を支払う場合は、通常、その報酬を源泉徴収しません。例えば、給与を支払っていない個人が自分の手続を依頼する場面が該当します。個人事業主でも従業員へ給与を支払っているかなどで扱いが変わるため、「法人か個人か」だけでは判定できません。
請求先が弁理士法人などの法人である場合も、個人の弁理士への支払いと同じとは限りません。請求書の名義、契約相手、実際の支払先を確認し、自社の経理担当者、税理士または所轄税務署に照会してください。
3. 源泉徴収税額の計算方法
同一人に1回で支払う対象額が100万円以下なら、税額は「対象額×10.21%」です。100万円を超えるときは「(対象額-100万円)×20.42%+102,100円」で計算し、1円未満を切り捨てます。
- 対象となる報酬が63,000円:63,000円×10.21%=6,432円
- 対象となる報酬が1,063,000円:(63,000円×20.42%)+102,100円=114,964円
請求総額から源泉徴収税額を差し引いた額を弁理士へ支払い、差し引いた税額は支払者が国へ納めます。弁理士側では、確定申告時に前払い済みの所得税として精算します。
4. 消費税・印紙代・実費の扱い
報酬と消費税が区分されていない請求書では、原則として消費税込みの支払額が源泉徴収の対象です。請求書で報酬額と消費税額が明確に分かれていれば、報酬額だけを対象にして差し支えないと国税庁は案内しています。
特許庁へ納める出願料・登録料など、依頼者が本来納付すべき手数料に充てる金銭であることが明らかなものは、弁理士報酬とは分けて扱います。交通費や宿泊費は、弁理士へまとめて支払うのか、支払者が交通機関などへ直接支払うのかでも取扱いが異なります。
請求書では「報酬」「消費税」「特許庁料金」「立替金」「源泉徴収税額」の区分を見てください。名目だけで判断せず、支払いの実質と国税庁の案内を照合します。
5. 納付期限と納期の特例
源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として報酬を実際に支払った月の翌月10日までに納付します。10日が土曜日、日曜日または祝休日なら、その翌日が期限です。e-Taxによる納付や、対応する所得税徴収高計算書を添えた納付方法があります。
給与の支給人員が常時10人未満で、税務署長の承認を受けた源泉徴収義務者には納期の特例があります。対象となる一定の報酬について、1月から6月の支払分は7月10日、7月から12月の支払分は翌年1月20日にまとめて納付します。人数要件を満たすだけで自動適用される制度ではありません。
期限を過ぎたときや過去の処理に誤りが見つかったときは、放置せず、所轄税務署または税理士へ相談してください。
6. よくある質問
Q1.源泉徴収税額は弁理士報酬の値引きですか?
値引きではありません。支払者が報酬から税額を差し引き、弁理士に代わって国へ納めます。
Q2.会社から弁理士へ支払う場合はどうなりますか?
個人の弁理士に支払う対象報酬なら、会社が源泉徴収するのが原則です。契約相手が弁理士法人の場合などは請求名義を確認してください。
Q3.個人の依頼者も必ず源泉徴収しますか?
必ずではありません。給与について源泉徴収義務を負わない個人が支払う報酬は対象外です。従業員への給与支払いなど、自分の状況を基に判定します。
Q4.特許庁へ納める印紙代にも10.21%を掛けますか?
依頼者が本来負担する特許庁料金に充てる金銭であることが明確なら、通常は弁理士報酬から分けます。請求書の記載を確認してください。
Q5.納付方法が分からないときはどこへ聞けばよいですか?
税額、納付書、納期の特例は、所轄税務署または税理士へ確認してください。請求内容の内訳は請求書を発行した弁理士へ確認できます。
まとめ
弁理士への支払いでは、源泉徴収義務者に該当するか、どの金額が報酬なのか、消費税と特許庁料金が区分されているかを順に確認します。対象なら税額を差し引いて弁理士へ払い、期限までに国へ納付します。請求書の内訳についてはお問い合わせフォームからもご相談いただけます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
参考資料
- 国税庁「No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2798.htm
- 国税庁「No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2110.htm
- 国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
- 特許庁「産業財産権関係料金一覧」 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/hyou.html
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