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令和元年意匠法改正の変更点|画像・建築物・内装と出願時の注意点

1. 令和元年改正は、2020年と2021年に分けて施行

令和元年の意匠法改正では、物品の形だけでなく、画像そのもの、建築物、内装にもデザイン保護の道が広がりました。スマートフォンの操作画面や店舗の空間など、物品単体では捉えにくかったデザインをどう守るか、という実務上の課題に対応した改正です。

法律は2019年5月に成立・公布されました。保護対象の拡大、関連意匠、存続期間などは2020年4月1日から、複数意匠一括出願や手続救済などは2021年4月1日から施行されています。すべてが2020年に始まったわけではありません。

出願の時期によって適用される制度が違うため、昔の登録も一律に新制度へ切り替わったとは考えないでください。以下では、画像・建築物・内装の3つを比較し、保護の対象や期限の条件を見ていきます。改正後にさらに変わった救済要件も区別して扱います。

改正全体の項目と施行日は、特許庁の令和元年意匠法改正特設サイトに掲載されています。実際の出願では、デザインの種類だけでなく、公開日、出願日、優先権を主張するかも確認します。

2. 画像は、操作や機能の表示との関係を見る

項目:画像
改正前(保護対象/保護対象外):物品に記録・表示されたもののみ
改正後(保護対象/保護対象外):操作画像・表示画像は、画像そのものも保護対象
説明:物品に記録・表示されていない画像でも、機器の操作に用いる画像や、機器が機能を発揮した結果として表示される画像は保護対象となった。アプリの UI やウェブサイトの画面も、この要件を満たすか確認する。

改正前は、画像を含む意匠を物品との関係で保護していました。改正後は物品に記録されていない画像も対象になりましたが、画像なら何でも意匠になるわけではありません。機器の操作に使う画像、または機器がその機能を発揮した結果として表示する画像であることが条件です。

アプリケーションのユーザーインターフェースやウェブサイトのレイアウトデザインも、操作や機能表示に当たる部分を具体的に検討します。画面をタップして操作するための配置と、画面内の写真・文章などのコンテンツは分けて見ます。単に見栄えのよいページだから登録できる、という制度ではありません。

デジタルサイネージ、VR・AR空間のインターフェースも同様です。サイネージに流れる広告映像そのものと、利用者が機器を操作する画面とは違います。VR・ARであっても、どの操作や機能のための画像なのかを説明できることが出発点になります。

特許庁の画像の保護対象に関する資料では、映画や風景写真など、内容自体を表現する画像と、機器の操作・機能に関わる画像を区別しています。ソフトウェア開発会社やWeb制作会社は、著作権の検討と併せて、意匠として出願する部分を特定します。

3. 建築物と内装は、何を一つのデザインとするか

建築物の外観

項目:建築物
改正前(保護対象/保護対象外):保護対象外
改正後(保護対象/保護対象外):保護対象
説明:不動産である建築物の外観デザインが保護対象となり、独創的な建築デザインの模倣が防止される。

不動産である建築物も意匠登録の対象になりました。店舗、オフィスビル、住宅などの外観を検討できます。設計した建物であれば自動的に権利が生じるわけではなく、出願して、新規性や創作非容易性などの登録要件を満たした場合に登録されます。

建築設計事務所が図面や完成予想図を外部へ出す場合には、公開と出願の順序を確認します。工事の完成を待ってから検討すると、先に公表したデザインとの関係が問題になることがあります。誰が出願するかについても、施主や設計者との契約を確かめます。

複数の物品などで構成する内装

項目:内装
改正前(保護対象/保護対象外):保護対象外
改正後(保護対象/保護対象外):保護対象
説明:複数の物品、壁、床、天井等から構成される空間全体(例:店舗の内装、ホテルのロビー)が一体として保護対象となり、空間デザインの価値が法的に認められた。

椅子やテーブルといった個別の物品に加え、壁、床、天井などを含む内装を、一つの意匠として扱えるようになりました。ただし、考え方や雰囲気だけを独占するものではありません。図面などで表した内装の具体的な形態が対象で、内装全体として統一的な美感を起こさせることなどの要件があります。

カフェやレストランの店内、ホテルのロビー、美容院やクリニックの待合室、ショールームの展示空間などが検討例です。これらの施設なら必ず登録されるという意味ではなく、何を構成物として含め、どのまとまりを保護したいかを図面で明確にします。

上のカードは改正前後の違いを大まかに示したものです。実際の審査では、特許庁の内装に関する資料にある統一的な美感などの条件も確認します。施設のコンセプトと、登録で保護する具体的な外観を取り違えないようにします。

4. 存続期間は出願日から25年、関連意匠は基礎意匠が基準

期間の起算日が変わった

2020年4月1日以降にした意匠登録出願では、原則として出願日から25年で意匠権が満了します。改正前の制度では、2007年4月1日から2020年3月31日までの出願について設定登録日から20年でした。さらに古い出願には別の期間があるため、登録番号だけでなく出願日を確かめます。

出願日から25年というのは、出願した瞬間に意匠権が発生するという意味ではありません。権利は設定登録で発生し、満了日の計算を出願日から行います。登録まで時間がかかった分だけ、登録後に残る期間も変わります。登録料の納付も別に管理します。

米国や中国を含め、各国の期間や起算日は同じではありません。日本の25年という数字を、そのまま外国の権利管理に使うことはできません。海外出願では対象国ごとに制度を確認します。

改良版を段階的に登録する関連意匠

関連意匠は、同じ出願人の類似するデザインを保護する制度です。改正前は本意匠の意匠公報が発行される前までだった出願可能期間が、基礎意匠の出願日から10年を経過する日前までに拡大されました。公報発行までの「約8か月」は当時の目安であり、固定の法定期間ではありません。

関連意匠にだけ似ているデザインも、その関連意匠を本意匠として出願できるようになりました。基礎となるデザインを出願し、市場に出した後の利用者の反応を見て改良し、その改良版から派生したバリエーションを作る、という開発の流れに対応します。

後のデザインを出すたびに10年が始まり直すわけではありません。最初の本意匠である基礎意匠を基準に期限を管理します。関連意匠の存続期間も原則として基礎意匠の出願日から25年で、後の出願日から新たに25年を得る制度ではありません。

出願人の同一性、本意匠との類似性、新規性などの条件は残ります。期間内ならどんな新製品でも追加できるわけではないため、特許庁の意匠制度の概要と出願履歴を照合します。

5. 一括出願と手続救済は、2021年施行分を確認

最大100件を一つの願書で提出

国内の複数意匠一括出願手続は2021年4月1日に始まりました。一つの願書で複数の出願をまとめて提出でき、電子出願の記載案内では意匠1から意匠100までを扱えます。

一括提出は、100件が一つの権利になるという意味ではありません。各意匠は別の出願として扱われ、審査や料金も各出願について確認します。共通事項の記載や提出・納付の管理をまとめやすくなる点が利点です。

ファッション、テキスタイル、インテリアなど、多数のデザインを同じ時期に出す場合には、提出漏れや日付の管理に役立ちます。国内の一括手続と、海外向けのハーグ国際出願は別の手続です。また、物品区分表の廃止も、意匠ごとに出願する原則をなくすものではありません。

応答期間の延長と、優先権の回復を区別する

拒絶理由通知への応答については、対象となる指定期間の経過後2か月以内に請求することで、応答期間を2か月延長できる扱いが設けられました。請求日から2か月ではなく、元の応答期限を基準とする延長です。審判段階など対象外の手続もあります。「どの期限でも、ミスに正当な理由があれば2か月追完できる」とまとめるのは不正確です。対象と請求方法は特許庁の応答期間延長の案内で確認します。

意匠の優先権主張では、通常の優先期間6か月を過ぎた場合の救済も導入されました。導入時の回復要件は「正当な理由」でしたが、その後の改正で、2023年4月1日以降に期間を徒過した対象手続は「故意によるものでないこと」へ緩和されています。令和元年改正の内容と、現在の要件を分けて読む部分です。

優先期間経過後2か月以内の出願に加え、回復理由書や回復手数料などの手続が問題になります。条件を満たせば自動で回復するという説明では足りません。特許庁の回復手続の案内に沿い、どの期限を過ぎ、いつ手続が可能になったかを具体的に確認します。

6. 部品に分けた模倣と、損害額の算定への対応

間接侵害の対象を拡充

改正前から、侵害品の製造にのみ使う専用品などに関する間接侵害の規定はありました。令和元年改正はそれを初めて作ったという話ではなく、完成品を部品に分けて製造・輸入する行為などへの対応を広げたものです。

改正で追加された類型では、登録意匠などの美感を生み出すために不可欠な部品等について、登録意匠またはそれに類似する意匠であることと、その意匠の実施に用いられることを知りながら、業として製造・譲渡等をする行為が問題になります。一般に広く流通する物品を除く条件もあり、部品を売ればすべて侵害になるわけではありません。

販売数量を基にする算定と、利益の推定は別の規定

損害額の算定では、権利者の生産・販売能力などの事情によって逸失利益として請求できない部分にも、実施料相当額を加えて請求する仕組みが設けられました。侵害品の数量と権利者側の利益を基に算定する意匠法39条1項の見直しです。

侵害者が得た利益を権利者の損害と推定する同条2項とは区別します。「改正で侵害者の利益全体を請求できるようになった」と一律に説明することはできません。具体的な売上、利益、実施能力や販売できなかった事情などに応じた検討になります。

これらは民事上の権利行使と損害賠償の説明です。刑事罰の判断まで自動的に決まるものではありません。制度の概要は特許庁の意匠権侵害への救済手続を参照し、実際の案件では相手の商品、登録内容、製造・販売の資料をそろえて検討します。

7. 開発・公開・出願の予定を一緒に考える

製品開発の初期段階から、外観、操作画面、店舗内装のうち何を守るかを選んでおくと、公開後に出願の検討が始まる事態を避けやすくなります。出願のための図面と、販売用の画像では必要な情報が違うこともあります。

改良を繰り返す製品では、基礎意匠と関連意匠の関係を記録し、公開したデザインと今後出すデザインを比較します。権利の対象は具体的な形態なので、単に新しいシリーズ名を付けたから追加登録できるわけではありません。商品名やロゴには商標の検討も加わります。

ご相談の際は、図面や画面案、公開の有無と日付、既存の出願番号、予定する販売国をご用意ください。お問い合わせフォームで意匠の相談であることをお知らせいただければ、出願対象と手続を確認できます。

8. 令和元年意匠法改正についてよくある質問

Q1. Webサイトのデザインなら、すべて意匠登録できますか?

画像の種類によります。機器の操作に使う画像か、機器が機能を発揮した結果として表示する画像かを確認します。写真や広告などのコンテンツ自体とは区別します。

Q2. 改正前に出願した意匠も、すべて25年になりますか?

なりません。出願時期に応じた制度が適用されます。2020年4月1日以降の出願は原則として出願日から25年ですが、それ以前の出願は別に確認します。

Q3. 関連意匠を出すたびに、期限は10年延びますか?

延びません。基礎意匠の出願日を基準に、10年を経過する日前までという期限を管理します。新たな関連意匠の出願日から数え直す制度ではありません。

Q4. 一括出願にすれば、100件分が1件の料金になりますか?

なりません。一つの願書で複数の出願を提出する手続で、各意匠についての出願・審査・料金は別に扱われます。

Q5. 期限を過ぎても、2か月以内なら必ず救済されますか?

必ずではありません。拒絶理由への応答期間延長と優先権の回復では、対象も要件も違います。過ぎた期限と手続の種類を特定し、現行の条件に沿って確認します。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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