(1)お米の味を総合的に判断「食味ランキング」
(1−1)専門家が代表的な品種をランク付け
毎年、収穫したお米の味を総合的に判断した「食味ランキング」が発表されていることをご存知でしょうか?
これは、質のよい米づくりや消費の拡大を目指し、第三者検定機関である日本穀物検定協会が行っているものです。1971年産米の調査が始められてから毎年実施され、2016年産米の調査で46回目を迎えました。
このランキングは、全国の代表的な品種について、基準米(複数産地コシヒカリのブレンド米)と比較評価した上で決められています。
20人の専門評価員が、炊き上がった白飯の「外観、香り、味、粘り、硬さ、総合評価」の6項目について判断し、良質なものから、「特A」、「A」、「A’」、「B」、「B’」の順でランク付けするのです。
2016年産米では、141品種について調査が行われ、そのなかの44品種が「特A」ランクに選ばれました。
(1–2)「特A」ランクを獲得した品種の商標登録
長い間、日本におけるお米の作付面積シェア1位を誇ってきた品種は、「コシヒカリ」です。おいしいお米の代名詞として、多くの人に親しまれてきました。
現在は、それを追いかけるようにシェアを伸ばし、高い評価を受けている品種がいくつも存在しています。
ここでは、「特A」ランクに選ばれた品種から、商標として登録されているものをいくつかご紹介します。すでに多くの支持を得ている品種なので、食卓に上ったこともあるかもしれませんね。
特別栽培米 つや姫 TSUYAHIME(商標登録 第5448363号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
- 権利者:山形県
- 出願日:2009年6月26日
- 登録日:2011年11月4日
区分は以下の通りです。
- 第30類「つや姫種の米、つや姫種の米を使用した即席菓子のもと、つや姫種の米粉、つや姫種の米を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・カプセル状の加工食品」
- 第31類「つや姫種の籾米、つや姫種の米ぬか、つや姫種の米を主成分とする飼料」
秋田県大館産 あきたこまち(商標登録 第5394494号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
- 権利者:あきた北農業協同組合
- 出願日:2010年8月10日
- 登録日:2011年2月25日
区分は以下の通りです。
- 第30類「秋田県大館産のあきたこまち米」
ゆめぴりか(商標登録 第5199079号)
- 権利者:ホクレン農業協同組合連合会
- 出願日:2008年4月28日
- 登録日:2009年1月23日
区分は以下の通りです。
- 第30類「菓子およびパン、穀物の加工品、ハンバーガー、べんとう、米」など
- 第33類「日本酒」
(2)新たに市場に登場するブランド米
(2–1)多くのブランド米が開発される背景とは?
そもそもブランド米とは、特定の産地・品種のなかから、高い品質を誇り、農作物検査法に基づいて銘柄として登録されたものを指しています。
近年、このブランド米が各地で開発されている背景には、消費者の深刻な「コメ離れ」という状況があります。日本の食を支え続けたものでありながら、米の消費量自体は、年々、減少しています。そのため、新たな商品を投入することで消費者の関心を引き、販売促進につなげたいという狙いがあります。
また、2018年度には、国が補助金を出して米の作付けを制限してきた減反政策が廃止されます。そのため、高価格帯の期待できるブランド米の開発は、生産者の収入を確保するためにも、必要とされているのです。
(2–2)ブランド米の商標登録
2017〜2018年にかけても、市場には新たなブランド米が登場します。
ここでは、そのなかからすでに商標登録されているものをいくつかご紹介します。
新之助(商標登録 第5893508号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
- 権利者:新潟県
- 出願日:2016年4月20日
- 登録日:2016年11月4日
区分は以下の通りです。
- 第30類「米、玄米、脱穀済みの大麦、米の加工品、その他の穀物の加工品」など
- 第31類「米の種籾、その他の種子類、籾米、あわ、きび」など
金色の風(商標登録 第5906697号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
- 権利者:岩手県
- 出願日:2016年8月26日
- 登録日:2016年12月16日
区分は以下の通りです。
- 第30類「菓子、パン、サンドイッチ、弁当、米」など
- 第31類「 籾米、種子類、苗、苗木、飼料」など
- 第33類「泡盛、焼酎、白酒、清酒、みりん」など
- 第44類「苗の育成、苗木の仕立て」
雪若丸(商標登録 第5981196号)
- 権利者:新潟県
- 出願日:2016年11月24日
- 登録日:2017年9月15日
区分は以下の通りです。
- 第30類「弁当、食用酒かす、米、脱穀済みの大麦、食用グルテン」など
- 第31類「種子類、苗、籾米、米ぬか、米を主成分とする飼料」
(3)おいしいお米選びの味方「お米マイスター」
(3–1)職業経験のある専門家のアドバイス
お米は、もっちりしたものやあっさりしたものなど、品種によってさまざまな味わいがあります。種類がふえたことで、各々の好みや料理に合わせたお米を選べるようになりました。
けれど、その一方で、違いがわからず迷ってしまう消費者が少なくない、という問題も生じています。
そんなときに強い味方となってくれるのが、「お米マイスター」です。
これは、日本米穀小売商業組合連合会の認定する資格で、お米に関する豊富な知識をもち、その特性や魅力を消費者に伝えることのできるお米選びの専門家です。
認定試験を受けられるのは、「お米に関係した専門職経験がある人のみ」とされているため、知識と経験に裏打ちされたアドバイスをもらうことができます。
この資格も商標として登録されているんだよ。
(3–2)「お米マイスター」の商標登録
「お米マイスター」は、日本米穀小売商業組合連合会によって商標登録されています。
お米マイスター 日本米穀小売商業組合連合会(商標登録 第4702658号)
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
- 権利者:日本米穀小売商業組合連合会
- 出願日:2002年10月4日
- 登録日:2003年8月22日
区分は以下の通りです。
- 第41類「お米の銘柄に関する知識の教授、お米の加工技術に関する知識の教授、お米の銘柄に関する教育・訓練、セミナーの企画・運営または開催」
「お米マイスター」の厳選した商品を検索
「お米マイスター」の活動やお米の魅力について、もっと知りたい場合は、「お米マイスター全国ネットワーク」のホームページをみてみましょう。ここでは、おいしいお米に関する情報が数多く掲載されています。
特に、「お米探しナビ」ページでは、「お米マイスター」が厳選した商品の検索ができます。
お米の種類、栽培方法、生産地など、それぞれのこだわりから検索可能であり、取り扱う店舗を調べられるため、手軽においしいお米を手に入れることができます。
チェックしてみましょう
「お米マイスター全国ネットワーク・お米探しナビ」
http://www.okome-maistar.net/navi
(4)地域団体商標となったお米とは?
(4−1)自ら守り、育てる地域ブランド
2006年に始まった地域団体商標制度によって、地元の人々が、自分たちの地域ブランドを守り、育てていくことが可能になりました。
「地名+商品内容」で商標登録ができるため、地域の活性化に役立てることができます。
この地域団体商標でも、各地のお米が商標登録されています。
各地の農協によって商標登録
東川米(商標登録 第5491588号)
- 権利者:東川町農業協同組合
- 区分:第30類「北海道上川郡東川町産の米」
北海道米(商標登録 第5594136号)
- 権利者:ホクレン農業協同組合連合会
- 区分:第30類「北海道産の米」
黒部米(商標登録 第5074774号)
- 権利者:黒部農業協同組合
- 区分:第30類「黒部産の米」
京都米(商標登録 第5070950号)
- 権利者:全国農業協同組合連合会
- 区分:第30類「京都産の米」
東条産山田錦(商標登録 第5264709号)
- 権利者:みのり農業協同組合
- 区分:第30類「兵庫県加東市の東条地域で生産された醸造用の山田錦の玄米」
阿波山田錦(商標登録 第5264987号)
- 権利者:阿波町農業協同組合
- 区分:第30類「徳島県阿波市阿波町産の山田錦米」
玖珠米(商標登録 第5549584号)
- 権利者:玖珠九重農業協同組合
- 区分:第30類「大分県の玖珠郡で生産された米」
ごはんのおいしさを伝える「稲作戦隊おこめんジャー」
JA全農山形には、山形県産のお米のPRと、子どもたちの食育に活躍するオリジナルキャラクターがいます。メンバーは、リーダーの「はえぬきん」、ムードメーカーの「こしひかりん」など、いずれも県内で生産されるお米の銘柄にちなんで命名されています。
「稲作戦隊おこめんジャー」のデビューは2014年。
その後、全国農業協同組合連合会により、2015年3月10日に商標登録の出願が行われ、同年7月31日に商標として登録されています(商標登録 第5782083号)。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
(5)まとめ
現在、ブランド米の数は、726銘柄にも上り(2016年産米登録時点)、今後、ますます激しい競争になると予想されています。最高ランクの「特A」をとっても、それだけで生き残っていくことは難しい状況です。
そのため関係者たちは、味わいはもちろん、名称やパッケージなどについて、さまざまな工夫を凝らしています。消費者に選ばれ、食卓の定番となるには、他者と混同されることのない強みが必要なのです。
商標は、独自の魅力を消費者にわかりやすく伝えるためにも、重要なものです。
そして、ブランドの価値を高め、保護し続けるために、欠かせないものとなっています。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247