索引
(1)ロゴは文字と図形で商標登録が可能
記号・図形商標(ロゴ)
基本構成として文字そのものがデザインされた商標をロゴ商標とよびます。デザインのない文字商標の場合は説明文章の他の文字に埋もれてしまうため視覚的に目立ちにくいのですが、デザインがあるロゴの場合は多くの文字や他の情報要素があってもひと目でどこのブランドのロゴが認識されるメリットも生じます。
またデザイン文字と呼ばれる飾り文字で形作られた商標の外に、文字の抽象化が進みすぎて文字として認識可能な要素がほとんど消えている図形の商標とか文字が最初から全くない図形だけのロゴマークも慣用的にロゴ商標と呼ばれます。
ロゴ商標の例
特許庁の商標公報より引用
文字商標
文字商標は文字のみで作られています。ロゴ商標は目立つ反面、一つのブランドと認知されて消費者に浸透するのに時間がかかるデメリットが生じます。
また文字商標は直接発音可能なため、口コミのルートに乗りやすいメリットも生じます。
文字商標は短期決戦用、ロゴ商標は長期戦用と区別して考えるとわかりやすいです。
文字商標の例
特許庁の商標公報より引用
ロゴと文字の複合
ロゴ商標は文字とロゴの両方で形成可能です。
文字商標とロゴ商標のメリットとデメリットが相互に打ち消し合う商標になります。
複合商標の例
特許庁の商標公報より引用
(2)ロゴ商標の登録形式
ロゴ商標と文字商標を一緒に登録
メリット
ロゴ商標と文字商標を併せて登録すると費用を低く抑えられるメリットが生じます。両者を一緒にしたケースではロゴと文字とを一つにまとめたロゴ商標に対して、一つの商標権が生じます。
デメリット
ロゴ商標と文字商標を併せて登録すると、ロゴ商標が文字商標により限定されると解釈可能です。ロゴ商標部分についてかなり類似しても、文字商標部分が全く異なるケースでは、相手より文字部分が相違するから商標権侵害と関係ないと反論されるデメリットが生じます。
またロゴ商標と文字商標を併せて登録すると、ロゴ部分のみを使っていたり、文字部分のみを使っていたりしても、ロゴ商標と文字商標を併せて使わないと、日本国内で三年間登録した商標そのものを使っていないことを理由に不使用取消審判の攻撃を受けることもあります。
国内で三年間、ロゴ商標と文字商標を併せて使っていないと、自動的に商標登録は取り消されませんが、不使用が続くと第三者からの不使用取消請求に伴い、権利がなくなるケースも生じます。
ロゴ商標と文字商標を別々に登録
メリット
ロゴのみ、文字のみを登録すれば、ロゴ商標と文字商標を併せて登録したケースと較べて、ロゴは似ているが文字部分が違うから全体として似ていない等の侵害者の反論を封じ込めることができます。
つまり、別々に登録しておけば、ロゴ商標と文字商標とが互いに権利範囲限定の原因となるのを防止可能です。
別々の対応により、ロゴ商標と文字商標との別々の商標権に対し、最も広く権利範囲を確保可能です。
またロゴ商標と文字商標をワンセットで使う制限もなく、商標の使用態様が柔軟になります。
デメリット
やはり料金面が問題になります。
ロゴ商標と文字商標とを分け、別々に商標権を得たケースでは、二つの商標権が生じて、料金が二倍です。
カラーかモノクロか
ロゴ商標を商標登録する際は、カラーにするかモノクロにするか悩むことがあると思います。
商標権の効力の範囲は似た商標に達します。色は商標の類否判断上、重要度が低いことから単なる色違いは通常似ている範囲に含まれます。
このため色違いのものを全て登録する必要はありません。
実際には、ロゴ商標の中でも使用頻度が高い色彩を選択するよよいです。
またロゴ商標の中でカラーが望まし場合は、事業ブランドと色彩とを結びつけたい場合です。
企業によっては色のイメージとブランドとを結びつけて、ある色をみれば需要者がこちらのブランドを思い出すようにしているところもあります。
商品や役務が色彩により識別できる場合には、色彩のみの商標も登録できます。
ロゴ(図形)だけで登録も可能
ロゴ商標は、文字、記号、色彩などなしで登録可能です。
図形だけのロゴ商標を登録したケースではそのロゴ商標の読み方は選択不可です。商標公報に商標の呼び方の情報が載っていますが、これは申請者が指定できるものではなく、検索などに利用するために特許庁側で付けているもので、権利に関係ありません。
図形のみのロゴ商標の登録は、ロゴ商標を長期に渡ってじっくり育てていく方針の方に適しています。図形のみのロゴ商標は消費者に浸透するまでに時間を要しますが、一度覚えて貰えば大きな武器になります。
(3)登録前に類似する商標を検索
ロゴ商標の検索
ロゴ商標を特許庁に出願申請を行っても、類似の商標が既に取られているとその後に登録できません。時間と費用を無駄に使わないように事前にロゴ商標を検索しておきます。
ロゴ商標は特許庁ホームページで検索できます。
まず特許庁のホームページから特許情報プラットフォームを開きます。
図1 ロゴ商標の検索ができる特許庁情報プラットフォーム
次に図形等商標検索のページを開きます。図形ロゴの検索では図形等分類を入れます。
図形等分類は、図1の赤丸で囲んだ「図形等分類表」を選択すれば開きます。
図2 ロゴ商標の図形等分類のコードを選択する
今回は例示として「打出の小槌(コード14.7.1.01)」を選択します。図2で図形等分類のコードを選択してから「14.7.1.01の打出の小槌」を押すと、図形等分類のコードが図2の図形等分類のコードの入力欄に自動的に入ります。
図3 図形等分類が入力されたら検索実行
図3のように図形等分類を入力できたら検索ボタンを押します。
すると222件のロゴ商標の検索結果が表示されます。
図4 ロゴ商標の図形商標の一覧が表示される
図4の青い登録番号の部分をクリックすると登録されているロゴ商標の詳細を確認できます。
(4)登録する際に注意することは?
ロゴ商標の商標登録時点でチェックが要求される事項を洗い出します。
以前、東京五輪エンブレムのデザインで盗用疑惑が問題になったことがありますが、独自に作ったロゴ商標であってもたまたま他人の作人に似ていた場合にはあらぬ疑惑を呼びます。
有名なものに類似したデザインでは権利侵害問題の表面化が浮上しないケースでも、こちらの商標ロゴを需要者が有名な既にあるデザインと混同すると、需要者のこちらの認知度をあげることが困難になります。他社のデザインと紛らわしいものは止めます。
ロゴの著作権の所在のチェック
商標ロゴの作成を頼んだら、ロゴの著作権の所在のチェックします。ロゴ素材の中に商用利用が制限されているものや、他人の著作物が無断で使われていないか確認します。
デザイナーは他人のデザインを盗用することはありませんが、東京オリンピックエンブレムのデザイン盗用疑惑で問題とされたように、デザインの創作過程でチェックが漏れることもありえます。後から問題とならないように、デザインの創作過程も含めてチェックします。
現在の著作権の確認
ロゴ商標が著作物にあてはまるケースでは、このロゴ商標の著作権はロゴ商標を初めて創ったデザイナーかデザイナーの所属法人が持っています。
ところがこの著作権は他人に移転することができます。もちろん著作権の移転後は、元の著作者には著作権が残っていないことになります。
商標ロゴのデザイナーに著作権がない、というは盲点になりやすいです。
しかも著作権が移転されているかどうかは、外部から分からないケースがほとんどです。ロゴ商標の創作を依頼したケースでは、著作権をこちら以外に譲渡していないか、デザイナーとの契約内容の確認が必要です。
無料素材を使っている場合
無料で素材を使えるといっても、無制限で使えるわけではありません。利用規約によって商用使用が制限されている場合があります。
また素材やフォントの中には権利取得について制限がある場合もあります。
後でトラブルにならないように、ロゴ商標の制作前に担当者やデザイナーと著作権に関して話し合うことが重要です。
ロゴ商標の扱いについては弁理士に相談することがよいでしょう。
(5)まとめ
ロゴ商標の場合、デザインが変更される可能性がある場合には、ロゴ商標は登録せず、文字商標を選択するのがよいです。
この一方、自由に使えるロゴ商標があると、ワンポイントマークとしてビジネスのシーンで使う場面が多くあり、より活動しやすくなります。
素敵なロゴ商標ができた場合には権利取得に向けて専門家と相談するのがよいでしょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247