周知商標と著名商標の違いとは?
商標は、長く使い続けることでその価値が成長します。
その過程で、商標の知名度に応じて呼び名が変わることをご存知でしょうか?大きく分けると「周知商標」と「著名商標」の2つのステージがあります。
1. 周知商標とは?
周知商標は、広い範囲でその商標が知られるようになった状態を指します。具体的には、隣接する都道府県程度の地域で知れ渡るケースもありますが、通常は日本全国に認知されている商標を指すことが一般的です。
例:地域で有名な飲食チェーンが全国的に展開を広げ、名前を聞いた多くの人がそのブランドを認識できるようになった場合。
2. 著名商標とは?
著名商標は、周知商標のさらに上のレベルに達した状態を表します。商標が使用される商品やサービスに依存せず、その商標自体が「誰のものか」を多くの人が即座に識別できるほどの認知度を持つ場合に、「著名商標」として評価されます。
例:企業のロゴや名前を見るだけで、その商品やサービスに触れたことがなくても「このブランドだ」と分かる状態になった場合。
違いを簡単にまとめると
- 周知商標:ある程度広い範囲で知られている商標(主に全国レベル)。
- 著名商標:商品やサービスの具体的な内容を超えて商標自体が広く認識される状態。
商標の成長はブランド力そのものの向上を意味します。あなたの商標も「周知商標」から「著名商標」へ成長する可能性を秘めています。適切な保護と戦略的な使用を行い、ブランド価値を最大限に高めましょう!
周知商標に成長するための過程とメリット
周知商標への道のりは険しい
商標が日本全国で周知される、あるいは著名性を持つようになるには、並々ならぬ努力が必要です。これは一朝一夕で達成できるものではなく、長い年月をかけた積み重ねの結果です。
- 継続的な使用:商標をコツコツと使用し続けること。
- 大規模な宣伝:多額の広告費を投じ、広範囲に知名度を広げる。
- ユーザーからの支持:商品の品質やブランドイメージを高め、消費者からの信頼を築く。
これらを地道に続けた一部の商標だけが、周知商標という地位にたどり着くことができます。
周知商標が得られるメリット
日本全国区で知名度を獲得した商標には、商標法や不正競争防止法による優遇措置が与えられます。以下はその具体例です。
1. 商標登録されていなくても守られる
通常、商標の登録は「出願日の早い順」で審査されます。しかし、仮に周知商標が商標登録されていなくても、同一または類似する商標が他者によって出願された場合、その周知商標の存在が審査の過程で考慮され、他者の登録を阻止することが可能です。
2. 一般名称でも登録が可能
通常、商品の種類や内容を表すような一般名称は商標登録が認められません。しかし、既に周知商標として広く知られている場合、その例外として登録が認められるケースがあります。
周知商標のメリットを活用するために
周知商標になると、単にブランド力が高まるだけでなく、法的にも他者からの模倣や不正使用を防ぐ強力な武器となります。
この特典を最大限に活用するためには、商標の価値を保つための管理と、継続的なブランド戦略が欠かせません。
あなたの商標も、コツコツと育てればいずれ「周知商標」に成長するかもしれません。そのための第一歩を踏み出しましょう。
著名商標に成長するための過程とメリット
著名商標の特性と課題
著名商標とは、商品やサービスと切り離しても、その商標を見ただけで「誰のものか」を一般の人が認識できるほどの知名度を持つ商標を指します。
しかし、この高い認知度が故に、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 模倣や悪用のリスク:商標を模倣されることで、ブランドの信用が損なわれる。
- 信用のタダ乗り:他人が商標の信頼性を利用して利益を得る行為。
通常、商標法では商標が特定の商品やサービスに使用されることを前提に保護が提供されますが、著名商標はその枠を超えた問題を抱えることがあるのです。
著名商標の保護を強化する「防護標章登録」
こうした課題に対応するため、商標法には「防護標章登録」という特別な制度が用意されています。この制度は、商標が実際に使用されない商品やサービスの範囲であっても、著名商標を保護する仕組みです。
防護標章登録の特徴
1. 使用の意思が不要
通常の商標登録では、出願時や登録後に商標を使用する意思や実績が求められます。防護標章登録なら、使用しない商品やサービスに対しても登録が可能です。
2. 広範囲な保護
登録商標が使用されない範囲であっても、商標の信用やブランド価値を守るために他人の使用や登録を阻止できます。
なぜ防護標章登録が必要か?
著名商標の高い認知度は、その価値の裏返しでもあります。せっかく高い認知度を得たのに、著名商標に対する模倣や信用のタダ乗りを許してしまうと、商標権者に大きな損害を与えるだけでなく、消費者を誤認させるリスクも生じます。
防護標章登録によって、著名商標はそのブランド価値を維持し、第三者による不正使用から効果的に守ることができるのです。
まとめ
周知商標や著名商標に成長することで得られる保護は、通常の商標登録を超えた範囲に及びます。
特に著名商標になれば、「防護標章登録」を活用することで、商標の使用予定がない領域においてもブランド価値を守ることが可能になります。これは著名商標の地位を守る一つの手段と言えます。
商標が有名になればなるほど、法的保護が厚くなります。商標が有名になるかどうかは、商標を使用し続けることで商標と共に蓄積される信用の度合いに依存します。
多くの方に自社の商標を知ってもらえるよう、どんどん使用していきましょう。
ファーイースト国際特許事務所弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247