1.商標登録出願の審査について
商標登録審査の現状と選べる2つのコース
商標登録出願をすると、特許庁での審査を経て登録されます。この審査には、以下の2つのコースが用意されています。
1. 通常審査コース
- 審査結果通知までの期間:出願から約6ヶ月
- 審査結果として、「登録査定」または「拒絶理由通知」が届きます。
2. 早期審査コース
- 短期間での審査:特許庁への申し出が必要ですが、認められると約2ヶ月で審査結果が届きます。
早期審査コースは、特定の条件を満たした場合に利用できる特別な手続きで、出願から結果までが通常の半分以下の期間となるため、急ぎの案件に適しています。
ただし、これまで利用可能だった「ファストトラック審査」は、現在特許庁で休止されています。
過去と現在の審査期間の変化
2020年当時、通常審査の結果を受け取るまでに10〜11ヶ月を要することもありました。
しかし、現在では審査体制の改善により、約6ヶ月で結果が得られるようになっています。これは特許庁が出願件数の増加に対応するための取り組みを進めた成果です。
出願件数の推移
国内の商標登録出願件数は、2022年には約17万件に達しましたが、2024年は8月時点で約10万件と、減少傾向が見られます。この減少が今後審査のスピードにどのような影響を与えるか注目です。
商標登録を急ぐ方へ
現在、特許庁におけるファストトラック審査は休止中ですが、早期審査コースは利用可能です。ビジネスのタイミングを逃さないためにも、審査スケジュールを考慮して出願を進めましょう。
2.ファストトラック審査とは?
特許庁では、商標登録出願件数の増加にも対応し、迅速かつ的確な審査を実現するための施策として、試験的に「ファストトラック審査」を導入しました。この制度では、特定の条件を満たす出願に対し、通常審査よりも約2ヶ月早く結果が得られる仕組みが提供されていました。
ただし、現在この制度は停止中であるため、利用できない状況です。
ファストトラック審査の対象条件
ファストトラック審査を利用するためには、以下の要件を満たす必要がありました。これにより、全ての出願が対象になるわけではなく、一定の制限が設けられていました。
要件1:指定商品・役務のリスト要件
出願時に指定された商品や役務が、特許庁の定めたリストに掲載されている必要があります。このリスト外の内容を含む場合、対象外となります。
要件2:補正の禁止
出願から審査が始まるまでに、指定商品や役務の補正が行われていないことが条件です。
たとえば、出願後に記載ミスに気づいて修正した場合、その時点でファストトラック審査の対象外となります。そのため、出願前の段階での慎重な検討とチェックが求められます。
要件3:2018年10月1日以降の出願
この制度は2018年10月1日以降に行われた出願にのみ適用されるため、それ以前の出願は対象外です。
要件4:対象外となる商標のタイプ
特定の商標や出願タイプでは、この制度を利用できません。以下が代表例です:
- 音響商標
- 色彩のみの商標
- 国際商標登録出願(日本を指定したマドプロ出願)
ファストトラック審査の現状
近年、国内の商標出願件数が減少傾向にあり、通常審査でも十分に短期間で結果を得られるようになったことから、ファストトラック審査は停止中となっています。これにより、現在は通常審査や早期審査の利用が主流となっています。
ファストトラック審査制度がなくなると審査は遅くなる?
過去にこの制度を利用したい場合、特に出願前の準備段階が重要でした。指定商品や役務の選定、記載ミスの防止など、制度を最大限活用するためには専門家のサポートが鍵となります。
現在は制度停止中ではありますが、商標登録をスムーズに進めるための事前準備は依然として重要です。
商標登録を考えている方は、ぜひ弁理士・弁護士の専門家に相談してみてください!
3.まとめ
ファストトラック審査は停止中ですが、早期審査など他の選択肢もあります。ビジネスのスピードに合わせた商標登録を目指すために、自分に最適な方法を見つけましょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247