美川憲一さんが前プロダクションから2億円以上の巨額訴訟を起こされている問題で、フジテレビの「ノンストップ!」から取材があり、その内容が平成25年12月16日に放送されました。
前プロダクションから起こされた訴訟は、美川憲一さんに芸名の使用をさせないことも含まれますが、このような請求は可能なのでしょうか。
まず商標権ですが、現時点では特許庁に「美川憲一」の文字だけの商標は登録されていません。ですので、今回の訴訟は商標権とは直接関係がないことになります。
ではこれから特許庁に商標登録出願をして、前プロダクション側が「美川憲一」の商標について権利が得られるか、というとそれも難しいと思います。
というのは、特許庁は「美川憲一」の商標が出願されると、美川憲一さんの許可を得ているかどうかを確認するからです。
2億円を払え、と言われた後に美川憲一さん側が前プロダクション側に商標権を譲り渡すようなことをするとは常識では考えられませんので、今から商標権を取得するのは難しいと思います。
また著作権では芸名を保護することが原則できません。芸名そのものは著作物に該当しないと考えられるからです。
仮に「美川憲一」という芸名を使用することができなくなるとすれば、例えば、前プロダクションとの間で「美川憲一」という芸名を前プロダクションの許可なく使用しないという契約に美川さんが承諾している場合です。
ところがこのような契約の存在は部外者は伺い知ることができません。一般にはこのような契約書が公開されることはないからです。
ですので、本当のところは訴状を見てみないと何ともコメントすることができないのが実情です。
一般論としては、実際に2億円もの額を求める訴訟を起こす以上は、それ相応の証拠が存在します。証拠も一切ないのにそのような訴訟を起こすことは、代理人として弁護士が付いているのであれば想定することができないからです。
しかし、全ては当事者のみが知る世界のことですので、これからの裁判の中で事実関係が徐々に明かになっていくものと思われます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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