パロディ商品を販売して逮捕される境界線

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「これ、パロディだからセーフでしょ?」
観光地や繁華街で、つい笑って手に取りたくなる”ネタTシャツ”。けれど現実には、パロディのつもりでも「商標法違反」で逮捕されるケースが発生しています。厄介なのは「売った」だけでなく「売る目的で持っていた」場合でもアウトになり得る点です。

2016年10月の大阪ミナミでの一斉摘発を受け、フジテレビ「とくダネ!」から当時取材を受けたことがあります。当時と今とで空気は変わったのか、そして何が「一線」なのか。今回、当時の内容をベースに、近年の逮捕事例まで調査した事例も踏まえて、内容をアップデートしてお伝えします。

1. 「NICE」「ajidesu」でも逮捕。2016年大阪ミナミの一斉摘発が突き付けた現実

2016年10月、大阪・ミナミのTシャツ販売店などが商標法違反の疑いで一斉捜索を受け、店長ら13人が逮捕されました。当時問題になったのは、たとえばナイキ風の意匠に「NICE」「NAMAIKI」と入れたもの、アディダス風の意匠に「ajidesu」と入れたものなど、いわゆる”ロゴいじり系”のパロディTシャツです。

報道によると「一枚3000円程度で人気だった」とされていて、”悪質なコピー品(スーパーコピー)とは違うノリ”として流通していた側面がありました。これが本件の怖いところです。

本件の摘発は「笑いを取り締まった」という単純な話ではありません。

商標は単なる飾りではなく、出所(どこの会社の商品か)を示し、品質を保証し、広告として機能することで、ブランドの信用が積み上がっていきます。著名ブランドのロゴを”笑い”の形で借りる行為は、その信用の上にタダ乗りし、場合によっては品質保証やブランドイメージを傷つけると評価され得ます。これが、商標法・不正競争の世界で真正面から問題になるポイントです。

なお商標権を侵害した場合の罰則は、拘禁刑最高10年、法人の場合の罰金は最高3億円です。

2. 「パロディなら許される?」への答え

結論から言うと、日本の法律には”パロディだからOK/NG”を直接に書いたルールがありません。パロディは免罪符ではありません。

現実の判断は、パロディというラベルではなく、既存の法律に当てはめて行われます。商標法では、登録商標またはそれに類似する表示を、指定商品・役務の範囲で使用していないかが問われます。不正競争防止法では、著名な表示へのただ乗りや混同惹起などに当たらないかが検討されます。著作権法では、キャラクター画像・イラスト等の複製や改変に当たらないかが判断の対象となります。

ビジネスの現場で一番”事故率”が高いのが商標です。「似せて笑いを取る」ほど、商標の類似性が高まりやすいからです。パロディは「元ネタが分からない」と成立しません。企画として成立させようとするほど、法的には危険側へ寄りやすい構造になっています。ここが、パロディ商品の難しさです。

3. いま改めて重要な「商標法は非親告罪」という事実

商標法は著作権とは扱いが異なります。商標権侵害は、権利者の告訴がなくても(非親告罪として)捜査が進む可能性があるため、「相手が怒ってないから大丈夫」「連絡が来てないからセーフ」という発想は危険です。

一方で著作権は、長らく「親告罪」が基本でした。近年は制度が少し複雑になっています。2018年の改正などで、一定の要件を満たす海賊版等については著作権侵害も一部”非親告罪化”されています。

ただ、同人誌やパロディは一般にその枠外と説明されることが多いのですが、「じゃあパロディは著作権的には大丈夫」と短絡するのも危険です。そもそも商標・不正競争防止法でアウトになり得るからです。

4. 「売ってない」でも安心できない。販売目的所持・転売が”地雷”になる理由

「販売したらアウト」は直感的に分かります。現場で怖いのは、”販売目的で持っていた”と見られるケースです。

2025年9月の報道では、万博公式キャラクター「ミャクミャク」を無断でプリントしたTシャツを販売目的で所持していた疑いで逮捕されました。しかもミャクミャク偽物グッズでの逮捕者は初だと伝えられました。「売ったかどうか」だけではなく、売るために持っている状態が問題化し得るという点が重要です。

店や倉庫に「売れる状態」で侵害品が積まれていれば、言い訳として「売るつもりはなかった」が通りにくいのが実務の肌感です。そして本人に悪意がなくても巻き込まれる可能性があります。極端に言えば、事情を知らないアルバイトが店番中に捜索を受ける、といったリスクすらゼロではありません。

「買っただけなら逮捕されない」と言われがちですが、ここも半分正解で半分危険です。転売目的での所持や出品は一気に話が変わります。いまはフリマ・オークションで一瞬で全国流通します。「仕入れた時点で詰む」設計になりやすいのです。

5. 境界線はどこにある?「フランク三浦」が示した”例外”と、例外に寄りかかる危うさ

パロディの話になると出てくるのが「フランク三浦」の件です。

これは少なくとも一時点で、商標登録の有効性が争われ、知財高裁で有効と判断されたことで、「パロディでも勝てることがある」という印象を残しました。

ただ、ここで注意したいのは次の2点です。

第一に、あれは「パロディ一般がOKになった」事件ではありません。争点はかなり技術的で、類似かどうか、混同のおそれがあるかといった要素を、個別事情で丁寧に見ています。つまり「これに似ていれば勝てる」という万能レシピにはなりません。

第二に、仮に商標登録の場面で一部有利な判断が出たとしても、不正競争防止法や別の争点が残ることがあります。

パロディは常に”綱渡り”で、成功体験の切り抜きが独り歩きすると、次の企画で事故ります。ここを「一回勝ったから、ウチもいける」で再現しようとするのは危ない。

6. いま事業者が押さえるべき「3つの現実」

最後に、調査の過程で痛感した”実務の現実”を、あえて刺さる言い方でまとめます。

一つ目は、「パロディです」と書いても、免罪符にはならないということです。商標の世界で問われるのは、ラベルではなく、外観・称呼・観念、そして取引の実情です。「元ネタが分かる=似ている」設計の時点で、危険側に寄っている可能性が高い。

二つ目は、「みんな売ってるから大丈夫」が一番危ないということです。取締りは”全員一斉に”とは限りません。目立つ店、通報が入った店、規模が大きい店、イベント絡みで注目される店が先に対象になります。2016年がそうで、2025年のミャクミャクでも「初の逮捕」が出ました。

三つ目は、「売る前」でも終わるということです。販売目的所持、転売、出品準備──ここに足を踏み入れると、引き返しにくくなります。企画がSNSでバズる速度と、捜査・通報の速度が、同じ土俵に乗ってきた時代だと思ってください。

7. まとめ:笑いで終わらせるために、法律で詰まない設計を

パロディは本来、文化として面白いし、市場に”余白”をつくる力もあります。ただ、商標の領域に踏み込むとき、「面白い」は法的評価の外側にあります。評価されるのは、混同のおそれ、信用へのただ乗り、ブランド毀損、流通の実態です。

もしあなたが事業として「ネタグッズ」「ロゴいじり」「オマージュ」を考えているなら、バズる前に一度、”そのデザインは誰の信用を借りて成立しているのか”を問い直してください。そこで答えが曖昧なら、たいてい危険信号です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

参考資料

  • [1]: https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000451964.html “”偽ミャクTシャツ”で逮捕 韓国籍の大学生が…”
  • [2]: https://www.bengo4.com/c_1015/n_5284/ “「パロディーTシャツ」販売で店長ら逮捕…弁護士「権力の介入、萎縮効果が大きい」 – 弁護士ドットコム”
  • [3]: https://hiroshima-kigyo.com/column/8285?utm_source=chatgpt.com “企業法務に関わる著作権法改正をわかりやすく~平成30年以降 …”
  • [4]: https://www.businesslawyers.jp/articles/8 “「フランク三浦」の事案に見る、パロディ商標に対する法務担当の留意点 – BUSINESS LAWYERS”

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