PPAPの商標が他人に商標登録出願された問題の解説

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(1)PPAPの商標を他人が商標登録出願した内容

PPAPは、ピコ太郎がユーチューブの動画で発表した”PEN PINEAPPLE APPLE PEN”のタイトルで、ジャスティンビーバーがおもしろい動画として紹介したことから爆発的にヒットしました。

世界の動画再生回数でも世界でトップクラスに躍り出るほどの人気が出たため、ピコ太郎やPPAPを知らない人はいないくらいに有名になったのではないでしょうか。

ところが、このPPAPの商標について、ピコ太郎やピコ太郎の関係者とは全く関係のない他人の企業が”PPAP”の商標を特許庁に商標登録出願しています。

大阪の業者Aが無断でPPAPの商標について出願した事件の内容を時系列に沿って示します。

(1-1) 大阪の企業による第一の商標「PPAP」の出願の概要

  • 出願日 :2016年10月5日
  • 商標  :PPAP
  • 出願番号:商願2016-108551
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(1-2) エイベックスによる商標「PPAP」の出願の概要

  • 出願日 :2016年10月14日
  • 商標  :PPAP
  • 出願番号:商願2016-112676
  • 出願人 :エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社

(1-3) 大阪の企業による第二の商標「PPAP」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月15日
  • 商標  :PPAP
  • 出願番号:商願2016-128344
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(1-4) 大阪の企業による第三の商標「PPAP」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月28日
  • 商標  :PPAP
  • 出願番号:商願2016-134012
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

時系列に沿ってみてみると、エイベックスより先に、大阪の業者Aによる商標「PPAP」の無断出願の方が早くなっています。

また同じPPAPの商標について大阪の業者Aが複数出願しているのは、それぞれの商標登録出願の権利範囲が異なるためです。

商標登録出願の場合は、商標”PPAP”のみについて申請するのではなくて、その商標PPAPを何に使うかを指定しなければなりません。

例えば、商標”PPAP”をCDに使うなら第9類の「録音済みCD」の商品を指定します。また商標”PPAP”を雑誌に使うなら第16類の「雑誌」の商品を指定します。

このように各商品や各役務が第1から第45類までの45個の区分に分かれていて、商標を使う商品・役務を選択することになっています。大阪の業者Aの出願は、この指定する商品役務の範囲がそれぞれに違うと理解してください。

大阪の企業Aによる商標PPAPの無断出願の何が問題なのか?

PPAPの商標について商標権が得られると、PPAPの商標を業務に使うことができるのは商標権者だけになります。

商標PPAPについて誰が商標権者になるのかは、先にPPAPに使った人ではありません。先に特許庁に商標登録出願の申請を済ませた人です。

先に申請した人に商標権を与える制度のことを先願主義といいます。

先にPPAPを使ったピコ太郎が商標権者になる制度の方が理解しやすいです。しかし先に使った人が商標権者になる制度ですと、後になってから私の方が先に使ったと名乗り出る人が多発して収拾がつかなくなります。

これに対して先願主義であれば、誰がいつ権利申請したかは明かですので、商標権者が誰かの問題が発生することがありません。誰の権利かについての争いがなくなるため、ほぼ全ての国で先願主義が採用されています。

日本の商標法でも同じ内容の商標登録出願があったケースでは先に出願した人が審査に合格できることが定められています。

大阪の業者Aはエイベックスよりも先に出願を終えているため、法律をそのまま適用したとすれば、無断出願した大阪の業者Aが正当な商標権者になる問題があります。

(2)ペンパイナッポーアッポーペンの商標まで無断出願されている?

大阪の企業Aが無断で出願したのはPPAPだけではありません。商標「ペンパイナッポーアッポーペン」についても無断出願がされています。

(2-1) 大阪の企業による第一の商標「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」の出願の内容

  • 出願日 :2016年11月15日
  • 商標  :PEN PINEAPPLE APPLE PEN
  • 出願番号:商願2016-128341
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-2) 大阪の企業による第二の商標「ペンパイナッポーアッポーペン」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月24日
  • 商標  :ペンパイナッポーアッポーペン
  • 出願番号:商願2016-133239
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-3) 大阪の企業による第三の商標「ペンパイナッポー」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月24日
  • 商標  :ペンパイナッポーアッポーペン
  • 出願番号:商願2016-133240
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-4) 大阪の企業による第四の商標「ペンパイナッポーアッポーペン」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月25日
  • 商標  :ペンパイナッポーアッポーペン
  • 出願番号:商願2016-133243
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-5) 大阪の企業による第五の商標「ペンパイナッポー」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月25日
  • 商標  :ペンパイナッポー
  • 出願番号:商願2016-133244
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-6) 大阪の企業による第六の商標「PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月28日
  • 商標  :PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN
  • 出願番号:商願2016-134009
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

(2-7) 大阪の企業による第七の商標「PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN」の出願の概要

  • 出願日 :2016年11月28日
  • 商標  :PEN・PINEAPPLE
  • 出願番号:商願2016-134015
  • 出願人 :無許可の大阪の企業A

商標「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」等では、エイベックスもピコ太郎も商標登録出願をしていませんので、商標権の点からは大阪の業者Aの独壇場になっています。

(3)特許庁の審査でPPAPの出願はどうなるのか?

結論として、特許庁が商標「PPAP」や商標「PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN」の無断出願について審査に合格させることはないです。

商標の審査に合格する条件として、誰よりも先に特許庁に権利申請するという先願主義の条件以外の項目が多数あります。

商標の審査に合格できる条件として、「出願した人以外の有名な商標と同じか似ている商標は登録しません」という条項があります。

ピコ太郎の商標「PPAP」や「PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN」は爆発的にヒットしたため世界的に有名な商標になっています。

このため、有名な商標については関係者以外には商標登録しないとの規定が働いて、商標「PPAP」や「PEN・PINEAPPLE・APPLE・PEN」等に対してピコ太郎とは関係がない者が申請しても特許庁の審査に合格することはありません。

(4)万が一、特許庁の審査に合格したらどうなるのか

仮に大阪の業者Aの商標「PPAP」等が特許庁の審査に合格し、商標権が発生したケースではどうなるのでしょうか。

(4-1) ピコ太郎はPPAPを歌えなくなるのか?

仮にPPAPについて商標権が発生したとしても、商標権により使えなくなるのはPPAPについての「文字表記」です。

ですので、口に出して「PPAP」と発音する行為には商標権は働きません。要はPPAPといいながら唄ったり踊ったりする行為には商標権とは無関係になります。

仮にPPAPについて商標権が発生したならPPAPについての「文字表記」をしなければよいのです。

(4-2) ピコ太郎の歌詞のテロップにPPAPがでてくると権利侵害か?

ピコ太郎の唄の中にPPAPとのフレーズが含まれていて、それがテロップで流れたとしても、それは商標権の侵害にはなりません。

歌詞の中のフレーズの中にPPAPが含まれる、というだけでは、商標法で定める商標の使用にはあてはらまらないからです。

(4-3) ピコ太郎は商品等にPPAPが使えなくなるのか?

大阪の業者Aが出願する前に、ピコ太郎の商標PPAPは有名になっています。

商標法では先取り出願の前に有名になっている商標については引き続き使用が許される先使用権が認められます。ピコ太郎さんの商標については、過去に商品について使用実績があるものについては先使用権が認められます。

(4-4) ピコ太郎は過去の収入について損害賠償をしなければならないのか?

それはないです。

損害賠償が有効になるのは、商標権が発生した後に限られます。現時点では商標権が発生していないので、過去の収入が損害賠償の対象になることはありません。

(5)ピコ太郎側はどうすればよいのか?

大阪の業者Aの代表者は元・弁理士で、商標法の裏の裏まで精通しています。

商標法の知識が他人からお金を巻き上げる手段として使われるとするなら、それは許されることではありません。

ちなみに他人の商標を先取りしてお金を得るビジネスのことをトロールビジネスといいます。

ただしトロールビジネスといっても休眠状態の特許権等を活用していく適法なものから、他人の権利を先取りして金銭を要求するブラックな領域のものまで幅広くあります。

商標の先取り出願を行う業者は私たち商標権の専門家と対峙する際に姿を現すことはあっても、一般的な表舞台に姿を現すことはまずありませんでした。

現代においては商標の先取り行為が劇場型に変わってきている、ということです。トラブルを劇場型で自ら演出し、そのトラブルの解決金を得るという行為を大阪の業者Aの代表者はビジネスといっているように見受けられます。

このビジネスが成立するとブラックな行為を結果的に助長させることになります。このビジネスを助長させないためにはどうすればよいのでしょうか。

(5-1) 理由のないお金は払わない

今回のピコ太郎関係の商標の先取り出願について、ピコ太郎側が誠実に対応する限り、特許庁や裁判所で負けることはまずありません。

ですので、不用意に理由のないお金を大阪の業者A側に払うのは避けるのがよいです。

何らかの解決金を安易に業者に払ってしまうと「困らせるとお金を払ってくれる相手」になってしまいます。そうすると今後も業者による格好の攻撃ターゲットになってしまいます。

自ら進んで今後の攻撃ターゲットになることは避けなければなりません。

商標の先取り業者に誰も一切お金を払わなければ、いずれは商標の先取り業者は経済的に干上がります。

(5-2) 自己防衛する

大切な商標についてはトラブル発生を未然に防ぐ必要があります。業者が動く前に先に商標権を押さえておき、業者に付け入る隙を見せないことが大切です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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