本名を隠すためのビジネス名義で商標登録は可能?それとも避けた方が良い?
個人で特許庁に商標登録出願をすると、実名と実住所が商標公開公報に掲載されます。インターネットの検索データベースでは実住所までは検索結果にでてきませんが、適切な手続を踏んで調べると実住所にたどり着くことができます。
この様な背景から、実名よりビジネス名義を用いたいと望む事業者の方は多いのではないでしょうか?
では、商標登録において、権利者として実名を隠したビジネス名義が使えるのでしょうか?
結論としては、実名を隠したビジネス名義での商標登録は避けるべき、ということになります。
商標権は資産権の一部であり、第三者が無断でその権利を改変、ライセンス、売却することはできません。
例えば、商標権を売却する権利は商標権者のみが持っています。もし実名を隠したビジネス名義で商標権を取得した場合、特許庁が本人確認できないという理由から、商標権を移動できなくなる可能性があるのです。
通常、住民票などの公的な記録を利用して本人であることを証明できますが、実名を隠したビジネス名義で権利を取得した場合、ビジネス名義と自身の間の関係を客観的に証明することは難しくなります。
これは、偽名で銀行口座を開設する行為に似ています。
仮に偽名で口座を開設できたとしても、銀行が本人確認できなければ、その口座からお金を引き出すことができなくなるからです。
商標権も同様で、最終的に本人確認ができないと、権利を行使することができなくなる場合がありえます。そうなると、口座が凍結されるのと同じ扱いとなります。
実名・本名を知らせなくない場合にはどのようにすればよいのですか?
では、自分の本名を隠したいというのであればどうすれば良いのでしょうか?
実名を隠したビジネス名義で権利を取得しようと考えているなら、法人を設立し、その法人名義で商標権を取得する方法も考えられます。実名以外の名義で権利を取得するのは避けることで、後々のトラブルを未然に防げます。
会社を設立し、その会社名義で商標登録を行うことです。
これにより、特許庁で公開される情報は会社名と会社の住所になるため、個人名を公表することを避けることができます。
ただし、会社名義で出願した場合でも、会社の登記簿を確認すれば、代表者の氏名や住所を知ることが可能です。
日本の法律では、商売をする上で本人の情報を完全に隠すことはできません。
ただ、全員同じ条件で特許庁に登録する手続を行っているので、あなただけが不利になる、というわけではないです。
商標登録をしようと思ったとき、あるいは会社を設立しようと思ったとき、本名・実名を隠してビジネス名義で行いたいと思ってもこれは避けるのが賢明です。情報公開を受け入れることができるかどうか、考えてから決めることが重要です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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