1. 個人の商標登録では実名と住所が公報に掲載される
個人で特許庁に商標登録出願をすると、実名と実住所が商標公開公報に掲載されます。インターネットの検索データベースでは実住所までは検索結果に出てきませんが、適切な手続を踏んで調べると実住所にたどり着くことができます。
この様な背景から、実名よりビジネスネームを用いたいと望む事業者の方は多いのではないでしょうか。
では、商標登録で、権利者として実名を隠したビジネスネームは使えるのでしょうか。
結論としては、実名を隠したビジネスネームでの商標登録は避けるべき、ということになります。
2. ビジネスネーム名義の商標登録を避けるべき理由
商標権は財産権であり、第三者が無断でその権利を改変したり、ライセンスしたり、売却したりすることはできません。
例えば、商標権を売却する権利は商標権者のみが持っています。もし実名を隠したビジネスネームで商標権を取得した場合、特許庁が本人確認できないという理由から、商標権を移転できなくなる可能性があるのです。
通常は、住民票などの公的な記録を使って本人であることを証明できます。ところが、実名を隠したビジネスネームで権利を取得した場合、そのビジネスネームと自分との関係を客観的に証明することは難しくなります。
これは、偽名で銀行口座を開設する行為に似ています。仮に偽名で口座を開設できたとしても、銀行が本人確認できなければ、その口座からお金を引き出せなくなるからです。
商標権も同様で、最終的に本人確認ができないと、権利を行使できなくなる場合があり得ます。そうなると、口座が凍結されるのと同じ扱いです。
商標権の更新や移転、侵害への対応は、いずれも「権利者本人であること」を前提に進みます。名義の同一性に疑義が生じると、この前提のところでつまずくことになります。
3. 本名を知られたくない場合の現実的な方法
では、自分の本名をどうしても出したくない場合には、どうすればよいのでしょうか。
考えられるのは、法人を設立し、その法人名義で商標権を取得する方法です。実名以外の個人名義で権利を取得することを避けながら、個人名の公開も避けられます。
会社名義で商標登録を行えば、特許庁で公開される情報は会社名と会社の住所になります。個人名が公報に載ることはありません。
ただし、会社名義で出願した場合でも、会社の登記簿を確認すれば代表者の氏名を知ることは可能です。日本の法律では、商売をする上で本人の情報を完全に隠すことはできません。
それでも、全員が同じ条件で特許庁の手続きを行っています。あなただけが不利になる、というわけではないです。
商標登録をしようと思ったとき、あるいは会社を設立しようと思ったとき、本名・実名を隠してビジネスネームで行いたいと思っても、これは避けるのが賢明です。情報公開を受け入れることができるかどうか、考えてから決めることが重要です。
4. ビジネスネームと商標登録のよくある質問
Q1: ペンネームや屋号で商標登録出願はできますか?
A1: 商標権者になれるのは、個人(自然人)か法人です。屋号やペンネームそれ自体は権利の主体になれないため、出願書類には戸籍上の氏名または法人の名称を記載します。
Q2: 出願すると自宅の住所まで公開されてしまうのですか?
A2: 公報には出願人の氏名と住所が掲載されます。検索データベースで住所までは表示されませんが、所定の手続を踏めば確認できる状態にはなります。個人の住所を出したくない場合は、法人名義での出願を検討することになります。
Q3: 法人名義にすれば個人情報は完全に隠せますか?
A3: 公報に載るのは会社名と会社の住所です。ただし、会社の登記簿には代表者の氏名が記載されるため、完全に隠せるわけではありません。なお、登記簿上の代表取締役の住所については、2024年10月から一定の手続で非表示にできる制度が始まっています。
Q4: すでにビジネスネームで商標登録してしまった場合はどうすればよいですか?
A4: 権利の更新や移転、権利行使の場面で、名義と本人の同一性を証明できるかが問題になる可能性があります。放置せず、名義をどう扱うかを弁理士に相談しておくことをお勧めします。
Q5: 結婚や改名で戸籍上の氏名が変わった場合、商標権はどうなりますか?
A5: 商標権が消えることはありません。特許庁に登録名義人の表示変更の手続きを行い、権利者の表示を新しい氏名に改めます。実名で登録しておけば、氏名の変更は公的な記録で証明できます。
ファーイースト国際特許事務所
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