商標登録をする場合、例えば、商品「りんご」について商標「りんご」は登録できません。特許庁が審査に合格させないわけです。
一人が商品りんごの一般的な名前の使用を独占してしまったら、他の人が困るからです。商標の登録条件として、自他商品識別力が原則求められます。
自他商品識別力とは、商標を観れば、同じ商品群の中から自社の商品を見つけ出すことができる機能のことです。
この様な背景から、商品の内容そのものを示す商標は原則として特許庁が登録を認めません。
今から時間は経ちますが、2013年1月24日、知的財産高等裁判所は、アイスクリーム「あずきバー」に関する商標登録を否定する特許庁の初審決定を覆す判決を下しました。
井村屋グループ株式会社は、2010年7月5日に「あずきを使用した菓子」として「あずきバー」の商標登録を申請しましたが、特許庁は2011年5月6日にこの申請を拒絶しました。
この拒絶決定に不服を申し立て、井村屋グループは2011年8月5日に特許庁への拒絶査定不服審判の請求を行いましたが、2012年7月11日にはその請求も棄却されました。
しかし、井村屋グループは諦めず、2012年8月7日に知的財産高等裁判所へ訴えを提起しました。これが、先に述べた知財高裁の判決に繋がったのです。
商標法では、一般的な表現を使った商品の商標登録は認められないとされています(商標法第3条第1項)。
しかし、長年にわたる使用により法的に保護すべき信頼を獲得した商標も存在します。そのような信頼を獲得した商標であれば、その知名度を証明できれば登録が認められるという規定もあります(商標法第3条第2項)。
井村屋グループの「あずきバー」は、年間3億本近くも売り上げており、「あずきを使用した菓子」としての商標登録を認めるべきだという結論に至りました。
井村屋グループの粘り勝ち、ということです。
ちなみに、途中であきらめたら井村屋グループの「あずきバー」について商標登録されることはなかったわけで、どこまで粘るかによっても結論が左右されます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247