カップ入りインスタントラーメンの「どん兵衛」を販売している日清食品ホールディングスが「サッポロ一番」のサンヨー食品を大阪地裁に訴えたことが報道されています。
今回の「どん兵衛」と「サッポロ一番」とは麺に関する特許権についてのものですが、特許権と商標権とは根本的に異なります。
特許権はアイデアを保護する権利ですので、例えば麺の製造方法について権利を取得することができます。
「どん兵衛」と「サッポロ一番」とはそれぞれのネーミングは類似していませんが、販売している商品の製造に「どん兵衛」側の特許発明が実施されていれば特許権の侵害になります。
この一方、商標権はネーミングの権利です。商標「どん兵衛」を商標権の権利範囲内で使用すれば商標権の侵害になりますので、日清食品ホールディングスとは関係がない第三者が勝手に登録商標「どん兵衛」を使用することはできません。
反面、登録商標「どん兵衛」とは全く異なる商標を使用すれば「どん兵衛」についての商標権を侵害することはなくなります。
この様に商標権の場合は、使用するネーミングを変更することにより商標権の侵害回避が可能です。
これに対し、特許権の場合は、第三者が特許発明を実施していれば特許権侵害になります。このためネーミングを変更しても、販売している商品が特許発明の内容を実施したものであれば特許権の侵害回避を行うことができません。
この様に特許権の場合は保護できる範囲が広いのですが、実際に特許権を侵害しているかどうかの判断は簡単ではありません。
これに対して商標権の侵害は目で見て判断できるので、実際に商標権を侵害しているかどうかの判断は、製品の内容を分析しなければならない特許権の場合と比較して簡単になります。
特許権と商標権とどちらが優れている、というよりは、両者を併用して商品を守ることがよいと思います。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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