1. 日本代表チーム愛称の登録例
(1−1)すでに登録している競技とは?
「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表を示す愛称として広く知られています。
日本代表チームの愛称は、公募で選ぶ例もあれば、競技団体が決める例もあります。愛称は応援の合言葉になるだけでなく、グッズ販売や大会運営で使うブランドにもなります。
愛称を継続して事業に使うなら、商標登録による保護も検討対象です。下表には登録例のほか、記事作成時に出願中だった案件も含まれます。権利の現況は変わるため、利用前にはJ-PlatPatで最新情報をご確認ください。
日本代表チームの商標登録例
| 出願番号/登録番号/国際登録番号 | 商標 (検索用) | 区分 | 出願人/権利者/名義人 | 登録日 | URL |
|---|---|---|---|---|---|
| 登録4845345 (商願2004-062898) | なでしこじゃぱん\NADESHIKO JAPAN | 16, 25, 32 … | 公益財団法人日本サッカー協会 | 2005/03/11 | リンク |
| 登録5478980 (商願2011-054630) | なでしこジャパン | 09, 12, 14 … | 公益財団法人日本サッカー協会 | 2012/03/16 | リンク |
| 登録6792351 (商願2023-065261) | SAMURAI FIVE | 14, 18, 25 | 合同会社日本蹴球侍 | 2024/04/02 | リンク |
| 登録5334538 (商願2009-033145) | 火の鳥NIPPON | 14, 41 | 公益財団法人日本バレーボール協会 | 2010/07/02 | リンク |
| 登録5195556 (商願2008-020259) | サムライJAPAN | 41 | 公益社団法人日本ホッケー協会 | 2009/01/09 | リンク |
| 登録5968078 (商願2017-024700) | SOFT\JAPAN | 09, 14, 16 … | 公益財団法人日本ソフトボール協会 | 2017/07/28 | リンク |
| 登録6661983 (商願2022-078377) | アカツキ ジャパン\AKATSUKI JAPAN | 09, 14, 16 … | 公益財団法人日本バスケットボール協会 | 2023/01/13 | リンク |
| 登録5134357 (商願2007-043367) | さくらJAPAN | 41 | 公益社団法人日本ホッケー協会 | 2008/05/09 | リンク |
| 登録5672731 (商願2013-093278) | おりひめジャパン | 25, 41 | 公益財団法人日本ハンドボール協会 | 2014/05/23 | リンク |
| 登録5358849 (商願2009-047185) | §TOBIUO\JAPAN | 03, 09, 14 … | 株式会社電通 | 2010/10/08 | リンク |
| 商願2024-124444 | TSUBASAJAPAN | 41 | 公益財団法人日本水泳連盟 | – | リンク |
| 商願2024-124445 | POSEIDON\JAPAN∞WATER POLO\NATIONAL TEAM | 41 | 公益財団法人日本水泳連盟 | – | リンク |
| 登録5707588 (商願2014-036643) | 韋駄天スプリンターズ | 16, 25, 35 … | 公益財団法人日本陸上競技連盟 | 2014/10/03 | リンク |
| 登録5707577 (商願2014-036392) | 椿スプリンターズ\TSUBAKI\SPRINTERS | 16, 25, 35 … | 公益財団法人日本陸上競技連盟 | 2014/10/03 | リンク |
| 登録6276955 (商願2019-055955) | BIRD JAPAN | 12, 14, 18 … | 公益財団法人日本バドミントン協会 | 2020/08/05 | リンク |
| 登録5823264 (商願2015-050741) | BRAVE BLOSSOMS | 16, 25, 28 … | 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 | 2016/01/29 | リンク |
| 登録5624485 (商願2013-039868) | さくらセブンズ | 16, 41 | 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 | 2013/10/25 | リンク |
| 登録5624486 (商願2013-039869) | さくらフィフティーン | 16, 41 | 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 | 2013/10/25 | リンク |
| 登録5921414 (商願2016-086226) | 波乗りJAPAN | 25, 28, 41 | 一般社団法人日本サーフィン連盟 | 2017/02/10 | リンク |
| 登録5859283 (商願2015-099000) | 日の丸セーラーズ | 35, 41 | 公益財団法人日本セーリング連盟 | 2016/06/17 | リンク |
| 登録6060909 (商願2017-137467) | §火ノ玉 JAPAN\Boccia JAPAN NATIONAL TEAM | 16, 25, 41 | 一般社団法人日本ボッチャ協会 | 2018/07/13 | リンク |
| 登録5812798 (商願2015-059944) | 雷神JAPAN | 25, 41 | 公益財団法人全日本空手道連盟 | 2015/12/11 | リンク |
| 登録6559755 (商願2021-100622) | 阿修羅ジャパン | 41 | 一般社団法人日本ボクシング連盟 | 2022/05/23 | リンク |
| 登録6559754 (商願2021-100621) | ブルーローズジャパン | 41 | 一般社団法人日本ボクシング連盟 | 2022/05/23 | リンク |
(1−2)愛称が変更されることも
2016年4月、日本バスケットボール協会は記者会見の席で、日本代表チームの愛称をそれまでの「ハヤブサジャパン」から、「AKATSUKI FIVE」に変更することを発表しました。
これは、日本代表のチームカラーである赤と黒を、「日出ずる国」である日本の日の出=「暁の空の色」になぞらえ、選手5人を示す=「FIVE」と組み合わせて名付けられました。ここには世界に挑む日本代表に「日の出の勢い」をもたらすようにという願いが込められているのです。
そして愛称の変更に伴って、「AKATSUKI FIVE」も商標登録されています。
(1−3)東京オリンピックの新種目でも商標登録
東京オリンピックで新種目となったサーフィンでは、2016年に日本代表の愛称を広く募集しました。その後、一番多く寄せられた「波乗りジャパン/NAMINORI JAPAN」に決定しました。
これにより、以下の4つの商標が登録されました。
波乗りJAPAN(商標登録 第5921414号)/サーフィン
- 権利者:日本サーフィン連盟
- 出願日:2016年8月9日
- 登録日:2017年2月10日
NAMINORI JAPAN(商標登録 第5921415号)/サーフィン
- 権利者:日本サーフィン連盟
- 出願日:2016年8月9日
- 登録日:2017年2月10日
波 NAMINORI JAPAN(商標登録 第5921416号)/サーフィン
- 権利者:日本サーフィン連盟
- 出願日:2016年8月9日
- 登録日:2017年2月10日
波 NAMINORI JAPAN(商標登録 第5921417号)/サーフィン
- 権利者:日本サーフィン連盟
- 出願日:2016年8月9日
- 登録日:2017年2月10日
2. 「サムライJAPAN」と「SAMURAI JAPAN」
日本代表チームの愛称はファンに親しまれる一方、同じ呼び方が別競技で採用されることもあります。
野球男子日本代表チームの愛称として知られる「SAMURAI JAPAN」(「侍JAPAN」)ですが、実は同じ呼び方で先に商標登録されていたのは、ホッケー男子日本代表チームの「サムライJAPAN」(「さむらいJAPAN」)でした。
その経緯は次のようになります。
(2−1)ホッケー男子日本代表チーム「サムライJAPAN」
2008年4月に行われた北京オリンピックを前に、日本ホッケー協会は日本代表チームの愛称を公募し、「サムライJAPAN」に決定したことを発表しました。
そして、以下の2つの商標が登録されました。これは、「サムライJAPAN」「さむらいJAPAN」という文字のみの商標です。
サムライJAPAN(商標登録 第5195556号)/ホッケー
- 権利者:日本ホッケー協会
- 出願日:2008年3月18日
- 登録日:2009年1月9日
さむらいJAPAN(商標登録 第5195564号)/ホッケー
- 権利者:日本ホッケー協会
- 出願日:2008年3月27日
- 登録日:2009年1月9日
(2−2)野球男子日本代表チーム「SAMURAI JAPAN」
2008年11月、日本野球機構はワールドベースボールクラシック(WBC)に向けて、日本代表チームの愛称を「SAMURAI JAPAN」と発表しました。
そして、日本野球機構によって、以下の商標が登録されました。これは「SAMURAI JAPAN」という文字に図形が加えられたものです。
SAMURAI JAPAN(商標登録 第5297420号)/野球
- 権利者:日本野球機構
- 出願日:2008年10月29日
- 登録日:2010年1月29日
その後、日本野球機構は「SAMURAI JAPAN」と「侍JAPAN」に関連する商標をさらに4つほど登録しています。
(2−3)なぜ、商標登録できたのでしょうか?
日本野球機構が「SAMURAI JAPAN」という愛称を発表したのは、日本ホッケー協会が「サムライJAPAN」という愛称を発表してから約8カ月後に当たります。
では、なぜ「サムライ ジャパン」と同じ呼び方をする商標が登録できたのでしょうか? そこに問題はなかったのでしょうか?
区分番号だけでなく指定商品・指定役務を比べる
同じように読める商標が併存していても、区分番号だけを見て理由を断定することはできません。商標の外観・称呼・観念に加え、それぞれの指定商品・指定役務が同一または類似するかを個別に比べます。
日本ホッケー協会の場合
日本ホッケー協会の「サムライJAPAN」「さむらいJAPAN」の商標は、ともに、以下の1区分を指定しています。
- 第41類「ホッケーの興行の企画・運営または開催、ホッケーに関する電子出版物の提供、ホッケーに関する図書および記録の供覧、ホッケーに関する書籍の制作、ホッケーに関する映画の上映・制作または配給」など
日本野球機構の場合
一方、日本野球機構が出願した上記の「SAMURAI JAPAN」の商標では、17区分にわたって指定されています。
- 第3類「せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類、靴クリーム」など
- 第9類「電気通信機械器具、電子応用機械器具およびその部品、家庭用テレビゲームおもちゃ、携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路およびCD−ROM、電子出版物」など
- 第14類「キーホルダー、宝石箱、記念カップ、身飾品、時計」など
- 第16類「紙製のぼり、紙製旗、文房具類、印刷物、写真」など
- 第18類「愛玩動物用被服類、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘」など
- 第20類「クッション、座布団、まくら、マットレス、家具」など
- 第21類「なべ類、食器類、水筒、清掃用具および洗濯用具、愛玩動物用食器」など
- 第24類「布製身の回り品、敷布、布団、ふきん、カーテン」など
- 第25類「洋服、コート、手袋、帽子、運動用特殊衣服」など
- 第26類「テープ、リボン、衣服用ブローチ、頭飾品、ボタン類」など
- 第28類「愛玩動物用おもちゃ、おもちゃ、人形、遊戯用器具、運動用具」など
- 第30類「茶、コーヒーおよびココア、菓子およびパン、穀物の加工品、べんとう」など
- 第32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、飲料用野菜ジュース」など
- 第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」など
- 第35類「広告、経営の診断または経営に関する助言、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、野球チームのファンクラブの運営」など
- 第38類「電気通信(放送を除く。)、放送、報道をする者に対するニュースの供給」
- 第41類「技芸・スポーツまたは知識の教授、ゴルフの興行の企画・運営または開催、相撲の興行の企画・運営または開催、ボクシングの興行の企画・運営または開催、野球の興行の企画・運営または開催」など
商標権のおよぶ範囲
商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標を使う権利を専有し、登録商標や指定商品・指定役務の類似範囲にある他人の使用を排除できます。区分は商品・役務を分類する枠ですが、区分番号そのものが権利範囲を決めるわけではありません。
ホッケー協会の登録は第41類のうちホッケーに関する役務を指定しています。野球機構の登録にも第41類が含まれますが、具体的な指定役務や商標の構成は同一ではありません。両方が登録されている事実だけから、あらゆる使用が適法、または侵害と結論づけることはできません。
出願時は、現在使っている商品・役務と具体的な事業計画に含まれる商品・役務を洗い出します。使用予定のない区分まで広げる方法は、使用意思の確認や費用の増加を招き、登録後も継続して3年以上使わなければ不使用取消審判の対象になり得ます。
3. 愛称を商標で守るときの考え方
チーム愛称を守るには、名称を決める前の先行商標調査と、利用計画に沿った指定商品・指定役務の設計が出発点になります。
大会運営だけでなく、衣類、文具、飲料、配信、ファンクラブなどへ展開する予定があれば、誰がどの事業で愛称を使うのかも整理しておきます。競技団体、スポンサー、商品化権を扱う事業者の間では、出願名義や使用許諾の条件も契約で明確にしておくと安心です。
愛称の発表後は第三者の出願やグッズ展開が先行するおそれがあります。候補段階で調査し、実際の使用計画に合う範囲で出願することが、ブランドを長く育てる土台になります。
4. よくある質問
チームの愛称は必ず商標登録できますか?
先に同一・類似の商標が登録されている場合や、識別力などの登録要件を満たさない場合は登録できません。候補名を公表する前に調査すると、名称変更の負担を抑えやすくなります。
同じ読み方の愛称が別競技で登録されることはありますか?
あります。ただし、読み方だけで決まるものではありません。商標の外観・称呼・観念と、指定商品・指定役務の同一・類似を合わせて判断します。
同じ区分なら権利範囲も同じですか?
同じとは限りません。同一区分の中にも性質の異なる商品・役務があり、別区分の商品・役務が類似と扱われる例もあります。登録原簿の指定商品・指定役務と類似群を確認します。
将来に備えて全区分を指定した方がよいですか?
使用中または使用予定の範囲から選ぶのが基本です。費用だけでなく使用意思の確認や不使用取消の問題があるため、事業計画に合わせて優先順位を付けます。
愛称をグッズに使う場合は何を確認しますか?
衣類、文具、玩具など、販売する商品ごとに指定範囲を確認します。競技イベントの開催について登録していても、グッズ販売まで当然に覆うとは限りません。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
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