【社長必読】「商標登録してないからOK」は超危険!ロレックス指輪事件が示す、ブランドビジネスの落とし穴

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今回は、商標法のことが分かり始めた段階で陥りやすい「商標登録の思い込み」について、商標登録専門家としての立場から実際の事件を通じてお話しします。

1. ロレックスの指輪事件が示唆する、経営者にもありうる勘違い

昨日から今日にかけて、世間を騒がせたニュースをご存知でしょうか。ロレックスのロゴが入ったスプーンを指輪に加工して販売していた男性が逮捕されたという事件です。

各報道機関の報道内容の引用

報道日付 報道機関名称 報道タイトル 概要
2025年7月28日 関西テレビ 「ロレックス」スプーンを加工して指輪を製造販売 30歳男を逮捕 京都府警 自営業の男が、不正競争防止法違反(著名表示冒用)の疑いで逮捕された。男はロレックスのスプーンを指輪に加工し、販売した疑い。
2025年7月28日 FNNプライムオンライン 「ロレックス」スプーンを加工して指輪を製造販売 30歳男を逮捕 京都府警 関西テレビの報道を引用し、自営業の男が不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたと報道。
2025年7月28日 朝日放送テレビ 「ロレックス」のロゴ入りスプーンを指輪に加工して販売か 30歳男を逮捕 製作過程をSNSで公開 京都 ロレックスの時計購入時に贈られる非売品のスプーンを指輪に加工し、SNSでその製作過程を公開していた。
2025年7月28日 京都新聞 【速報】「ロレックス」スプーンを加工して指輪を製造、販売した疑い 京都の30歳男を逮捕 高級腕時計ブランド「ロレックス」のものに見せかけた指輪を製造、販売したなどとして、京都府警下京署が京都市の男を逮捕したと速報。
2025年7月29日 テレビ朝日 “ロレックス スプーン”指輪に加工し販売か 男逮捕 ロレックスのロゴ入りスプーンを加工して作った指輪1個を販売した疑い。
2025年7月29日 khb東日本放送 “ロレックス スプーン”指輪に加工し販売か 男逮捕 テレビ朝日の報道と同様の内容を報道。瀧田容疑者は容疑を認めている。

この報道を聞いて、多くの経営者の方がこんな疑問を抱いたはずです。「ロレックスは時計メーカーでしょう?指輪で商標登録していないなら、セーフなんじゃないの?」

実は、この考え方こそが、あなたの会社を大きなリスクにさらす可能性がある落とし穴なのです。

商標権には「指定商品・役務」の範囲で権利が発生するという原則があります。つまり、登録時に指定した商品やサービスとは関係のない範囲では、その商標を独占的に使用する権利は発生しません。ロレックスが仮に「指輪」を指定商品として登録していなければ、商標権侵害で訴えることは難しいでしょう。

ところが、今回の逮捕容疑は「商標権侵害」ではありませんでした。男性は「不正競争防止法違反(著名表示冒用)」という、まったく別の法律違反で逮捕されたのです。

2. 商標登録だけとは限らない。不正競争防止法という見えない罠

経営者が見落としがちな事実があります。日本のビジネス界には、商標法とは別に、ブランドを守るもう一つの法律が存在するということです。それが「不正競争防止法」です。

この法律は、文字通り事業者間の公正な競争を守るためのルールブックです。

他人が長年かけて築き上げた信用や評判にタダ乗りしたり、不当な方法で利益を得ようとする行為を厳しく取り締まります。商標登録の有無に関係なく、ビジネスの公正さを守る番人のような存在なのです。

そして今回の事件の核心となったのが、この法律で禁止されている「著名表示冒用(ちょめいひょうじぼうよう)」という行為です。難しそうな言葉ですが、その意味を理解することが、あなたの会社を守る第一歩となります。

3. 「著名表示冒用」の恐ろしさ なぜ指輪で逮捕されたのか

「著名表示冒用」を分かりやすく説明しましょう。

まず「著名表示」とは、ロレックスやシャネル、トヨタのように、その業界だけでなく、一般消費者にまで広く知れ渡っている有名なブランド名やロゴのことです。街で100人に聞いたら、90人以上が「知ってる」と答えるようなブランドと考えてください。

そして「冒用」とは、簡単に言えば「勝手に使うこと」です。

つまり、誰もが知っている有名ブランドの名前やロゴを、あたかも自分の商品であるかのように使ってビジネスをすることが「著名表示冒用」なのです。

今回の事件を具体的に見てみましょう。犯人はロレックスの刻印が入ったスプーンを入手し、それを指輪に加工して販売しました。この指輪を見た消費者はどう思うでしょうか。

  • 「これはロレックスが作った指輪なのかな?」
  • 「ロレックス公認のアクセサリーなのかも」
  • 「高級時計メーカーが手がけた特別な商品に違いない」

このような誤解や混同が生じる可能性が高いですよね。たとえロレックスが指輪で商標登録をしていなくても、消費者に誤解を与え、ロレックスの信用にタダ乗りする行為自体が、不正競争として処罰の対象となるのです。

4. 他人のブランド力にタダ乗りする行為の本質的な問題

ロレックスというブランドは、100年以上の歴史の中で、莫大な投資と努力によって築き上げられた信用の塊です。その信用力は、時計という枠を超えて、「高級」「精密」「ステータス」といったイメージと結びついています。

今回のケースでは、このロレックスが長年かけて作り上げたブランド価値を、何の努力も投資もせずに利用し、不当な利益を得ようとしました。これは公正な競争とは言えません。だからこそ、商標登録の有無に関わらず、不正競争防止法違反として逮捕されたのです。

5. 中小企業経営者が今すぐ確認すべき3つのポイント

この事件から、私たち中小企業の経営者が学ぶべき教訓は重要です。

1. 「商標の範囲外だから大丈夫」という思い込みを捨てる

他社のブランドやロゴを使用する際、「うちの商品は向こうの登録範囲じゃないから問題ない」という判断は危険です。相手が著名なブランドであれば、不正競争防止法という別の法律で守られている可能性が高いのです。

例えば、「グッチ」という名前で飲食店を開いたり、「プラダ」という名前の清掃サービスを始めたりすることは、たとえそれらのブランドが飲食や清掃で商標登録していなくても、不正競争防止法違反となる可能性があります。

2. パロディやオマージュは慎重に

若い世代に向けて、有名ブランドのロゴをもじった商品を企画したり、著名なキャッチフレーズをアレンジしたキャンペーンを展開したりすることがあるかもしれません。しかし、それが行き過ぎて、消費者に「あの有名企業と何か関係があるのでは?」と誤解させてしまうと、法的トラブルに発展する恐れがあります。

パロディやオマージュと、不正競争の境界線は曖昧です。「面白いから」「話題になりそうだから」という理由だけで安易に実行せず、必ず法的リスクを検討してください。

3. 自社ブランドの構築と他社ブランドの尊重

ビジネスの基本は公正な競争です。他社の努力の成果にタダ乗りするのではなく、自社独自のブランド価値を作り上げることこそが、持続可能な経営の王道です。

まずは自社の商標をしっかりと登録し、自分たちのブランドを守ること。そして同時に、他社が築いてきたブランドという無形の財産を尊重すること。この両輪があってこそ、健全なビジネス環境が保たれるのです。

6. 「ちょっと危ないかも」と思ったら、即座に専門家へ

商品企画やマーケティング施策を考える中で、「これって、もしかしたらマズいかな?」と少しでも感じたら、それは重要な危険信号です。その直感を無視せず、すぐに弁理士や弁護士などの専門家に相談してください。

相談料を惜しんで、後で数千万円の損害賠償を請求されたり、刑事事件に発展したりするケースは珍しくありません。事前の一手間が、あなたの会社を将来の大きなトラブルから救うことになるのです。

今回のロレックス指輪事件は、決して特殊なケースではありません。インターネットやSNSの普及により、小さな違反行為でも瞬時に拡散され、大きな問題に発展する時代です。「知らなかった」では済まされない法的リスクから会社を守るために、今こそ正しい知識を身につけ、適切な対策を講じていきましょう。

あなたの会社のブランドを守り、育てることは、従業員とその家族、そして顧客の未来を守ることにつながります。公正な競争の中で、独自の価値を生み出し続ける。それこそが、経営者の使命ではないでしょうか。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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