ⅰ 第9類?第42類?結局どっちに出願すればいいの?
結論から言うと、「第9類」と「第42類」の両方に指定して出願するのがベストです。
特許庁のデータベース「特許情報プラットフォーム」
(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)では、商標の登録状況だけでなく、商品やサービスの分類に役立つ参考表記を簡単に調べられます。
実際に「プログラム」と入力して検索すると、1000件以上の結果が出て再検索が必要になることもあります。
そこで、キーワードを「ソフトウェア」に変更して再検索すると、第41類の「操作方法の教授」や第45類の「利用契約の代理」など、今回は不要な情報も出てきましたが、やはり多くが「第9類」と「第42類」に分類されているのが分かります。
ⅱ なぜプログラムは2つのクラスに分かれるのか?
商標法上、すべての商品やサービスは45のクラスに分類されます。第1類から第34類が商品を対象とし、第35類から第45類がサービスを対象とするクラスです。
これを「プログラム」に当てはめると、第9類はプログラムが商品として扱われる場合、第42類はプログラムがサービスとして扱われる場合に適用されます。
商標法では、商品とサービスを分ける基準は「流通性」にあると言われています。
例えば、マンションは商品に見えますが、商標法上は不動産の流通性がないため「仲介サービス」として扱われます。この流通性の概念を「プログラム」に当てはめると少し複雑です。
結論として、ユーザーが端末にインストールするタイプのプログラムは「第9類」、インストールしないで利用するタイプは「第42類」に分類されます。
例えば、オンラインストアからダウンロードするアプリや、量販店で購入するパッケージソフトは「第9類」の代表例です。一方、クラウドコンピューティングやASP(アプリケーションサービスプロバイダ)はインストール不要なプログラムであり、これらは「第42類」に分類されます。
クラウドやASPはインターネット上でプログラムを利用してサービスを受ける形式だからです。
ⅲ 片方だけの商標登録はリスク大!両方出願が安全策
例えば、自社のサービスが「クラウドコンピューティング」に分類される場合でも、そのシステムにユーザーがアクセスする際、アプリケーションプログラムを利用することが多いです。また、スマートフォンの普及により、従来ASPで提供していたサービスがアプリケーションとして提供されるケースも増えています。
つまり、「プログラム」と「プログラムの提供」は密接に関連する商品とサービスです。どちらか一方だけを登録してしまうと、もう一方を他社に商標登録されるリスクがあります。
例えば、「プログラム」で商標を登録しても、「プログラムの提供」に関しては他社が似た商標を登録してしまう可能性があります。これでは、ブランド保護の面で非常に不安定な状況になりかねません。
ですので、プログラム関連の商標登録をする際には、「プログラム」と「プログラムの提供」の両方を出願するのが最善の策です。
ちなみに、第9類の「プログラム」と第42類の「プログラムの提供」では、与えられる類似群コードが異なります。
類似群コードとは、商品やサービスの類似性を判断するための記号で、同一のコードが付与されたものは原則として類似するものとされます。しかし、特許庁では「プログラム」と「プログラムの提供」を「備考類似」として扱っています。
これにより、片方が登録されていれば、他方が後から他社に出願されても異議申立てなどで取り消すことができます。
ただし、「備考類似」は審査段階では考慮されず、異議申立てや日常的な出願ウォッチングが必要になります。これには余計な手間と費用がかかるため、やはり最初から両方を指定して出願しておくのがベストです。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247