1.過誤登録
商標の登録申請は特許庁の審査官によって厳しく審査されます。審査の結果、拒絶理由が見当たらない場合は、審査官が登録の決定を下し、出願人が登録料を支払うことで商標が正式に登録されます。
審査官になるためには、政令に定められた資格が必要で、豊富な経験を積まなければなりません。また、特許庁全体としても、商標審査の品質管理を徹底しています。
しかし、年間十数万件にも及ぶ商標出願がある中、どうしても審査漏れが生じてしまうこともあります。つまり、拒絶すべき出願が誤って登録されるケースが避けられないという現状も存在します。
こうした「過誤登録」を訂正するために、「登録異議の申立制度」や「無効審判制度」が設けられています。
以下に「登録異議の申立制度」の概要を説明します。
2.登録異議の申立制度
(1)制度の趣旨
商標登録に誤りがあった場合、その誤りはできるだけ早く修正されるべきです。「登録異議の申立制度」は、このような誤登録を早期に是正するために設けられた制度です。過誤登録が早期に修正されることで、商標の信頼性が向上し、登録商標を安心して使用できる環境が整います。この制度の審理期間はおおよそ6〜8ヶ月とされています。
(2)手続きの流れ
ア. 登録異議の申立て
登録異議の申立ては、利害関係があるかどうかに関わらず、誰でも行うことが可能です。これは、制度の目的が過誤登録を早期に是正する「公益」に基づくためです。また、申立ては商標掲載公報の発行から2ヶ月以内に行う必要があります。この期間内であれば、申立書の補正も一部可能です(30日以内)。
イ. 登録異議申立書の副本の送付
申立てが行われると、商標権者に登録異議申立書の副本が送付され、異議申立てがあったことが通知されます。これにより、商標権者は、申立人の主張や提出された証拠の内容を確認できます。
ウ. 取消理由通知
審理は基本的に書面で行われます。審理の結果、取消すべき理由が認められる場合、特許庁から商標権者に「取消理由通知」が送られ、反論の機会が与えられます。取消理由が認められない場合は、取消理由通知は送られず、商標権はそのまま維持されます。
エ. 意見書の提出
取消理由通知が発せられた場合、商標権者は反論として「意見書」を提出する必要があります。この意見書は、国内居住者であれば通知書の発送から40日以内に提出しなければなりません。専門家に依頼する場合は、迅速に通知内容を確認し、証拠を準備する必要があります。
オ. 最終決定
(ア)商標登録の維持決定
取消理由がない、もしくは反論によって取消理由が覆された場合、商標登録の「維持決定」がなされ、登録異議の手続は終了します。
(イ)商標登録の取消決定
反論がない、もしくは取消理由が覆らなかった場合、商標登録は「取消決定」となり、商標権は最初から存在しなかったものとみなされます。
カ. 出訴
商標登録が取消された場合、不服があれば、取消決定の通知から30日以内に知的財産高等裁判所に異議申立てが可能です。
3.費用
登録異議が申し立てられ、異議申立番号が通知された段階で当所に対応をご依頼いただいた場合の費用は、概ね以下の通りです。なお、コピー代などの実費もご負担いただきます。
- 受任手数料:30,000円
- 意見書作成手数料:200,000円~
- 成功報酬:100,000円~
取消理由通知が発せられない場合、意見書作成手数料や成功報酬は発生しません。
また、費用はご依頼のタイミングや対応内容によって変動します。例えば、登録異議申立書の副本が届いた時点や取消理由通知を受けた時点でのご依頼、もしくはご自身で登録異議を申し立てる場合などは異なる料金設定となります。
事件が複雑な場合には追加費用が生じる場合もございますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。
ファーイースト国際特許事務所弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247