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民法改正:権利の消滅期間が変更されました

1. 2020年施行の民法改正と消滅時効

債権法を中心とする改正民法は2017年に成立し、2020年4月1日に施行されました。契約上の代金、報酬、ライセンス料などを請求できる期間にも関わるため、知的財産契約の管理では施行日を明記しておく必要があります。

ここで扱うのは、主として契約から生じる債権の消滅時効です。特許権や商標権そのものの存続期間と、契約に基づく金銭請求権の消滅時効は別の制度です。例えば、商標権が存続していても、期限の到来した過去のライセンス料請求権について時効が問題になることがあります。

また、2020年4月1日より前に生じた法律関係には経過措置が関わります。古い契約だから旧法、新しい請求だから新法と日付だけで即断せず、契約の締結日、債権の発生原因、履行期を確認して適用法を検討します。

2. 債権は主観的5年・客観的10年の早い方

改正民法の一般的な債権については、次の二つの期間のうち、先に到来する方が消滅時効の基準になります。

  • 債権者が権利を行使できることを知った時から5年
  • 権利を行使できる時から10年

「知らなければ常に10年間請求できる」という二者択一の制度ではありません。二つの期間は並行して検討し、どちらか早い方の完成が問題になります。債権の種類による別の規定や、完成猶予・更新、経過措置が関わる場合もあります。

ライセンス料を毎月支払う契約なら、通常は各支払期に対応する債権を分けて管理します。契約全体の締結日だけを期限管理の起点にすると、早い月の請求漏れを見落とすおそれがあります。

3. 旧法の短期消滅時効と商事消滅時効は廃止

改正前は、職業別の短期消滅時効や、商行為によって生じた債権を原則5年とする商法上の商事消滅時効がありました。改正により、これらの規定は廃止され、民法の時効期間へ整理されました。

したがって、現在のライセンス料債権について「商取引なので商事消滅時効5年が適用される」と説明するのは正確ではありません。結果として5年が問題になる場面でも、根拠は改正民法の主観的起算点であり、権利を行使できることを知った時を確認します。

もっとも、改正前から続く契約や債権に新しい期間を一律に当てはめることもできません。長期契約では、2020年4月1日の前後で発生した請求を一覧にし、経過措置を含めて個別に切り分けます。

4. 知的財産契約で管理する日付

特許、商標、著作物、ノウハウなどのライセンス契約では、少なくとも契約締結日、契約期間、報告期限、請求日、支払期日、入金日を記録します。売上連動の対価であれば、売上報告を受ける時期と、対価を請求できる時期が契約上どう定められているかも確認します。

侵害による損害賠償請求は、契約上のライセンス料請求と同じ起算点とは限りません。不法行為に関する期間や、侵害と損害を知った時期などが別に問題になります。権利の存続期間だけを見て、損害賠償請求の期限も同じだと考えることはできません。

共同開発や複数権利を含む契約では、請求の根拠も記録します。「特許ライセンス料」「成果物の制作代金」「不払いによる損害賠償」のように分類すると、起算点と証拠を検討しやすくなります。

5. 完成猶予と更新を混同しない

改正民法は、旧法の「中断」「停止」という表現を、時効の「完成猶予」と「更新」に整理しました。完成猶予は一定期間、時効の完成を妨げる仕組みです。更新は、それまで進行した期間をリセットし、新たに時効期間が進行する仕組みです。

裁判上の請求があった場合、手続が続いている間は完成が猶予されます。確定判決などで権利が確定すれば時効が更新され、手続終了時から新たに進行します。却下や取下げなどで権利が確定せず手続が終わった場合には、終了時から6か月の完成猶予が設けられています。

債務者が債務を承認した場合は、承認時から時効が更新されます。他方、裁判外の催告は、それだけで恒久的に期間をリセットする手段ではなく、原則として6か月の完成猶予です。督促状を繰り返し送れば安全だと考えず、その間に次の措置を検討します。

6. 請求漏れを防ぐ実務チェック

時効管理では、法定期間だけでなく事実と証拠を一つの台帳で追います。

  • 請求の法的根拠と債務者を特定する
  • 契約書、変更合意、請求書、入金履歴を保存する
  • 各債権の発生日、支払期日、認識日を記録する
  • 債務承認、催告、交渉、裁判手続の日時と内容を残す
  • 期限直前ではなく、余裕のある社内確認日を設定する

契約書に請求方法や報告期限を定めても、法律上の時効管理が不要になるわけではありません。反対に、時効期間だけを管理して契約上の通知期限を落とすことも避けます。長期または高額の案件は、資料をそろえて早めに個別判断を求める方が安全です。

よくある質問

Q1. 改正後の債権はすべて5年で時効になりますか。
A. 一律ではありません。一般的な債権でも主観的5年と客観的10年の早い方を検討し、別の規定や経過措置も確認します。

Q2. 商取引の債権には現在も商事消滅時効5年が適用されますか。
A. 旧商法の商事消滅時効は廃止されています。現在5年が問題になる場合は、改正民法の規定を基礎に起算点を確認します。

Q3. ライセンス契約を更新すれば、未払金の時効も自動で更新されますか。
A. 契約期間の更新と時効の更新は別問題です。未払債務の承認など、時効に関わる事実を個別に確認します。

Q4. 内容証明郵便を送れば時効期間はリセットされますか。
A. 裁判外の催告は、原則として6か月の完成猶予です。その期間内に採る手続を検討します。

Q5. 商標権が更新されている間はライセンス料も請求できますか。
A. 商標権の存続と、各期のライセンス料債権の時効は別に管理します。権利が存続していることだけでは、過去の請求権の時効問題は解消しません。

参考資料

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

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